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昭和プロレスの裏側をぶち壊す爆弾本!故ユセフ・トルコの『こんなプロレス知ってるかい』の感想

皆さん、お待たせしました! 昭和プロレスの裏側をぶち壊す爆弾本、故ユセフ・トルコの『こんなプロレス知ってるかい』の感想をお届けします! 2013年10月18日に天国のリングへと旅立ったトルコさんが残した最後の闘魂メッセージ、いや、遺言書とも言えるこの一冊。昭和プロレスマニアの皆さん、覚悟はいいですか? じゃあ、ゴングを鳴らしましょう!

まず目玉となるのが、「ブッチャーはフォールされない契約」の暴露です。アブドーラ・ザ・ブッチャーが新日本プロレスと交わした密約、3年間フォールされない契約の存在。これを知った時、正直、エプロンから転げ落ちそうになりました。あの血みどろの殺人ピエロ、ギザギザ頭のブッチャーが、実は裏で堅実な契約を結んでいたとは!

ブッチャーといえば、フォークやペンチを振り回し、相手の額を切り裂く狂気のファイター。そんな彼が、実は計算高いビジネスマンだったとは。年間3500万円の契約に、さらにフォールされない保証付き。これじゃあ、リングで暴れ回るのも楽しいわけです。「守銭奴」の異名は伊達じゃありませんね。

思い返せば、ブッチャーの試合はいつも同じパターンでした。相手を血だるまにしてリングの外に連れ出し、カウントアウト勝ち。たまに反則負けもありましたが、ピンフォールで負けることはありませんでした。当時は「さすがブッチャー、強い!」と思っていましたが、今にして思えば、すべては契約通りだったわけです。

「ギザギザ頭のギザギザ契約」とでも言いましょうか。ブッチャーの狂気のパフォーマンスも、実は緻密に計算されたものだったのかもしれません。観客を恐怖に陥れつつ、自分は安全圏にいる。まさに、プロレスラーとしての究極の姿かもしれません。嫌いになれないところが、また憎らしい。

次に衝撃的だったのが、猪木の「失神ベロだし事件」の真相暴露です。あの伝説の試合、ハルク・ホーガンとのIWGP決勝。猪木が失神し、舌を出して倒れこむシーン。あれが全くのヤラセだったとは! 梶原一騎事件の余波を恐れた猪木が、病院に逃げ込むための演技だったとは。「燃える闘魂」どころか「逃げる闘魂」じゃありませんか。

猪木といえば、「闘う男」のイメージ。リングで「1・2・3ダー!」と叫び、観客を熱狂させる姿が目に焼き付いています。そんな猪木が、実は「逃げる男」だったとは。ファンとしては複雑な気分です。しかし、それも含めて猪木の魅力なのかもしれません。完璧な英雄ではなく、弱さも持つ人間味のある存在。それがかえって親しみを感じさせるんですよね。

トルコさんによれば、猪木の舌出し演技は失敗作だったそうです。失神した人間が舌を出すわけがない、というのです。確かに、今改めて当時の映像を見返すと、あからさまな演技に見えます。しかし、当時の我々は猪木の演技に完全に騙されていました。猪木の演技力の高さを示すエピソードとも言えるかもしれません。

「1・2・3ダー!」ならぬ「ベロ・ダラー!」作戦。猪木、やるな! と言いたいところですが、プロレスの神聖さを汚す行為だったかもしれません。しかし、これもプロレスの一部。受け入れるしかないんでしょうね。

さらに驚いたのが、タイガー・ジェット・シンの引き抜き事件の裏側です。新日本プロレスが全日本プロレスからブッチャーを引き抜いた見返りに、全日本が新日本からタイガー・ジェット・シンを引き抜いたという。まるで将棋の駒を交換するかのような選手の移籍。プロレス界の裏側はこんなにもドロドロしているんですね。

トルコさんは、タイガーマスク(佐山聡)の引退騒動も厳しく批判しています。タイガーマスクの正体を明かし、プロレス界を批判して引退。しかし、その後、新間寿と組んで第三団体設立を目指すという。「ミソクソ一緒にプロレス界に自分で三くだり半をつきつけておいて、熱が冷めたら、もう一度、仲間に入れてくれ、というのは、いかにもムシが良すぎる」というのです。

確かに、タイガーマスクの引退劇は、当時のファンに大きな衝撃を与えました。しかし、その後の展開を見ると、すべてが計算づくだったのではないかという疑念も湧いてきます。タイガーマスクというキャラクターの魅力を再認識させ、さらなる人気を獲得するための戦略だったのかもしれません。

