10のキーワードから探るトップブランドの底力| FUGA

1990年代のオープンから、都会的でモダンなスタイルが多くの人を魅了する、青山・キラー通りの「FUGA」。
その活動はフラワーデザインにとどまらず、インドアグリーンでも業界を牽引する存在に。
常に最先端を走り続けるための伸びる人材作りを、10のキーワードで創業者であり、代表取締役社長の小林深雪さんにお話を伺った。

●1店舗で、働くスタッフは30名。フラワーセクション、プランツセクション、配達、バックオフィス部門に分かれている。
●社員の平均年齢は30歳前後。
※2017年8月雑誌『フローリスト』掲載時

全員が正社員

在籍している30名のスタッフは全員正社員。
基本的に3ヵ月の試用期間を経て正社員雇用。
これは創業から変わっていない。
自身の修業時代の経験から「やっぱり雇用や仕事に対しての評価が不安定だと、将来に不安があり、実力を発揮できないと思います。責任を持って仕事に取り組んで欲しいですし、誇りを持ってFUGAというブランドを維持し、より高めて欲しいという思いがあります」。
女性が多い職場ということもあり、産休、育休の取得や時短勤務なども積極的に導入し、取得しているスタッフも少なくない。

入社後2年は雑務

入社して2年は他店からの転職であっても、配達、梱包、カウンターのアシスタントなどの雑務からのスタート。
花店の根幹ともいえる地味な作業をしっかり覚えて学ぶことを大切にしている。
「配達でお客様と接することで、お花を贈られたお客様の喜びを知り、梱包作業を通じリスク管理を覚え、カウンターアシスタントではお客様との会話で学ぶことは多いものです。地道な仕事ばかりですが、この2年でしっかり力を蓄え、乗り越えることがその後につながっていきます」
募集について詳しくは >> https://fuga-tokyo.com/recruit/

自主練で技術を磨く

3年前までは終業後、練習時間を作り、小林さん自身や技術のある先輩スタッフが花束やアレンジの制作指導を行なっていた。

「美容師さんの練習のように行っていたのですが、だんだん受け身になり、練習をやらされているような雰囲気になってきたので、思い切ってやめました。ただ、店頭で悪くなった花などの残花はスタッフが自由に使っていいルールなので、その花で各自が自主練習に取り組みます。練習が足りないな、と思うスタッフには、気がついたら、努力不足ではないの?などと、厳しく発破をかけることもあります。それがいい緊張感を生み出していると思います」

社内テストは先輩からの進言で

技術向上は自主性にまかせているが、カウンターでお客様の商品を制作するためには、テストを行い小林さんが判断。ともに働いている先輩が後輩のレベルを見て、試験を促す。
ブーケのテストは、テーマが決められ、制限時間内に販売価格5000円の予算で制作。
以前は3000円だったが、制作者らしさがより表現できるように金額をアップ。FUGAらしさというボーダーラインを超えられれば合格。

環境で人は変わる

「どのスタッフにもこの会社を退職した後に、きついこともあったけど、ここで働くことができてよかったね、と思えるような働き方をしてほしいと思っています。働く環境や働き方で人は変わります。特に負けず嫌いの人は驚くほど、成長を遂げることもあります。集団での協調性があるイエスマンよりも、この業界の中で自分の存在意義を残そうと必死なのがよいと思いますし、大切なことだと思います」

海外研修で成長を促す

年に1、2回程度はスタッフを海外視察研修に。
昨年はニューヨーク、サンフランシスコに2名が行った。
過去にはフランス・パリのメゾン・エ・オブジェ、タイの洋ラン生産地などにも行っている。
「20代は吸収力がとてもある時期。この時期にいろいろなものを見て、自分のものにすることが大切。スタッフには海外を肌で感じることでより大きく成長してほしいですし、投資した分だけ会社にリターンもあります」
新型コロナウィルスの影響で、2020年からは行っていないが、流行が落ち着きしだい実施予定。

昇級は社長判断で

毎年1月には全員がそれぞれ、今年の目標と昨年の反省をまとめたレポートを社長の小林さんに提出。
2月には小林さんが一人ひとりに今年の年棒とスタッフへの思いを書いた直筆の手紙を渡している。
給与体系には明確な基準を設けず、社長判断のみ。
これに不満や意見がある場合には面談を希望することもできる。
「以前は全員と面接していましたが、時間的な問題もあり、この方法に変えました。日頃から全員とこまめにコミュニケーションを取っているので、大きな問題はありません。昇給は業務についてはもちろんですが、社員個人の事情も配慮しています。少なくない人数ですが、30名前後なので1学級と考えれば、ちょうど目が届く範囲だと思いますし、できるだけ細やかな気配りをしていきたいと思っています」。

朝礼と終礼でコミュニケーションを円滑に

以前は全部署での全体会議も行なっていたが、現在は日々の朝礼と終礼のみ。
始業時間が部署により異なるため、朝礼は部署ごと、終礼は部署間で時間を決め全体で行っている。
また花店はついつい長時間労働になりがちだが、毎日の終了目標時間を設定。仕事が終わる目安の時間があることで、残業が大幅に減ったという。

思いと行動を明文化したクレド

FUGAのブランドとしてのスピリットや働く上でのミッションを2013年に明文化したのがクレド(企業信条)。
残念ながら社外秘であるため、ここでは公表はできないが、クレドの中には「FUGAスタッフとして以下の事を守ります」という13項目がある。
朝礼や終礼ではクレドを活用しながら行うなど、日々の業務の中で常にクレドを意識してスタッフは働いている。

意見が言いやすい環境

先輩後輩であっても、仕事に関することならきちんと意見を出し合おうという企業風土からか、小林さんへ直接やりたいことを訴えるスタッフも多い。
「基本的には、新しいことはやってみよう!というスタンスです」と懐が広い小林さん。
スタッFUGA新たにやりたいことがあるときは、客観的な材料をきちんと準備した上で提案。
実行する際には小林さんなりのアドバイスも入り、よりブラッシュアップした内容となる。提案をきちんと受け止めてくれるからこそ、スタッフは守りに入らず挑戦的になる。

話をうかがった人
小林深雪 Miyuki Kobayashi
FUGA代表取締役社長。
山形県出身。大学卒業後、花店へ就職。都内のいくつかの店を経て、青山キラー通りにFUGAを設立。2002年には現在の場所に 移転し、地下には観葉植物の売り場を展開。数多くのトップブランドの装飾や雑誌の撮影などさまざまな分野で活躍中。2021年更なるステップアップと成長のため、経験者採用に力を入れている。

FUGA
東京都渋谷区神宮前3-7-5青山MSビル1F・B1F
TEL03-5410-3707/FAX03-5410-3706
http://www.fuga-tokyo.com

写真/フローリスト

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