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推しが "ステージリーダー" になった1年

2023年12月29日、東京・品川インターシティホール。

あと数日で2023年が終わろうとしていたこの日は SUPER☆GiRLS のワンマンライブが行われていた。

年末をもって卒業することが発表されていた阿部夢梨の卒業記念公演を2部に控えつつ、1部・デビュー13周年ライブの中で、"Chapter 6 - New Style" と称して阿部卒業後の新体制の発表が行われた。

スパガはメンバー加入やリーダー卒業などがあるライブでは、新体制のメンバー1人1人の名前と超絶カラー(担当カラー)がスクリーンに映し出されていきながらステージに登場していく、いわゆる "新体制お披露目" が行われることがある。

この日も、それまでリーダーを努めていた阿部の卒業が控えていたことから、"次のリーダーは誰なんだろう" ……そんなことを考えながらその新体制発表の様子を見守っていた。

筆者の推しである門林有羽は4期生。
このタイミングで卒業する阿部は最後まで在籍していた3期生であり、その卒業後は4期生の門林と坂林がグループの在籍期間としては最も長くなる……という状態であった。

そして、これまでのスパガのリーダーは、基本的にその時点で最も先輩である期のメンバーが担当していた。
そのセオリーに則れば、推しがリーダーになる可能性は大いにある───しかし同時に、推しはリーダーにはならなそうな、そんな気配もどこかしていた。

この日の新体制お披露目映像では、後輩から順にスクリーンに表示されていった。
"次期リーダーを担うメンバーが一番最後に登場し、そのまま新体制1曲目を披露する流れだろう"、 状況からすぐにそれを理解した。
……そして、終盤まで名前が出てこなかったのが、推しである門林と5期生の竹内だった。

「 STAGE LEADER Yuu Kadobayashi 」

推しの名前が表示された。
……しかし、何やら見慣れない文言が付いている。

"ステージリーダー" …?

そんなことを考えているうちに、お披露目映像は「NEW LEADER Nanami Takeuchi」という表示とともに終わり、気づけばステージ上には新体制としてのメンバーが並んでいた───


第6章の新たなスタート

スパガとしては初めて、"リーダー" 以外の役職がいる……2024年は年明けとともに、その新たな体制がスタートした。

年が明けてしばらくの間は6期の加入1周年記念チャレンジ企画が行われていたりしつつ、グループ全体としては対バンなどにいくつも出演して、少しずつ新体制でできる曲が増えていった。

そんな新体制が動き始めて少し経った3月上旬、「リーダー対談」と称してスパガ公式のYouTube チャンネルに1つの動画が上がった。

リーダー・竹内とステージリーダー・門林が、それぞれの役割分担をはじめ、活動の中で意識していることやお互いの性格などを語り合う動画である。

私自身もこの動画を踏まえて note を投稿しているので、この時点当時の感想はその note 記事をぜひ見ていただければと思う。

個人的には、探り探りではあったが段々とこの役割分担の意味やその上での進み方が見えてきたような、そんな時期だったように思う。

この約2週間後には新体制で最初のワンマンライブが開催され、それまで休養していた坂林が復帰。直後には夏曲『とびきりだれより夏っぽいこと』のリリースが発表されるなど、本格的に新体制が動き始めていった。

グループの歴史、グループの今

時は流れ6月、結成14周年記念ライブハウスツアーと称して、周年ワンマンライブが熊谷・大阪・名古屋・東京の4都市で行われた。
少し前には『とびきりだれより夏っぽいこと』のリリースイベントも始まっており、その"とび夏"を引っ提げつつ回るツアーでもあった。

これがとても充実感にあふれたツアーであったことは語るまでもない。

各日2部制×4都市、各部ごとのセトリの大枠はほぼ同じものの、そもそも1部あたりで約20曲をこなしつつ1部と2部であまり曲目が被っていなかったり、各公演で入れ替わる曲があったりと、想像以上に毎公演が新鮮かつ、とても楽しかった。

