必殺技

小学生の頃の記憶がゴッソリ抜けている。いじめられていた訳ではないのに廊下で一人で給食を食べたり、授業中、こっそり体育館のステージの奈落で遊んでいた(どう遊んでいたんだろう)記憶とか、どうでもいいことは覚えているのに。友達の名前とかほとんど出てこない。

その数少ない記憶の中に、マイブームみたいなギャグがあった。
「必殺!忍法の術!」と言いながらただその場から走っていく、というものだ。
なんなんだそれ、と思っていたが、30を過ぎた最近になってその面白さを理解しつつある。

「必殺!忍法の術!」には、本来付随すべき「隠れ蓑」とか「火遁」とか忍術の内容を説明するワードが抜け落ちているのだ。しかも必殺である。
実態は虚無であるのに大仰な振る舞いをするという、豪華な箱のみのプレゼントのような落差がこのギャグの真髄であったのだ。

小学生当時、自分でもこの面白さの理由を知らずただなんとなくハマっていたし、周りの誰も笑っていなかった気がする。今になってようやく理解するギャグとか、小学生の自分は面白さに至るプロセスをすっ飛ばして結果のみを産み出していて、すごかったんだなと思う。

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