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クリスマスのルーレット地獄
今回は、私が経験したルーレットディーリングで最も忙しかったクリスマスの話をしたいと思います。
当時、私が働いていたカジノは一般エリアとVIPエリアを合わせて100台以上のテーブルを持つ大型カジノでした。
地域密着型のカジノでしたが、空港からも比較的近かったため、毎日多くのプレイヤーが訪れる場所でした。
なぜクリスマスはルーレットが忙しくなるのか?
その日はクリスマス。私は数あるカジノテーブルの中でも、イベント時に圧倒的に忙しくなるルーレットの担当になりました。
なぜルーレットがイベントの日に忙しくなるのか?
それは、クリスマスディナー後のカップルや友達グループが、軽いノリで遊びやすいゲームだからです。
バカラのように真剣勝負ではなく、「楽しければOK!」というパーティー気分のプレイヤーが多いため、ルーレットテーブルの周りはお祭り騒ぎになります。
そして、そんな中でディーリングをすることがどれほど大変か——その日、私は思い知ることになりました。
想像を絶する忙しさ
当時の私のシフトは夜8時から明け方4時までの8時間勤務。
カジノが最も忙しくなるのは夕食後の10時~12時頃ですが、クリスマスのその日は、出勤した時点ですでにルーレットテーブルはカオス状態でした。
テーブルには誰がプレイヤーなのかわからないほどの人だかりができ、カラーチップはすべて出払っている状態。
交代で退勤するスタッフの「やっと終わった…」という表情からも、その大変さが一瞬で伝わってきました。
ルーレットの複雑な計算がさらに追い打ちをかける
ルーレットは、ディーラーが回したホイールのどの数字にボールが落ちるかを予想してベットするゲームです。
ベット方法は多数あり、それぞれ配当倍率が異なります。
例えば、「5」にボールが落ちた場合、関係するベットだけが勝ち残り、それ以外はすべて負けベットになります。
しかし、勝ちベットの種類が多いため、それぞれの倍率を計算しながら合計額を出さなければなりません。
シンプルなベットなら計算も簡単ですが、
「35倍のベットが13枚」「17倍のベットが24枚」「8倍のベットが19枚」といった状況では、瞬時に暗算するのはなかなか大変なのです。
色とりどりのチップ、プレイヤーの数が把握できない…
ルーレットでは、プレイヤーごとに異なる色のチップ(カラーチップ)を使用し、混同しないようにします。
例えば:
• プレイヤーA:ブルーのチップ
• プレイヤーB:グリーンのチップ
通常、多くて10色程度のカラーチップが用意されていますが、この日はすべての色が使用され、さらにキャッシュチップも混ざる混沌状態。
誰がどのチップを使っているのか把握するのも困難でした。
ベットの数が多ければ多いほど、1ゲームにかかる時間も増え、配当の計算はもちろん、負けベットを片付ける作業も大変です。
この日は、一回のゲームで1000〜2000枚ものチップを回収するという状況。
手作業ではとても追いつかないため、「チッピングマシン」という救世主が活躍します。
チッピングマシンがなければ終わらない作業
ルーレットテーブルの一角には、チップを投入すると自動で色を判別し、整列させてくれる「チッピングマシン」が設置されています。
このマシンがなければ、こんなに忙しい日はディーリングは成り立ちません。
今でもディーラーと「チッパー」という補助スタッフが手作業でチップを整理したりもしますが、この状況で手作業だったら完全に詰んでいたでしょう。
ディーラーの暗算力が試される地獄
チッピングマシンがチップの整理をしてくれるとはいえ、配当の計算はすべて自力です。
しかも、ベット枚数が多く、倍率が異なる賭け方が入り乱れている状況では、どうしても計算に時間がかかります。
この日、私が対応した中で最も多かった配当枚数は3000枚。
それをすべて暗算で計算し、正確に配当した自分を今振り返っても褒めてあげたいほどの大変さでした。
ミスの発生——もはやカオスな状態
何時間もディーリングを続けていると、どうしてもミスが発生します。
この日も、同じ色のチップを2人のプレイヤーが使っていることに気付かず、誰のベットなのかわからなくなる事態が発生しました。
本来であれば、サベーランス(監視カメラチーム)に確認を依頼し、正しく修正するべきですが、
この日はプレイヤー数とベット量が異常すぎて、それすらもできない状況。
そこで、通常は避けるべきですが、わからない分はすべて元の金額まで払い戻すという対応を取りました。
カジノは「Time is Money」
カジノは常に正確な運営を求められる場所ですが、場合によっては「最短で解決できる方法」が選択されることもあります。
なぜなら、カジノは「Time is Money」——プレイ回数が増えるほど利益が上がる仕組みだからです。
ミスの処理に10分もかかるなら、多少の損失が出ても、早くゲームを再開した方が合理的と判断されることもあるのです。
終わらないルーレット地獄
今思い出しても、あの目の回る忙しさは気が遠くなります。
クリスマスのあの日は、まさにルーレット地獄でした。
ルーレットディーラーは華やかに見えて、実は過酷な仕事——そんな現実を思い知らされた一日でした。