そしてそのベースとして、スパガのもつ様々な楽曲と歴史、そしてメンバー1人1人の色・個性が輝きだしていることを改めて実感することができていた。

リーダーズが就任した当初、竹内も門林も共通して言っていたのが、「メンバー1人1人が輝ける場所を作っていくこと」だった。

当然のことながら、メンバーによって得意とすることは様々である。
歌唱力が高いメンバーもいれば、キレッキレの振付をこなせるメンバーもいる、かと思えば声質や振る舞いが可愛い系の楽曲にピッタリなメンバーもいる。

─── 幸い、スパガにはその多様な個性や想いを、載せて届けられるだけの楽曲群があった。

スパガは2010年に結成され、たくさんのメンバーがスパガを繋ぎ、2024年に14周年を迎えて第6章が進んでいる。
その歴史の中で、スパガとしてリリースされてきた楽曲だけでも120を超える楽曲が用意されているのだ。

そして気づけば、2024年の新体制で披露された楽曲がこのツアーがファイナルを迎える頃には50近くに達していた。
数字だけでは伝わりづらいかもしれないが……これだけの楽曲をわずか数ヶ月の間に、しっかりと今の体制のために歌割りやフォーメーションを修正し、練習して、披露する……なかなかにハードであることは容易に想像できるが、メンバーがそれをしっかりとやりきってツアーを迎えたわけである。

そんな素敵なツアーを経て、今のスパガのステージの良さ、そして後輩メンバーたちとそれらメンバーのファンも含め、とても充実してきている実感を得られた。

「まじ良い先輩方なんです」
「リーダーズが特にとても背中を支えてくれてくれて、楽しく活動できてる」
「ライブの嬉しい感想、ぜひリーダーズにも伝えてあげてください」
……これらはとある特典会で実際に後輩メンバーたちが言っていた言葉である。

ライブの余韻が楽しくなれなかった日

周年ツアーから少し経った夏のある日のこと。
対バンが連日続いていた中でのとあるスパガのステージが終わり、会場となったライブハウスのロビーにはスパガのヲタクが屯していた。

いつもなら余韻のまま特典会に備えてヲタク各位が和気あいあいとしているところではあるが……どうもその日は全体的にそういった空気ではなかった。
……端的に言えば「セトリが(多くのヲタクに)刺さらなかった」、そんなライブだったのである。

個人的には、ライブのセトリには絶対的な正解は存在しないし、人によって趣向や価値観は異なるものであるという信念のもと音楽ライブを眺めている。そのため、自分は普段あまり "セトリが良い・悪い" みたいなことはそこまで深く気にすることはなく、一つ一つのライブ、一つ一つの楽曲をありのまま浴びたい、そんな気持ちで過ごしていたところではあった。

しかし、その日は周囲で何人ものヲタクがセトリに対するネガティブな感想を話しているのがあまりに耳に入ってきた。
そして、特典会の前後やX(旧Twitter)にて、ステージリーダーに対して負の意見をぶつける様子がいくつか視界に入ってきてしまった。

ひとまずは一通りその日の特典会などを終え、その日の宿に一人で帰り着きながら……ふと、目にした意見たちがぐるぐると頭の中を駆け巡り、自分の感情に整理がつかなくなっていくのを自覚した。

 "……これって、うちの推しメンが悪いのか…?"

「楽しくなかった」という意見を持つことは各人の自由であるし、むしろそれも大事で尊重されるべき感情である。

とはいえ同時に、どこか自分の中の認知として、推しが悪者にされてしまっているような感覚、そして(そこまで絶望的な不満は持っていなかった)自分自身も責められているような感覚に陥っていた。

……それまで経験したことのなかった情緒に、その日はそれ以上考えるのをやめて、眠りについた。

(翌朝になり、少し自分の気持ちも整理ができて、その次以降のライブはまた自分としては楽しかったことは補足しておく)

役職持ちに向けられる目線

時期を近くして、今年の夏曲『とびきりだれより夏っぽいこと』が発売されたのに関連して、いくつかの雑誌やWebメディアにメンバーのインタビューが掲載された。
その中にはリーダーズのインタビューが含まれているものがほとんどだったため、各掲載が出るたびに内容を読んでいた。

