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Leica M11に合う現行35mmレンズはどれ
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あなたの、お気に入りの焦点距離はなんですか?
大体、28, 35, 50のいずれではないかと思います。
私の場合は、35mmです。
FUJIFILMのX100で写真を始めて以来、基本的に35mmで撮ってきました。
ほどよく周囲を取り込める感じが大好きです。
今回、Leica M11を買うにあたり、気になっていた
この超絶な60MPセンサーにどんな35mmレンズを合わせたらいいのか?
100万円するApo-Summicronじゃないとダメだったらどうしよう?
を、以下4本の現行レンズで検証してみました。
Leica, Summicron-M 35mm f2 ASPH v2 (1997年設計/2016年改修, 42万円)
Carl Zeiss, Biogon 35mm f2 ZM (2008年, 7.8万円)
Carl Zeiss, C. Biogon 35mm f2.8 ZM (2006年, 6.6万円)
Voigtlander, Ultron Vintage Line 35mm f2 ASPH, Type I (2019年, 7万円)
結論から言うと、
Apo-Summicronじゃなくても、十分楽しめます。
比較的安く良質なライカレンズがどうしても欲しいなら、Summicron-M 35mm ASPH
f2.8で十分なら、Carl Zeiss C.Biogon35mm f2.8 ZM
f2が欲しいなら、Carl Zeiss Biogon 35mm f2 ZM
だと思いました。
どう言うことか、見ていきましょう。
※あくまで、自室で出来る簡易な分析と、それに基づく個人的な感想です。どなたかのお役に立てると良いなと思い書くのが目的であり、特定レンズの誹謗中傷を目的としていないことをご理解ください。
※この投稿では比較評価を中心に行います。各レンズの細かい豊かな描写については、別に書く予定です。
描写
解像とボケは、C Biogon
デスクトップ環境1m程度で作例を撮り比べてみました。
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全体を見ると、Summicron ASPHよりBiogon系の方がボケなだらかな気がします。Summicronはちょっとピントが急峻かつ後ろのライトもざわついているような。
※そういえばRockwell先生も似たような比較をされていました
中心を見ていきます。
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比べると、Biogon系とUltronが解放から割と明瞭に像を結んでいるのに対して、Summicronはf2とf2.8では中心からずれた位置(フイルムの位置)で像が曖昧な気がします。
先達に結果を見せたところ
「レンズの状態の問題で、片ボケしているのでは?」
とのことだったので、チャートをキンコーズで印刷して、もう少し実験室っぽい環境でも試してみました。
▼実験条件
A2に印刷したチャートをホワイトボードに貼り付け1m程度で撮影
自然光は排除しましたが、室内LED明かりが左端に入射するのを避けられませんでした。。。
撮影時はブレを防ぐため、ガッチリと三脚で固定し、タイマー2秒で撮影
全体、Mid、Cornerの順で見ていきます。
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まぁ、Webで見るくらいだとあんま違いわからないですね。。
Biogon系は少し周辺減光が多い気がします。が、私は被写体を目立たせるためにビネットをよく使うので、個人的には気になりませんでした。
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中央もあまりかわらない。
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SummicronとUltronは像が結べておらず、Biogon f2はモヤが濃いめ発生。
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Summicronはかなり改善、Biogonはモヤが薄めに変化、Ultronは引き続き解像できず
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C. Biogon f2.8 > Biogon f2 > Summicron >> Ultron
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f4同様に、C. Biogon f2.8 > Biogon f2 > Summicron >> Ultron
