66ヶ月カウントダウン #事業承継
私はもうすぐ54歳になります。現在、神戸を拠点に地元に密着した地域工務店と、人と人を繋ぐコミュニティー事業を行っている株式会社四方継の代表取締役と、全国で建設現場実務者向けの研修事業を中心に組織改革のセミナーやワークショップ、更に社外顧問として事業所に入り込んで運用のサポートを行う一般社団法人職人起業塾の代表理事を務めています。そもそも、創業時に掲げた大工上りの私のミッションは「職人の社会的地位の向上」であり、両方ともライフワークと言って過言でない非常にやりがいのある面白い仕事です。ただ、二足のわらじを履いているおかげで年間のスケジュールが常にほぼ詰まってしまっており、新しく取り組みたい事に取り掛かる時間も取れないのが現状です。こんな状態をいつまでも続けているわけにもいきませんので6年後の還暦をめどに株式会社四方継を完全に事業承継して、一般社団法人職人起業塾の仕事に専念することを決めており、現在スタッフに対して事業の引き継ぎに取り組んでいます。このnoteには事業継承に必要なタスクや条件、組織論をマガジンとしてまとめており、リアルにその内容に沿って組織改革と権限委譲を進めています。私が引退するまであと66ヶ月、そのカウントダウンの模様をここにも記しておきたいと思います。
属人的継承ではなく、組織への事業承継
今日は第2回目となる株式会社四方継リーダーズミーティングを行いました。構成するメンバーは30代〜40代の4名の大工と1人の設計士(女性)です。一般的に事業承継は次期社長を指名して、順次、社長の役割と権限を移していくことが多いようですが、私は1人に大きな責任と役割を引き継ぐことをやめて、長年一緒に働いてきたメンバー達に組織として事業の運営を引き継いでもらう事にしました。基本方針として、新時代に順応し、新たな価値創造や問題解決を生み出せるように、タレンティズム(才能主義)の組織への移行とその個々の才能や能力が十分に発揮される組織での事業所の運営を目指しています。それはピラミッド型の管理組織から、フラット型の主体性を重視した無管理の組織であり、高い意識をもったプロフェッショナルによる合議制での事業運営はこれからの先行き不透明な時代を生き抜くには非常に適していると思っています。今後、希望する者には全員、運営メンバーに入ってもらいたいと思っていて、社内で規定しているキャリアプランの等級制度でリーダーとしての役割を引き受けてくれた者には全員、組織を運営する側に回ってもらいたいと考えています。当然、若手の成長に合わせてメンバーが増える可能性もあり、運営メンバーが増えれば増える程、良いアイデアが生まれ、相互補完が叶うようになり、より良い体制になるのではないかと勝手に想像しています。とにかく、まずはこの5名と事業承継の取り組みをスタートさせることになりました。
無管理、無承諾、無許可の組織
本日のmtgに参加した5名は全員、リーダーとしてそれぞれの担当部署で活躍してくれており、基本的に私は管理をしておらず、主体性に任せて自由に働いてもらっています。もちろん、それぞれが稼いでもらうべき必要な利益額を明確にしているし、顧客の評価はアンケートで100点満点を貰ってこなければならない等の最低限のルールはありますが、基本、相談を受けない限り私は実務にはノータッチですし、現場の段取りだけでなく休日も有休消化も全て自分たちで決めてもらっています。そもそも、一般社団法人職人起業塾の研修の元になっている社内研修は、起業したいと志す社員の独立支援でした。その対象が広がって工務部の大工全員になり、いつ独立しても立派に事業をやっていけるぐらいの高いスキルを持って、社内で活躍してポストやポジションを得てもらうようにと、経営者と同じ感覚を持って顧客に相対するような人材育成を目指して社内勉強会を続けてきました。その結果、リーダー格全員が株式を譲り受けて経営者として合同で事業所を運営していく事になった訳ですから、当然の流れであるべき姿に受かっているのかも知れません。とにかく、事業承継に向けてた新しい組織内では管理体制という概念を捨てて、主体的で意欲的な個々がそれぞれ自由に、やりがいを持って、今まで以上の付加価値を生み出しつつ、相互依存、相互補完しつつ、全体最適の中で四方良しの世界を作ってくれたらと思っています。
インナーブランディングの移譲
本日のmtgは、完全に事業承継するまで残り66ヶ月と期限を定め、改めて丁寧に権限移譲の方向性と概観を説明しました。実のところ、4年ほど前から二足の草鞋を履いている私は工務店の建築実務はそんなに行っておりませんで、基本的に設計も現場施工も、営業的な業務も担当スタッフに裁量を渡して任せており、また、それができるように社員大工や設計士の内製化と育成を進めてきたと言う事でもあります。現在、私が受け持っている業務は新築や事業系の顧客の資金計画を含む全体的な建築計画のお手伝いと土地探しのアドバイスくらいで、それもロジックとしてまとめているので建築の実務的な側面で言うとスタッフに役割を移すのはそんなに難しくはありません。
その他の役割としては社内的な統括や調整で、今日のmtgの主題はインナーブランディングと言われる内向きの価値創造と問題解決について、メンバーで手分けして進める具体的なアクションを決めて、一歩を踏み出すキックオフを行うことでした。面白い案が次々出たので、来月からはその運用と検証を行いながら、66ヶ月のロードマップをまとめていきたいと思っています。その他にも、業界団体やNPO法人等での対外的なボランティア的な活動や情報収集などがありますが、この辺りは追々担当者に割り振りをして任せていきたいと思っています。
論語と算盤
今回から参加のメンバーもいたので、mtgの冒頭に丁寧に事業承継にまつわる概観を説明しましたが、それを乱暴にまとめると、「これから66ヶ月で事業承継できる状態を作る」ということです。その状態には大きく2つの要素があり、一つは、事業所が持続するには不可欠な「売り上げ、利益」が常にあるようになることで、もう一つは、事業の目的を共有し、基本的な方向性を組織に所属する全員が理解して、相互依存、相互補完できる状態を整えることです。他にも枝葉のことは数々ありますが、外部環境の変化に翻弄されることなく、しっかりと利益が上がる体制が整い、組織のメンバーが皆で助け合い、事業所が目指す「四方良しの世界」の実現が叶えられればそれでいいと私は思っています。
私が事業承継に取り組む理由。
私が構想からすれば10年、具体的なアクションをスタートさせてから6年もかけて事業継承を行おうと莫大なエネルギーを使う理由は、とにかく約束を守りたいからです。その約束とは、顧客に安心して暮らせるサポートをし続けると言ってきた事、もう一つはスタッフにも安心で良い暮らしを手にしてもらえるように努力すると毎年の事業計画を説明する度に言い続けていること。その他にも、取引先や職人さんにも持続的に事業を続けることができるようにするから若者の採用、育成を頑張ってください。と言ってきたのが理由です。今までは、別に口から出まかせを言っていた訳ではありませんが、私が引退したり何らかの理由であの世に逝ってしまった後も事業を順調に継続してもらえる確固たる自信がありませんでした。しかし、今日のmtgを行った中で思いの外、本質的かつ積極的な意見が出てくるのを見ていて、これからしっかりとメンバー間でコンセンサスをとってモチベーションを高めて取り組んで行ければ、自立循環型の組織への移行はそんなに難しくも遠くもないのではないかと感じました。あと、65回、楽しみながら事業承継のアクション、続けていきます。
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