それらのインタビューの中で、門林には "ステージリーダー" という新たな役職について話題が振られていることも多く、そんな立場・環境の変化を踏まえて
「一歩引いたような目線でスパガのステージ全体を俯瞰して見ようと心がけるようになった」
「(ライブの構成を)竹内や坂林、スタッフさんとも話し合い悩みながら進めて、終わったあとに"楽しかった"って言葉をもらえてやりがいを感じれている」
そんな話がされていた。

一方で、「"ステージリーダー" という肩書きが公表されたことで、ライブ構成やセトリなどに関する意見が直接飛んでくるようになって、戸惑いやプレッシャーも増えたのも事実」と言った趣旨のこともこの頃に少し聞いていた。

門林の "ステージリーダー" という肩書きが発表されたのは前述のとおり2023年末のワンマンの場であったが、実は門林がライブのセトリなどの検討を主立って行い始めたのはそれよりもかなり前……阿部の卒業が決まり、阿部がいる最後の夏が始まろうとしていたころのことである。
「セトリ考えたりするのは(新体制になる)前からやってたから、やることが大きく変わるってわけでもないんだけどね…」
新体制になって1ヶ月ほど経った頃、とある特典会で推しメンとそんな話をしたほどである。

戸惑いやプレッシャーが生まれる要因の一つに、"トップダウンでライブやセトリ全てが決まっているわけではない"、すなわち、実際には一人で全部決めているわけでもなく周りのメンバーやスタッフ陣と相談しながら一つ一つを決めていっているが、それを飛び越えて批判的な責任に関する意見がダイレクトに飛んでくるということも想像に難くない。

とはいえ、リーダーや◯◯長といった役職の肩書きというのは、一般社会においても概して何かあったときにいろいろな意見の矢面に立つことになる立場なのもまた事実である。

(きっとそれはスパガに関して言えば、"ステージリーダー" を担うことになった門林だけではなく、"リーダー" を引き継いだ竹内も少なからず経験することになっている事象であろう。)

メンバーがグループ内における "◯◯リーダー" や "◯◯担当" という肩書きを公表されること、その影響を自分自身も考えさせられるきっかけとなった。

負担の分散、適材適所

ところで、従来のスパガの役職は基本的には "リーダー" があるのみであった。

(前述のリーダーズ対談にまつわる拙稿の note でも触れているが)、今まではイベントや取材などで表立って出ていくのも、ライブやセトリの構成・リハーサルを率いたりするのも、リーダーが中心となることが多かったようである。

概して、従来のスパガのリーダーはいわゆる "エース" や "センター" と呼ばれがちなメンバーが担当しているイメージがあった。

それまでそういった "エース" や "センター" と呼ばれていたメンバーがリーダーに就任すると、その立場に全ての責務が集中してしまい、どうしても立ち振る舞いや個性まで変わってしまったように感じられたことがあった。
(これは特定のメンバーに限らず、過去にリーダーに就任した複数のメンバーのを推していた知り合い何人もと話したことがある。)

一方で、今のスパガの体制はどうだろうか…?

もちろん大前提として、門林にしても竹内にしても、パフォーマンス面でもビジュアル面でも、いくつもの楽曲の中で重要なパートを持っていたりすることからわかるように、グループに欠かせない存在であることは確実だ。

であると同時に、各種役職も含めたグループ内での役割(≒明確な責務)が、今の体制は一極集中しにくい体制になってきているように思えた。

例えば最近のグループ内での具体的な役割を見てみても、前述の今年の夏曲のセンターは柏が担当していたり、衣装監修は主に田中が、グッズ監修を主に鎌田が行っていたりもして、それが明確に公表されていたりする。

ふと、いま活動している他のアーティストを見てみると、このようにグループ内の特定の誰かに役割が集中せず、複数のメンバーにいろいろな役割が割り当てられているグループは意外と多かったりする……そもそも "リーダー" や "センター" を一切存在させてないグループ、"キャプテン" と "副キャプテン" と称してそこを中心に連携しているグループ、リリースに応じてセンターなどが変わっているグループ……形は様々で、挙げ始めるとキリはない。

