ファントムをみてきたはなし
この間、久しぶりに「ファントム」をみてきた。
初めてみたのは2018年なので実に5年ぶり。
加藤和樹さんのファントムの回で。
なんと光栄なことに初日を観劇できた。
大人になって「ファントム」をもう一度見て「経験が心を作るんだな」と思った。
ファントムは決して子供ではないのに、未熟でまだ幼い子供のようで、その歪さが、姿形ではなく心の醜さを表していて、ひどく悲しかった。
彼が自分で選択したわけではないのに、このようになってしまった、ならざるを得なかったことが悲しかった。
そして、彼自身が自分のしたことと向き合う時間もないまま人生を終えてしまうのが悲しかった。
そのことが誰にとっても一番悲劇だったように思う。
これはあまりにも悲しい物語。
その分オペラ座の怪人はその胸の痛みともに生きていくラストだから救われるし、どこまでもファンタジーなんだなと思った。
クリスティーヌの話をします。
顔を見て逃げ出してきたクリスティーヌが「戻らないと、謝らないと」というとても優しくてとても残酷な台詞。
きっとクリスティーヌがファントムの愛をファントムの望む形で受け取ることはないのに、彼女は同情と優しさでそれが正しいことのように彼の元へ走ろうとする。
優しさは時に残酷でとても無責任だ。
私の大好きな漫画「詩歌川百景」で「悪意のある人だけが毒を盛るわけではない。持っている本人にも自覚のない蜜があるのよ。良かれと思って…って善意のつもりの蜜がたっぷりかかってる」という台詞があるんだけど、それをすごく思い出した。
今回宝塚で見た時よりも、エリックもキャリエールも男性だったこともあって、すごくみんなが利己的で感情表現が生々しくて、原作やアンドリューロイドウェバー版とも通ずる「自分勝手さ」がしっかり描かれていて、よかったです。
あと、地下の演出が最高でオペラ座の怪人オタクの私は発狂してました。後ろの空洞が「地下水路」をしっかり表現してたところも、墓場の演出も、原作の読み込み深すぎて最高でした。
パンフに原作から描いたガルニエ宮の図が載ってたのも大興奮でした。
会場のアナウンスも始まり方も、ディズニーを感じるようなエンターテイメント性に溢れていて、普段「演出される人」が演出する舞台という感じがしました。
すごくワクワクして没入感があって本当に良かったなあ。
チャンスがあれば城田優ファントムも見たいところです。
(2018年に雪組ファントムを観た時に書いたブログを読んで見た。拙いけど、今感じたことと比較できて書いててよかったなと思いました。
宝塚初観劇だから余計におもろいです。)