シュワちゃんなんて可愛いものだよ
まずなにも言わずにこの動画を見ていただきたい。
昨年公開されたホラー映画、その名も『ドローン』
ドローンと殺人鬼の魂が合体してしまい、殺戮を繰り返すというなんともその手の映画ファンが喜びそうな設定だ。馬鹿らしいが、少なくともトマトよりは驚異的だろう。
調べたらアマゾンでも配信しているようだ。
しかし恥ずかしながら僕はまだ観ていない。
だってこんな映画に500円なんて高いじゃないか。
なんだって殺人鬼と合体させてしまったんだ? AIの反逆とかいくらでもやりようはあるだろう? という指摘は通じない。そーいう映画は得てしてそーいうものなのだ。
さて。無機物が襲ってくる映画といえば2010年代で代表的なのは『ラバー』だろう。
まだ観ていない読者のために軽く説明しよう。
タイヤが超能力で人間を殺しまくる映画だ。
映画としてメタ的な要素があったり、大量のタイヤが集まってきて人のいない道路をパレードのように走り回るシーンなど、やはりフランス映画、なんとなーくお洒落な雰囲気は醸し出している。
だがセクシーな女の子にシャワーを浴びさせて、タイヤをおびき出す作戦は流石にダメだろ。(当たり前だが女の子は人間である。メスのタイヤではない) タイヤもタイヤだ。その罠にまんまと引っかかってしまう。
日本のホラー映画の文脈を語るうえで、日常に根差した恐怖というのは外せないだろう。
一人でシャンプーしているときの背後、ベッドの下の暗い空間、悪霊たちはそういった日常の不安を的確に突いて襲ってくる。『リング』ならVHSだし、『着信アリ』は携帯電話が普及したころに大ブームになった映画だ。
海外にもまともな人間が制作したSNSでの恐怖を描く『アンフレンデッド』という映画がある。
なるほど、こういった映画は観た後も恐怖を引きずってしまうだろう。シャワーを浴びるのにも何か襲ってくるんじゃないかとビクビクしてしまう。
まさしくホラーである。
アメリカでもピエロ恐怖症の人間は無視できない数がいる。もちろん『IT』のせいだ。向こうでテレビを付けたらジブリ映画の頻度でやっている上に、リメイクまでしてしまったのだから現在進行形でピエロ恐怖症の人は増え続けているだろう。
だがこの『ドローン』を観た後に、日常で「もしかしてあのドローンも殺人鬼の魂と融合しているかもしれない!」と思う人がいるだろうか? タイヤも怖くないだろう。
まあ、こういう映画はもっぱらコメディ・ホラーとして片付けられてしまうのだ。制作陣もある程度は意図しているのかもしれない。
だがこういうものをマジで制作してしまう人たちは怖すぎるだろ!
正気ではない。
映画の内容よりよっぽど人間のほうが怖いという逆転現象が起きている。
マンネリ化したゾンビ映画と同じ現象だ。
同じ無機物が襲ってくる映画といえばお馴染み『ターミネーター』シリーズがあるが、あんなもの可愛いもんである。
人の形をしているし、喋る。
シュワちゃんなんて『2』で味方になるし、液体金属という武器を手に入れ襲い掛かってくるT-1000も自ら走ってバイクを追ってくる。
真面目な顔をして、必死に足を動かすあの姿。上記の映画を観たあとだと「なんて人間味が溢れているんだろう!」と感動すること間違いなしである。
少なくとも『ドローン』『ラバー』といった映画の制作陣なんかよりよほど人間的ではないか!
僕の予想だがそろそろ自動運転の車や、ウェアラブル端末が襲ってくるホラー映画が出てくるのではないだろうか?
C級ホラー映画も時代とともに進化していくのだ。