カズミのいとこ

カズミのいとこ

 

 

「でさ、カズミのいとこが連絡つかないんだって、もう二か月くらい。」

「いとこって、外国の?」

しゃかしゃか。

「そうそう」

「なにそれ、死んでるんじゃない?はっきりした方がいいんじゃない?」

「でも死んでるほうではっきりしても困るしねー」

「たしかに」

「ね」

「生きてるかもってくらいがちょうどいいかも。」

しゃかしゃか。

壁際で女の二人組がさっきからずっとシャカシャカポテトを振っている。振ることで好みの塩気になるポテトを。俺はそれを見ていた……わけではないが、自分の手帳としばらくにらめっこしているうちに気付いてしまった。さっきから。二人して本当にずっとシャカシャカポテトを振っている。俺が気付いてからでも十五分。

十五分もポテトを。しゃかしゃか。

「終電何時だっけ?」

「え?」

「終電あったっけ?」

「私歩いて帰るよ?」

「うそ、じゃあ私もそうしようかなー」

 しゃかしゃか。

「どうしよう、来週」

しゃかしゃか。しゃかしゃか。

「ほんと、どうしよう……」

 日も跨いで、しゃかしゃかとポテトを振るにつれて、民家の灯りもレストランの灯りも消えていく。二十四時間営業の店で、二人はいつまでもポテトを振る。

たぶん、地球から灯りが消えるまで。

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