「マスクを脱いでも、結局マスクは脱げない」。タイガーマスクの引退劇は、プロレスの奥深さを象徴しているのかもしれませんね。

そして、トルコさん自身の逮捕劇の顛末。ブッチャーの本の出版に絡んだ恐喝容疑での逮捕。しかし、その背景には新日本プロレスと梶原一騎との確執があったという。プロレス界の権力闘争に巻き込まれ、冤罪で逮捕されたトルコさん。まさに、リングの外でも壮絶な闘いが繰り広げられていたのです。

トルコさんの逮捕劇は、まるでプロレスの試合のような展開です。裏切り、策略、そして最後の逆転劇。トルコさんは、自身の無実を証明するために、検事とのリターンマッチを望んでいたそうです。セメント・ボーイの闘志は、天国に旅立つその日まで健在だったようですね。

トルコさんの筆致は辛辣で容赦ありません。特に猪木批判は徹底的です。「ハッタリペリカン」「ミミズ猪木」など、罵詈雑言の限りを尽くしています。しかし、その言葉の端々に、プロレスへの愛情が垣間見えます。批判は批判でも、プロレス界をより良くしたいという思いが伝わってきます。

猪木批判の中でも特に興味深いのは、猪木の実力についての分析です。トルコさんによれば、猪木の実力は「セミファイナル・クラス」だそうです。エンズイ斬りやコブラツイストの弱点を科学的に解説し、猪木の技の効果が薄いことを指摘しています。これは、長年プロレスに携わってきたトルコさんならではの鋭い分析です。

「エンズイ斬り」ならぬ「センズリ斬り」なんて言葉遊びまで飛び出す辛辣さ。しかし、その裏には猪木への期待も垣間見えます。もっと強くなれ、という思いが込められているのかもしれません。

一方で、鶴田や天龍、長州への期待は大きいようです。特に鶴田への評価は高く、馬場をも超える実力者と絶賛しています。天龍には「第3の男に甘んじるな」と檄を飛ばし、長州には「闘いの荒野をめざせ」とエールを送っています。プロレス界の未来を担う若手への期待が感じられますね。

鶴田への評価は特に高く、「若手ナンバーワン」「次代の日本のプロレス界を背負って立つ男」と称賛しています。しかし同時に、「もっと大きくなれ」「バカになれ」とアドバイスも送っています。これは、鶴田の技術的な面は完璧だが、人間的な成長にはまだ余地があるという指摘でしょう。

天龍に対しては、「鶴田がナンだ、の意欲をもて!」と激を飛ばしています。天龍の実力は鶴田に劣らないにもかかわらず、「第3の男」に甘んじていることへの苦言です。トルコさんは天龍の人間性を高く評価しており、その人格者ぶりがかえって足かせになっているのではないかと指摘しています。

長州に対しては、「荒野をめざせ」と檄を飛ばしています。新日本プロレスの枠にとどまらず、より大きな世界で闘うことを求めています。長州の持つ闘争心と技術を高く評価しつつ、その才能を最大限に発揮できる場所を求めよ、というメッセージです。

この本を読んで、昭和プロレスの華やかな表舞台の裏に、こんなにも生々しい人間ドラマが隠されていたことに驚かされます。同時に、そんな闇の部分をも含めて愛していた昭和プロレスの魅力を再確認させられます。

例えば、力道山の死から20年経っても、その偉業を称える記念碑すらないことへの嘆き。トルコさんは「力道山ベルト」の創設を提案しています。これは単なるノスタルジーではありません。プロレス界の原点に立ち返り、新たな発展を目指そうという提案です。

力道山ベルトの提案は、プロレス界の分裂を超えて、日本プロレス界全体の発展を願うトルコさんの思いの表れでしょう。全日本と新日本の対立を乗り越え、真の意味での日本一を決める場を作ろうという提案は、プロレスファンにとって夢のような話です。

また、コミッション制度の確立や、大相撲をモデルにした「一つのリング、多数のジム」制度の提案など、プロレス界の改革案も示しています。これらは、プロレスをより健全で魅力的なものにしようという、トルコさんの真摯な思いの表れでしょう。

コミッション制度の提案は特に興味深いです。レスラーの生活権の保証や、興行のチェック機能など、プロレス界の健全化につながる重要な提案です。これが実現すれば、プロレスの社会的地位向上にもつながるでしょう。

しかし、この本の魅力は単なる告発や改革案にとどまりません。随所に散りばめられた昭和プロレスの逸話の数々。例えば、吉村道明の「ハチマキ作戦」。流血ファイトの後、わざとハチマキをして飲みに行き、女性にモテるという話。こんな裏話を聞くと、昔のプロレスラーたちの人間味あふれる姿が目に浮かびます。

