大晦日の登山考
2024年12月31日に当年の締めとして神奈川県の丹沢・塔ノ岳(標高1491 m)を登りました。私の登山歴は学生時代から始まりますが、近年登山の機会が減ってしまいました。それでも年1~2回は行くようにしています。
2024年は10月初めに群馬県の尾瀬・燧ケ岳爼嵓(まないたぐら)峰(標高2346m)を登頂していますので、今回は2度目ということになります。登山には、健康上の効果のみならず、ストレス解消など精神衛生上にも効果のあることが広く証明されています。さて、大晦日の登山にはどのような意味があるでしょうか。
塔ノ岳は、丹沢山塊の中では東京からでも日帰り登山ができるアクセスしやすい山です。また、登山道が整備されていることから初級者にも人気の山です。一方、登りがいがあり(標高差1200 m)、中級者にはトレーニングの場としても魅力的な山と言えます。本稿では、今回利用した代表的な直登ルートである大倉尾根ルートを紹介します。
アクセスには、マイカーまたは小田急線渋沢駅からバスを利用し、大倉バス停まで行くことができます。
ここには駐車場、レストハウスがあり、身支度と登山届を投函してから出発します。登山口は舗装道路を登って行くことで容易に見つけられます。
この日は登山口を8時45分に出発しました。道は登るにつれてコンクリート塗装から石畳、そしてつづら折りの土道となります。観音茶屋を通り過ぎ見晴茶屋までは45分ほどで、そこまではハイキング気分で登れます。
この後、徐々に斜度がきつくなり木道や木の階段が続きます。
登山口から1時間半ほどで駒止茶屋へ到着しました。
駒止茶屋のベンチでは同世代の男性2人組登山者と出会い、つかの間の雑談を楽しみました。彼らは大晦日の夜は丹沢山の山小屋に宿泊し、元日に初日の出を拝むとのことでした。
駒止茶屋から次の山小屋である堀山の家まで30分ほどで到着、ここまでは足は何とか動きました。
道の斜度はさらにきつくなります。岩場もあります。一方、標高も高くなり景色が開けてきます。富士山も見えてきました。
この辺りから足が動かなくなってきます。先を歩いていた年配の女性は岩に腰掛け「足が疲れて動かないの。これから急な階段があって大変ね。先に行ってください。」と話しかけてくれました。とにかく足が重い。でも真っ青な空に勇気づけられて一歩一歩踏みしめながら足を前に進めました。
登山口から約3時間、バテた身体を運んでようやく花立山荘へたどり着きました。
標高は約1000 m。ここは見晴らしがよく、またベンチやテーブルもいくつか設置されていることから、休憩や昼食にもってこいの場所です。私もここで写真を撮ったり間食を取ったりしました。
少し長めの休憩の後、意気揚々と頂上へ向けて再び山を登り始めました。ところが、すぐに乳酸がたまり始め、腿に疲労感が現れてきました。そのため足が重く、ゆっくりしか歩けない感覚です。これは、休憩時間が長すぎたためのようです。しばらく歩いていると徐々にペースを取り戻すことができました。登山道は一旦下りになり、ようやく山頂が見えてきました。しかし、まだ先は長そうです。途中には落ちれば助からない痩せ尾根も通ります。
12時40分、ついに山頂に到達しました。花立山荘から50分、登山口からほほ4時間で登頂することができました。
山頂では昼食を楽しみました。ポットにお湯を持参していたので、コンビニで購入したカップスープにお湯を注ぎ、温かいスープを作りました。おにぎりと一緒に食べると、冷たい空気の中で体が温まりました。また、コーヒードリップバッグも持参していたので、入れたてのコーヒーも淹れました。山頂での入れたてのコーヒーの味は格別です。
山頂からの景色は本当に素晴らしく、富士山はもとより、江の島、伊豆大島、さらには、東京都心部の摩天楼まで見渡すことができました。
帰路は登ってきた道をそのまま戻るだけです。下りでは重力とストックを大いに活用し、頂上から2時間15分ほどで無事に下山できました。今回は好天が続いていたので登山靴ではなく軽量のランニングシューズで登山しました。ランニングシューズのおかげで軽快に登山をすることができました。また、ストックを使ったことから膝への負担が軽減され、疲労も少なく済んだと感じました。
今回の登山は、久しぶりの登山ということで、非常にきつく、つらく感じました。しかし、どんなに苦しくても一歩一歩前に進んでいけばいつかは山頂にたどり着けると自分の心に言い聞かせ続けて登りました。それによって、自分の弱い心と向き合いながらあきらめない心が鍛えられたように感じます。そして目標を達成した達成感を味わえることができました。
さて、この大晦日の登山のメリットについて改めて考えてみたいと思います。
まず、自然条件としてメリットがあります。冬型の天気配置により太平洋側は天気が安定していて空気が澄んでいます。また、丹沢山塊などの立地条件を考慮すると、積雪の少ない時期でもあり、比較的安全に登山ができます。これにより、登山にはリスクが少なく、何よりも素晴らしい景色が期待できます。
日帰り登山でも非日常の体験と達成感は精神衛生に大きなメリットをもたらします。さらに、大晦日の夜を山小屋で過ごすことで、初日の出を山頂から拝むこともできます。加えて、1年の最後の日に体力的にきつい長時間の運動をすることから、この1年であった嫌な思い出をすべてを忘れ、登山に専念することができます。
それらによって、いわば1年間の垢をそぎ落とし、ストレスが解消されて爽やかな気持ちで新年を迎えることができるでしょう。仮に翌日以降に筋肉痛になっても、正月三が日で回復できるはずです。
このようなことから、大晦日の登山には非常に大きなメリットがあると考えられます。来年の大晦日には皆さんも登山を計画してみてはいかがでしょうか。
とはいえ、登山はどんな時期でも素晴らしい体験が得られると思います。2025年は登山回数を増やしたいと思っています。自然のなかで心と体をリフレッシュできる登山を大いに楽しみましょう。