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C. Biogon f2.8 = Biogon f2 = Summicron = Ultron f2
周辺では大きな差が出ました。全体の傾向として、
C. Biogon f2.8 > Biogon f2 > Summicron >> Ultron
のように見えました。
C. Biogon f2.8は、開放f値の小さい無理のない設計が良いのか、常に画面全体が解像していました。
Biogon f2はモヤが目立つものの、解像は常に良し。開放付近でモヤが目立つと言う点では、ある種ヴィンテージレンズっぽいですね。
Summicronはやはりf2での解像しなさが目立ちました。
Ultron は海外での評判良さやぱっと見の印象に反して、f5.6まで解像していなかったのが意外でした。おそらく収差の制御で感覚的に良く見える絵を実現してるのでしょう。
※上の主題とずれる&補正が容易なので、優先度低いのですが、Biogon f2とUltronでは樽型歪みが目立ちました。
フレア耐性は、Ultronすごい
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f2, Leica M10-P + Summicron-M 35mm ASPH v2 フードあり
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f2, Leica M10-P + Biogon 35mm f2 ZM フードなし
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f2, Leica M10-P + Ultron Vintage Line35mm f2
フレア耐性を見て見ました。Summicronのみフード付き、それ以外はフードなし。
※C. Biogon f2.8で撮影し忘れました。。。
どれも優秀ですね。Summicronのフレアは描写として使い道があるのでOK。ただ、現行レンズのフード付きでこういったフレアが出るとは意外でした。
3D Popは、C Biogon
とはいえ大事なのは描写でしょ。と言うことで、描写の中でも個人的に重視する3D Pop (質感描写、立体感)を見てみました。
本当は人間が一番敏感に近くできる人肌での比較が良かったのですが、今回は猫さんにご協力いただきました。
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見ていくと、どれも十二分な立体感があると思いました。あえて挙げるなら、個人的な好みはC Biogon。
柔らかすぎず固すぎ、それでいて十分前に飛び出してくる感じがあると思いました。ボケの連続性も影響しているかもしれません。
比べると、Summicronはどちらかというと線画太め。ピント面が急峻なせいか、まずピント面にぐいと視線誘導される、そのせいか奥に引き込まれる印象。
Ultronは昔の意味でいうカリカリというか、線が細くて猫の毛が現物より堅そうに感じました。
エルゴノミクス
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SONY α7S + Macro Apo-Lanthar 65mm f2
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SONY α7S + Macro Apo-Lanthar 65mm f2
軽さと小ささ はUltron、ついでC. Biogonf f2.8
どのレンズも開放f値を抑えて、軽め&小さめのレンズ。
あえていうなら、C. BiogonとUltronが小さく軽く良い感じ。でも、Summicronも決して大きい感じはなく、次に書くように操作しやすく堅牢な、しっくりくる大きさだと思いました。
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操作性 はSummicron
ライカの特徴として左手人差し指を引っ掛けて操作できるフォーカスタブが挙げられます。
タブがあると、焦点距離の前後移動を指ポジションの置き換えなくできるので、速射性が上がります。
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taken by SONY α7S + Voigtlander Macro Apo-Lanthar 65mm f2
今回のモデルのうち、元からフォーカスタブが付いていたのが、Summicron ASPH。非常に大きくて使いやすいです。
また、Ultronに関してはType1に、3Dプリンタ製の小型フォーカスタブを後付けしました。Type2はフォーカスタブつきです。
