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若者たちに伝えたい職人の責任と役割と未来

私は昨年、九州の工務店団体から研修講師として招聘されて、若手大工育成プロジェクトに参加しました。それが非常にいい取り組みだと感じて今年度からは同じスキームで国土交通省の補助を受けて私が理事を務めている京阪神木造住宅協議会でも若手大工向けの実習研修事業を行っています。この度の研修事業では工務店から正規雇用されている入職三年未満の大工見習いが8名集まりました。会員数が100社近い工務店団体での研修事業で若手の職人がたった8名しか集まらなかったのは少し残念ではありますが、確実に大工育成に取り組む事業所が増えているのは喜ぶべき事だと思っています。今回は私がその若手大工達に熱を込めて繰り返し伝えている大工の役割と責任について(彼らへのエールを込めて)まとめてみたいと思います。

未来を現場で創造する

私達の様なモノづくり系の事業所は当たり前ではありますが、職人がいなくなれば事業が成り立ちません。また、私達の最終的な評価は現場でしか得られないのも自明の理です。地域に密着したスモールビジネスの工務店は低い評価を下されて、悪評が立つと事業の継続は難しくなります。また、クレームが発生すると、そもそも利益率が高い業界ではないだけに予定していた利益が全て消え去ってしまったりもします。逆に建物の完成時の引渡しを行う際、またその後もずっと高い評価を得続けると、リピートでの繰り返しの工事注文や、信頼に基づいた新規顧客の紹介を貰えたりと、未来への展望が見える様になったりもします。その意味では、工務店事業の未来は現場によって左右されるし、経営を持続させるには現場の精度を高め現場顧客満足を追求する現場主義を事業の中心に据えるのは不可欠だと言っても過言では無いと思います。そして、その現場を支えるのは紛れもなく職人です。現場実務を担う人材育成こそが持続可能な循環型モデルを目指す工務店経営の本質だと思うのです。

想いを実践で形にする

この度、入職して3年未満の若手大工を集めて行っている研修の冒頭に、大工の責任と役割について話しました。上述したようにものづくり企業における最大で最長、最も濃い顧客接点は現場であり、その現場に最も長く関わり主要な工事を引き受ける大工の責任と役割はそのまま事業所の未来を左右する重責を担っています。その重要性がわかっているからこそ、彼ら彼女らを研修に派遣されている事業所は大工を社員化し正規雇用して育成しているわけで、この期待に答えてもらわねばなりません。そして、彼ら彼女らが意識を変えて主体性を発揮して、そもそも持っている良心に従って正しい選択を繰り返すことによってそれは叶うと熱く語りました。言われたことを言われた通り、図面に書かれていることをその通り作業をするだけの道具のような作業員ではなく、たとえ知識や経験がまだ薄く、技術も身に付けていないにしても何のための工事を行っているのかと、目的意識を明確に持って現場での顧客満足を得られるように顧客の立場に立って物事を考えれば、その想いは行動となって現れ、必ず顧客に伝わります。技術的な習熟度の低い大工見習いでも事業所の経営に大きく貢献することは可能なのです。

第五の経営資源の活かし方

以前このノートにこれからの時代は経営資源の4つのファクター(ヒト、モノ、カネ、情報)にプラスして第5の経営資源が必要になるとまとめました。それは共感資本であり、目に見えないお金に換算できない経営資源です。それを手にするには顧客や共に工事を進めるステークホルダーと目的を明確に共有し、思いを形にすべく、行動へと転換させる必要があります。必要なのは技術や知識ではなく、人のことを慮る思いやりや、優しさ、自分だけが良ければ良いといった利己的な考え方ではなく、他者への貢献の姿勢です。技術の習得までに時間がかかり、やもすればコストだととられがちな見習い職人も、周囲の人から共感を得られるような考え方とその実践ができれば立派な経営資源になりえます。いち早い段階でそのような思考を身に付け、その上で技術や知識を習得すれば、非常に重要な役割と責任を伴う大工の仕事を全うできるようになります。現場作業だけではない付加価値を生み出せる人材になれば当然所得も大きく跳ね上がります。職人の社会的地位の向上は職人自身の意識改革が不可欠であり、それを叶えた人材を多く輩出することができれば職人に対する世間からの低すぎる評価も変えることができると考えています。
ものづくり企業の未来を作るのは現場から。言われたことを行うだけの道具のような職人ではなく、自ら考え、良心の物差しを持ってあらゆる選択を行える人材を育てることがものづくりをなりわいとする企業の未来創造への足がかりだと信じてやみませんし、私自身がこの15年間、その部分に取り組んで一切の宣伝広告を行わずに事業を継続してきた自負もあります。若者たちが自分たちが持つ大きな責任と役割に気づき、それを全うすべく自己研鑽に取り組めば、未来は大きく変わると思っています。塾生達の半年後の成長が楽しみでなりません。

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目的意識と主体性を持つことからスタートする研修やってます。

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