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大統領でスーパーマン!? プレジデント・スーパーマンの魅力を大紹介!
2022年から2023年にかけて繰り広げられた、DCコミックスの超重要クロスオーバー・イベント「ダーク・クライシス」。そのイベントにつながる1冊『ジャスティス・リーグ・インカーネイト』の日本語版が5月23日頃に刊行されます。その物語の中心を担うヒーローが、プレジデント・スーパーマンです。“スーパーマンでありながら合衆国大統領”という、誰もが思わず面食らってしまう設定の彼ですが、このユニークでエピックなキャラクターが生まれた背景を、翻訳者の中沢俊介氏に解説してもらいましょう!
文:中沢俊介
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ジョシュア・ウィリアムソン 他[作]、アンドレイ・ブレッサン[画]、中沢俊介[訳]
B5判変・並製・176頁・本文4C 3,190円(10%税込)
大統領兼スーパーマン?
『インフィニット・フロンティア』(小社刊)より幕を開けたDCコミックスの新体制で、ひときわ存在感を高めているキャラクターの一人、プレジデント・スーパーマン。今回発売される『ジャスティス・リーグ・インカーネイト』でもチームのリーダーを務め、さまざまな並行世界から集まったヒーローたちを率いて活躍します。とはいえ、登場してまだ日が浅いキャラクターでもあるので、ここで改めてご紹介したいと思います。まずは基本設定から。
●通称:プレジデント・スーパーマン(自分の世界では“スーパーマン”)
●地球人名:カルビン・エリス
●クリプトン星人名:カレル
●出身世界:アース23
●特徴:主流の世界のスーパーマン(クラーク・ケント/カル=エル)と同じように、生まれて間もなく惑星クリプトンの滅亡から逃れ、地球にたどり着き、超人的な能力を開花させたが、カルビン・エリスとしての彼は新聞記者ではなく、アメリカ合衆国大統領になった。
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こう見えてけっこう気が合うようで、仲良しな二人
モデルはオバマ元大統領?
キャラクターとしての初登場は、2009年1月28日に発売された『ファイナル・クライシス』#7(小社刊『バットマン・メタル:プレリュード』収録)。一方、それに先立つ同年1月8日にアメリカで44代大統領に就任したのが、バラク・オバマです。
リベラル寄りで、エンターテインメント業界の支持者も多い民主党から、初めて有色人種の大統領が生まれるとあって、前年の選挙戦は大変な盛り上がりを見せ、コミック業界でも、『キングダム・カム』(小社刊)で知られるアレックス・ロスがオバマをスーパーマンに見立てた応援イラストを描きました。すると、それを受けてか、オバマは会食の席で「実は私は惑星クリプトンで生まれて、この星を救うために派遣された」とジョークを飛ばしたのです。この一件があって、『ファイナル・クライシス』の作家陣によって、バラク・オバマと伝説的ボクサーのモハメド・アリを合わせたような存在としてプレジデント・スーパーマンが考案されました。
ちなみに、マーベル・コミックスも同年1月14日に『スパイダーマン:エレクション・デイ』(小社刊)収録の「スパイディ・ミーツ・プレジデント」を発表して、オバマとスパイダーマンを共演させています。
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これまでの活躍は?
プレジデント・スーパーマンの出身世界であるアース23では、彼に触発されて数多くの黒人ヒーローが出現しました。同世界のジャスティス・リーグは、以下のようなメンバーから構成されています。
●ワンダーウーマン(ヌビア)
●グリーンランタン(ジョン・スチュワート)
●ビクセン(マリ・マッケイブ)
●スティール(ジョン・ヘンリー・アイアンズ)
●ブラックライトニング(ジェファーソン・ピアース)
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プレジデント・スーパーマン
超人的な能力だけでなく、並外れたリーダーシップとカリスマ性も兼ね備えたプレジデント・スーパーマンは、自国アメリカや自分の世界のジャスティス・リーグだけでなく、多元宇宙を守るジャスティス・リーグ・インカーネイトでも中心的な役割を担うことになります。2009年の初登場後、2021年の『インフィニット・フロンティア』に至るまでの彼の主な活躍を振り返ってみましょう。
2012年:『アクションコミックス』#9……並行世界アース45からやってきた悪のスーパーマンであるスーパードゥームと戦う。
2014年:『マルチバーシティ』……並行世界のヒーローたちと力を合わせて、多元宇宙の侵略団ジェントリーを撃退する。この事件をきっかけに、ジャスティス・インカーネイト(現ジャスティス・リーグ・インカーネイト)が結成される。
2017年:『スーパーマン』#14-16……エピソード名「マルチプリシティ」。謎の敵プロフェシーに狩り集められ、監禁されていた多元宇宙のスーパーマンたちの救助にあたる。
2019年:『フラッシュ・フォワード』……闇の多元宇宙による並行世界の汚染を防いでいたフラッシュ(ウォリー・ウェスト)と共闘する。
黒人スーパーマンの今後に注目!
“黒人スーパーマン”は、1990年代あたりからさまざまなかたちで散発的に姿を見せるようになり、近年でもニュー52期の『アース2』シリーズで、並行世界アース2の黒人スーパーマンとして、バル=ゾッドが活躍しました。また、2020年あたりからハリウッドでは、黒人スーパーマンの映像化企画がたびたび取り沙汰されるようになっています。
そんななかでも、出自の話題性や、多様性に満ちた多元宇宙での活動歴など、プレジデント・スーパーマンが、次世代のスーパーマン像として一頭地を抜いているといえるでしょう。スーパーマンにして大統領という、ネクストレベルの超人ぶりを発揮するプレジデント・スーパーマン。今回発売される『ジャスティス・リーグ・インカーネイト』で、ぜひ彼の魅力の一端に触れていただければ幸いです。
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中沢俊介…翻訳家、ライター。主な訳書に『ドゥームズデイ・クロック』『バットマン』シリーズ(ともに小社刊)などがある。
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