そして、別にそれで良いのである。
(もちろん、いわゆる "絶対的エース"や "圧倒的センター"がいる形もアリで、否定するつもりはない。)

グループ内での役割が分散されることで、前述のように特定のメンバーに属人化しなくなり、責務が全集中してそのプレッシャーや過労で倒れてしまったり振る舞いに影響が出てしまったりもしにくくなるのではないだろうか。

メンバー1人1人が尊重され、メンバーそれぞれの多様な経験や視点でグループ活動に貢献していく。そしてそれによりメンバー1人1人の得意なことや個性が更に磨かれていく───
それがうまく周れば今まで以上にプラスの循環に繋がっていく、そんな予感がした。

2024年の到達点

2024年12月22日、SUPER☆GiRLS デビュー14周年ライブが行われた。
冒頭に綴った例のワンマンからほぼ1年、すなわち現体制1年目の集大成と言える。

このライブではいくつか新たな試みも取り入れられつつ、6月のツアーでもそうであったように現体制初披露の曲がいくつも解禁された。今回は特にスパガの枠組みを超えて、いわゆる iDOL Street の楽曲も再び紡がれていったりもした中で、メンバー1人1人がいきいきと輝いていた。そして一つ一つの楽曲を通して、過去のメンバーやグループ・ファミリーの歴史へのリスペクトももちつつ、今のスパガでそれをちゃんと継承していくという意思と覚悟が垣間見えたように感じた。

そしてその確固たるスパガの素敵な "ステージ" を守ってくれたのは、他でもない推しメン、いや、"ステージリーダー" の功績が大きいなと思い、なんだかあたたかく優しい気持ちになれた公演だった。

1年前、"ステージリーダー" という見慣れない肩書きが発表された当初は、ヲタク側もその肩書きをネタにすることがあったりしたレベルであったし、もしかするとそもそも本人も大いに戸惑っていたのかもしれない。

でもそれから1年、振り返る暇もないほどたくさんのライブステージ、いくつもの挑戦を経験して……気づいたら到達していた場所が、とても心地よくて、誇らしく感じられた。

そして何より、そのステージリーダー自身のステージ上での眼差しがとても真っ直ぐで、その立ち振舞とオーラがとてもかっこよく感じられた。

変わるもの、変わらないもの

12月22日に行われたデビュー14周年ワンマンライブを見ながら改めて「楽曲という形を通してグループの歴史がちゃんと繋がっていること」、「今ここで活動しているメンバー1人1人が尊重されて輝き出していること」、そして「そのメンバー同士が団結し、着実にステージのクオリティも引き上げられていること」……それを個人的に強く実感することができた。

アイドルに限らず、グループや組織の歴史は長くなればなるほど、どうしても人(メンバー)の入れ替わりというものは発生しやすい。
そして人の入れ替わりが発生すると、全ては継承されずに変わっていってしまうことがあるのもまた仕方のないことではある。
(裏を返せば、それにより"新たな風が吹く"とも言える)

アイドルグループに関しても、「メンバーが変わらずに歴史が進んでいくことによる良さ」「メンバーが入れ替わりつつも、グループの歴史が継承されていくことによる良さ」どちらもあって、良し悪しではなくどちらもかけがえないものだと思っている。

(余談にはなるが……今年とある少し界隈の違う某大手アイドルグループが、結成14年目でこれまでメンバーの新規加入がなかった中で新たに 大規模な公開オーディションをはじめた様子を知り合いに布教されたりして、ちょうどそんなことを考えていた)

気づけばあっという間に15年目を歩み始めた SUPER☆GiRLS。
すでに結成当初の体制を知るメンバーは居なくなっている。

でも、ある意味では2023年が "5.5章" だったとでも言うべきか───2024年に改めて新体制で様々な試行錯誤や挑戦をしながら駆け抜けて、これまでの殻を良い意味でいつの間にか破っていて……ここからさらに前に進めそうな、そんな希望が見えた気がした。

2025年。15周年の一年も、素敵な年になりますように。


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