Ultronは距離指標が小さすぎてちょっと見にくかったです。が、フォーカスタブにしてマッスルメモリーで大体どこのタブ位置が何mか分かってからは、距離指標を見る機会が減り、気にならなくなりました。
Carl Zeissはコンタレックスの時代から、タブではなく盛り上がった一体型ノブが伝統。このBiogonたちもそれに則っています。せめてUltronと同じように後付けできると言うことないのですが。。。個人的には残念。
造形は圧倒的にSummicron
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毎日撮りに出かけられるわけではないと、ニマニマしながら鏡筒を眺める時間が増えがちです。
そんな時、個人的には鏡筒デザインはめちゃ大事です。
鏡筒デザインについては個人的には、Summicronが圧勝。
Leica M 本体と合わせたデジタル文字
無駄な空間のない、リズム良い鏡筒デザイン
ねじ込み式のカッコ良い金属フード
どれも大好物です。
個人的な次点は、無駄な隙間がなく、距離指標も見やすい C. Biogon。
逆にBiogon f2は単純にC Biogonf 2.8を伸ばしたデザインのため、距離指標と絞りの間に意味のない空間があるのが、個人的には残念でした。
UltronのType I は、メーカーのコシナさんが言うように、いいヴィンテージ感出ていると思いました。銀色の金属がもう少し上質だと、最高だったと思います。
まとめ
改めてまとめると、個人的なおすすめは以下の通りです:
比較的安く良質なライカレンズがどうしても欲しいなら、Summicron-M 35mm ASPH
f2.8で十分なら、Carl Zeiss C.Biogon35mm f2.8 ZM
f2が欲しいなら、Carl Zeiss Biogon 35mm f2 ZM
個人的にはSummicron ASPHはエルゴノミクスは最高なのですが、開放描写がヴィンテージレンズ並みに留まったのが気になりました。新品42万円の期待値はgoodではなく、素晴らしい、だと思うからです。
良い状態のヴィンテージレンズだと考えれば、有りかと思います。が、ヴィンテージなら、もっと癖の強いモデルを探しても良い気がします。
と言うのも、おそらくver.1の設計が1997年とデジタルを想定していない時期の設計だからだと思います。デジタルネイティブな設計の35mmというと、M8発売の2006年以降に発売された以下の設計レンズが必要なのかもしれません。
Summarit-M 35mm f2.5 ASPH (2007年発売)
Summilux-M 35mm f1.4 ASPH FLE (2010年発売)
Apo- Summicron-M 35mm f2 ASPH (2021年発売)
※FLEは1993年のWalter Watz先生の設計に、Peter Karbe先生がFloating Elementを追加設計したもの。なので、ネイティブとはいえない可能性あります
描写の観点で行けば、C. Biogon f2.8 の解像・ボケ・3D Popの良さと、軽さ・小型さに心ときめきました。さすが設計年代が2006年以降なだけはあります。デザインも、純正でなく、Haogeのフードをつけるとかっこいいです
Biogon f2は、十分優秀ながら、開放付近で割とモヤモヤするため、開放付近をヴィンテージ系と思って使うなら割安なので、全然良いと思いました。
Ultronは上記の通り、チャートでの成績は良くなかったですが、もしかしたらこれは個体差なのかもしれません。ただ、割と硬めの描写をするので、そこは好みが分かれると思いました。個人的にはZeissくらいには柔らかさが欲しいところでした。
そのほかに夢想するなら……
あり得る選択肢は、以下の二つでしょうか:
ライカヴィンテージレンズと現代優秀レンズの2本持ち
or 両者いいとこ取りの1本持ち
2本もちでは、具体的には以下の候補が気になります:
ライカヴィンテージ
Leica, Summaron 35mm f3.5
or Leica, Summilux 35mm f1.4 2nd.
現代優秀レンズ
上述のCarl Zeiss, C. Biogon 35mm f2.8 ZM
or(重めでも良いなら)Voigtlander, Apo-Lanthar 35mm f2 VM
両者いいとこ取りは「これ1本でいい!」と言うシンプルさに憧れます。
具体的には以下の3本が個人的な候補です:
Leica, Summilux-M 35mm ASPH FLE
Leica, Apo-Summicron-M 35mm f2 ASPH
(重くてもいいなら)Carl Zeiss, Distagon 35mm f1.4 ZM
が、上2本はかなり高いので、かなり苦しい……と思いましたが、FLEだと2本持ちと大して価格差ないかもしれませんね……。
※【再掲】あくまで、自室で出来る簡易な分析と、それに基づく個人的な感想です。どなたかのお役に立てると良いなと思い書くのが目的であり、特定レンズの誹謗中傷を目的としていないことをご理解ください。