自分の仕事が無くなればいい。#自己肯定とマーケティング4.0
世間一般的にマーケティングと言う言葉が使われる様になって久しいですが、その定義は曖昧で人によって様々です。アメリカ、もしくは日本のマーケティング協会では難しい言葉を並べつつ、結局、事業に関わるありとあらゆるタスクは全てマーケティング活動の一環だとに位置づけています。原理原則に則った活動を軸とする古典的マーケティング論者は「信頼を軸にして自社独自のマーケットを作ること」そして、売り込みを一切行わなくても継続した売り上げ利益が見込める状態を作ることこそがマーケティングだと言われます。私もその一派で、コミュニティービジネスがマーケティングの着地点ではないかと考えてこれまで事業を行ってきました。しかし、最近になってそれもまた最終的な形ではなく更にもう一段階ステップアップして新しいフェーズに移行するべきではないかと感じています。
マーケティングの変遷
TVや新聞への折り込みチラシなどのマス媒体を使って消費者への強制介入でもある宣伝広告で需要を喚起したのをマーケティング1.0とするならば、焼畑農業のような新規顧客ばかり追い回すのではなく、LTV(ライフタイムバリュー=顧客生涯価値)を引き受けれるようなストック型のビジネスモデルはマーケティング2.0に位置づけられます。そして、顧客をコミュニティー化して、独自のマーケットを作り上げる循環型モデルに成熟させるのが3.0になるかと思います。これが仕組み化すれば持続可能なビジネスモデルが構築され、コミュニティ内で価値が循環する安定した状態が実現します。マーケティング界の大御所、コトラーの定義とは若干違いがあるのですが、長年、マーケティングを学び実践して来た私はそこを目標として事業に取り組んできました。そして、最近になって今の時代にあったその次のフェーズがあるのだと気が付きました。
最も稼ぐ弁護士の在り方
私が知る限りではありますが、最も儲かっている弁護士の先生は大手上場企業の顧問を複数兼任している先生でも、華々しく法廷で活躍して卓越した業績を上げ続けている方でもありません。それは、おとなしい落ち着いた雰囲気の女性弁護士先生で、主な活動は弁護士と言う職業が必要でなくなる様に無料相談をはじめとする様々なボランティアの様な活動をしていると言われます。詳細は存じませんがとにかく、企業間、親族間、問わずあらゆる人の間で起こる紛争やいざこざが起こらない様に未然に防げる事を目的に多くの人の相談に乗って人間関係を整える事に注力しているとのことでした。結果、弁護士としての依頼も、その様な活動への支援者からの応援も集まり非常に忙しく、そして収益も上げておれます。対処的な紛争解決ではなく、根本的問題解決に根差される活動に注力されることで、圧倒的な信頼を得て弁護依頼が殺到しているのには衝撃を受けました。
お金を否定する公認会計士
昨日、とあるオンラインmtgに出席した際にも同じ様な体験をしました。若い公認会計士の先生が財務戦略と真反対にある非営利法人のNPO団体の活動を熱心に行なっていたのを見て、東証1部に上場している企業の監査役に抜擢されたとの事でした。その若き会計士の先生はビジネスとソーシャルの架け橋になる事を目指して現在もNPO団体の支援やお金の無い世界の実現について熱心に研究を続けているとので、いわば自分の仕事を否定する活動に力を注いでいると言っても過言ではありません。上述の弁護士さんとよく似た立ち位置、在り方で仕事に向き合い、結果的に大きな成果を上げておられます。
社会課題解決への共感と支持
もちろん、自分の仕事を否定する取り組みがマーケティング戦略とは言えないとは思います。しかし、世の中に数多く存在する社会課題に向き合い、解決の為に尽力する事で多くの人から圧倒的な信頼を得て、次々に新しい仕事の紹介が舞い込むのは仕組みと言うより、状態を整える在り方として非常に有効なのは事実です。そこにマーケティング3.0の次のフェーズへのヒントが隠されていると思うのです。コミュニティ形成を軸にして自社独自のマーケットを作り上げる持続可能なビジネスモデルの構築は、実は顧客数の自然減への対処が不可欠です。既存顧客からの紹介で減少数を賄えれば良いのですが、実は紹介と言うのはしてもらうのも、するのも大きなエネルギーを要するもので、自然発生的に繰り返されるのは簡単ではありません。出来るなら、圧倒的な信頼を寄せてもらっての新規顧客の集客を継続して行うべきです。そのヒントが自分の仕事を否定する弁護士さんや会計士さんにあると思うのです。大きな共感を得る取り組みに力を注ぐ事が結果的にビジネス課題を解決すると思うのです。
自己肯定こそ究極のマーケティング
経営の神様ドラッカーはマーケティングの定義を「一切のセリング(売り込み)を無くするもの」と言われました。それは間違いなく、顧客、もしくは顧客の集合体である市場から圧倒的な信頼を勝ち取る事に他ならず、経営者にとって最も重要な資質は誠実さ、真摯さである。との言葉に代表される様にやり方よりも在り方が重要であると繰り返し書かれています。誠実さが訴えるのは感情であり、ロジックではありませんが、ドラッカー博士のマネジメント論を突き詰めると、自分のビジネスにおける損得勘定を度外視してでも、自分が持つリソースを活用して世の中の課題を解決する事に熱心に取り組む事こそ究極のマーケティングとなり、事業所が真に持続可能性を手に入れるフェーズへと足を踏み入れる取り組みになると思うのです。自己否定の取り組みこそ、最終的な自己肯定に繋がり、社会のニーズに応えながら必要とされ、存続を許される事業モデルへと成長出来ると思うのです。建築会社は建て替えなくても良い建物を、リフォームの必要を無くすメンテナンスを心がけ、実践するところから始めるべきだと思うのです。
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受け継がれる価値のある丁寧なモノづくりと地域の課題解決に取り組んでいます。
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