吉村道明の逸話は、昭和プロレスの男気を象徴するエピソードです。リング上では壮絶な流血劇を演じ、リングを降りれば女性にモテるためのテクニックを駆使する。そんなギャップこそ、昭和プロレスの魅力の一つだったのかもしれません。

また、上田馬之助の苦労人生や、天龍源一郎の相撲時代の話など、レスラーたちの知られざる一面も描かれています。彼らの人間性や生き様に触れることで、プロレスへの愛着がさらに深まります。

上田馬之助の話は特に印象的です。大相撲からプロレスに転向し、アメリカで苦労して頭角を現した彼の人生は、まさにアメリカンドリームそのものです。そんな苦労人だからこそ、リング上での極悪ぶりも説得力があったのでしょう。

この本を読んでいると、昭和プロレスの熱気が蘇ってきます。観客の熱狂、レスラーたちの汗と涙。そして、リングの外で繰り広げられる人間ドラマ。すべてを含めて、昭和プロレスは一つの壮大な物語だったのだと気づかされます。

トルコさんの語り口は辛辣でしたが、その根底にあったのはプロレスへの深い愛情でした。だからこそ、当時の現状への不満も大きかったのでしょう。プロレスをより良いものにしたい、という思いが随所に感じられます。

例えば、馬場への提言も興味深いです。馬場の実力は認めつつも、そろそろ引退を考えるべきだと進言しています。これは単なる批判ではなく、馬場への敬意と、プロレス界の未来への思いが込められていたのでしょう。

また、プロレス界全体への提言も示唆に富んでいます。OB会の設立や、プロレス博物館の建設など、プロレスの歴史を大切にしつつ、新たな発展を目指す案が提示されています。これらは、トルコさんが生涯をかけて愛したプロレスへの、最後の贈り物とも言えるでしょう。

この本を読んで、改めてトルコさんの存在の大きさを感じます。彼の鋭い洞察力と、プロレスへの熱い思いは、今も私たちの心に響きます。トルコさんはもういませんが、彼の言葉は今もなお、プロレス界に一石を投じ続けているのです。

ただ一つ残念なのは、この本を読んでしまったがために、もう二度と昔のように純粋に熱狂することができなくなってしまったこと。真実を知ってしまった以上、もう後戻りはできません。

しかし、それも含めて昭和プロレスの魅力なのかもしれません。真実を知った上で、なお愛し続けられるのが、本当のプロレスファンというものでしょう。裏も表も、光も闇も、すべてひっくるめて昭和プロレス。それを愛せるか否かが、真のマニアの条件なのです。

この本は、昭和プロレスマニアにとって宝の山です。懐かしい選手名、伝説の試合、そして今まで知らなかった驚きの事実。読み進めるうちに、あの熱狂の渦に巻き込まれていた頃の自分を思い出します。そして、いつの間にか「トルコさん、天国で見守っていてくれてありがとう!」と叫んでいる自分に気づくのです。

さあ、みんな! もう一度、あの熱い昭和プロレスの渦に飛び込もうじゃありませんか! 「燃える闘魂」ならぬ「燃える妄想」で、往年の名勝負を追体験しましょう! そして、プロレスの真実に触れた今こそ、新たな目で昭和プロレスを見つめ直してみましょう。きっと、また新しい魅力が見えてくるはずです。

セメント・ボーイ、トルコさんに導かれて、昭和プロレスの奥深さを堪能しましょう。彼の遺志を継ぎ、プロレスの未来を考えること。それこそが、真のプロレスファンの務めなのかもしれません。

最後に、トルコさんへの感謝の言葉を。

「トルコさん、あなたの言葉は今も我々の心に生き続けています。プロレスへの愛と情熱、そして真実を追求する姿勢。それらすべてが、我々プロレスファンの道標となっています。天国のリングで、力道山さんや他の伝説のレスラーたちと、素晴らしい試合を繰り広げていることでしょう。我々も、あなたが示してくれた道を歩み続けます。真のプロレスの姿を追い求め、プロレスを愛し続けます。安らかにお眠りください。そして、これからも我々を見守っていてください。ありがとう、トルコさん。」

さあ、プロレスファンの皆さん。トルコさんの遺志を胸に、新たなプロレス観戦の旅に出かけましょう。昭和の熱狂を忘れず、平成、令和のプロレスにも新たな魅力を見出していく。それこそが、トルコさんの願いだったのではないでしょうか。燃える闘魂、永遠なれ!

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