『Olivier』 〜1993年 フランス人の男〜 vol.3
だけど、その15分後、2度目の電話が鳴った時。
Olivierは僕と一緒に暮らしたいんだ、と気がついた。
僕の部屋の更新も来月で、そんな話をOlivierにしたことがあった。
だけど、僕は、自由でいたかった。
それに、家族以外の人間と暮らしたことはないし。
衝動的に同棲を始めてしまうほどの気持ちの勢いも、Olivierに対してはなかった。
だから僕は気がついていないふりをしたまま、Olivierを慰め続けた。
だけど、その5分後にまた、3度目の電話が鳴った時。
Olivierのことが、なんだかとてもかわいそうに思えてしまった。
「We may live together(一緒に暮らすっていうのもありかもしれない)」
だから、思わず、口走ってしまった。
「Do you really think so?(本当にそう思う?)」
「u-h…Ya(うーん…うん)」
「Can we do that?(僕たちにできる?)」
「I don't know maybe(わかんないけど、多分ね)」
こうして僕たちは一緒に暮らすことになった。
そのことを、その頃遊んでいたOlivier以外の男たちに告げた。
「I have a sort of boy friend and sort of living together so I have to say sort of goodbye to you(なんか彼氏的なのができて、一応同棲なんかするから、あなたとは一応さよならしなくちゃいけないっぽいの)」
ある男には残念がられ、ある男には「What's that?(なにそれ?)」と不思議な顔をされた。
そんなこんなで僕とOlivierは、一緒に暮らすゲイカップルになった。
ロンドンの中心から少し離れた自然の多い場所に小さなアパートを借りた。
暖炉のついたリビングルームと広いバスルームをOlivierは気に入っていた。
僕はattic(屋根裏部屋)があるので、一人になりたい時がここに上がればいい、と思った。
引っ越しの日。
それぞれの住まいから新しいアパートに荷物が運び込まれた。
Olivierの荷物の中に黒い皮のバッグがあった。
ハットケースのような立体的なデザインで、Olivierの趣味とは違うように思えた。
不思議に思って開けてみると、中から鞭が出てきた。
持ち手の先に黒くて細いリボンのような紐が何本もついている鞭だった。
それから、黒いハエ叩きみたいのものも出てきた。
それから、黒いボールのついた猿轡。
それから、黒いレザーの衣装。
「What's this?(これはなに?)」
僕はOlivierに尋ねた。