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屋久島で現れた神の使い @宮之浦岳登拝

すっかり恒例になった夏の屋久島への出張に今年も行ってきました。メインは私が立ち上げた兵庫県の地元産木材の活用を推し進めている団体「ひょうご木づかい王国学校」と協定を結んでいる「屋久島森と生きる協議会」の総会への出席と屋久島から流通してもらっている屋久杉由来の植林された杉(天然記念物ではない)「屋久島地杉」の製品についての情報共有と意見交換です。今年も日本南限の杉の持つ魅力と強烈な香りと共に発せられるリラクゼーション効果と抗酸化作用とその臨床について深く学べる素晴らしい機会となりました。詳しくはまた後日noteに家族会をしたいと思います。
そして、仕事のついでに楽しみにしているのが山岳信仰のメッカ、神の住む森として知られている屋久島の山山を歩きまわることです。今年は、以前からの念願だった九州最高峰の宮之浦岳に登拝を果たすことができました。最高の体験に今も少し心が震えています。ただ、思いがけない事件が起こり、予定のルートを変更して早々に山から降りて来る事になりました。

屋久杉

喜多川泰の世界観

話は変わって、私が大好きな作家の一人に喜多川泰さんがいます。元々塾を経営しながら著作活動を始められた方で、若者に対するメッセージを込めた作品はどれをとても心温まるし、その中に散りばめられた人生における真理には大人が読んでも非常に勉強させられます。彼の講演会にも何度も参加していますし、「喜多川泰ファンの集い」なる小さなコミュニティーで集まったり、数年前には娘の誕生日に手紙付きで「上京物語」をプレゼントしたりと、私にとって一般的な著作家とは少し違う位置付けの作家さんです。
これまでに書いた喜多川泰さん関連のブログはこちら、歴史が感じられます。(笑)

ちなみに、note内にも皆さん数多くの喜多川さんの書評や本の案内が書かれています。

福に取り憑かれた男

その喜多川泰さんの作品の中でも私が1位、2位を争うほどいい作品だと思っているのが「福に取り憑かれた男」です。内容について以前のコラムに案内文を書いていたのでそこから以下に一部抜粋します。

人間誰しも、悪い事、悲しい事を好き好んで受け入れたいとは思いません。出来ることならいい事、楽しい事ばかりが起こって欲しいとと思いがちです。しかし、残念ながら人生はそんなに都合よく出来ていないようで・・・。
そんな時、ある本に書いていた事を思い出す様にしています。それは、『福に取り憑かれた男』という福の神の話で、主人公に憑いた『福の神』は彼に次々に大きな難題を降りかけます。書店の経営者となった主人公は売上げの低迷、駅前に大型競合店の誘致と次々に難問を仕掛けられて、挙げ句に店を畳むことを決意する始末。それだけを見ると、一見まるで『貧乏神』に取り憑かれているようですが、貧乏神は逆に目先に簡単に小銭を稼がせてくれる様で、福の神は「もうダメだ、」と思うくらいの難関を次々に与え、それを打破する決意をすることで、人生の成功に向けての本質的な行動を喚起され、人生を自分が求めるカタチの成功に導いてくれるというストーリーです。
すみれ便り2015  春より抜粋

福の神に取り付かれる

なぜ唐突に喜多川泰さんの本のご紹介をしたかというと、屋久島でのハプニングが福の神に取り憑かれたかのような出来事だったからです。今回、私達は宮之浦岳の山頂を目指すにあたり、淀川登山口から登り始めました。有名な縄文杉が立っている場所と反対側に位置しており、往復路を同じにすると少し勿体無いルートでした。しかし、淀川登山口〜宮之浦岳〜縄文杉〜荒川登山口のルートは一般的に山小屋で一泊するのが定石とされているなかなかなハードなコースでして、時間に余裕があれば縦走にチャレンジしてみるか、なんて思いながら山に入りました。宮之浦岳は屋久島で岳参りと言われる山岳信仰の聖地でアップダウンが激しく厳しいですが、途中で日本最南端の花之江河という高層湿原があったりと非常に変化に富んだとても美しい景色が広がる楽しい登山道になっています。
今回、私たちは4時に起床して淀川口まで車で移動、5時半から登り始め、宮之浦岳に到着したのは午前10時と結構いいペースで山頂に登拝することが出来ました。これなら荒川口に抜けるルートでもギリギリ間に合いそうだと判断して、急ぎ新高塚小屋方面へと歩き始めましたが、そこでハプニングは起こりました。

獰猛なサルの軍団からの威嚇

山頂から降り始めてすぐでした。狭い登山道の両脇には腰くらいの高さまで鬱蒼と山笹が生い茂っている場所に差し掛かった時、猿の群れが道を塞ぐように笹の新芽を食べているところに出くわしました。お互いに存在に気がついた瞬間からボス猿と思しき大きめの猿がこちらを睨みつけ、背後の小猿を庇うように私を威嚇し始めてにじり寄ってきました。ヤバイ!と感じた私は一歩も引かずにファイティングポーズをとってボス猿に対峙、一瞬にしてあたりは緊張した空気に包まれました。ボスザルと睨み合っていると脇の笹の中から次々と奇声を発しながら他の猿が続々と集まり始め、気がつけば10数匹の猿がすぐ近くまで迫っており囲まれてしまいました。笹の上から今にも飛びかかりそうな猿等を見て、流石に他勢に無勢、一斉に飛びかかられたらひとたまりも無いと杖をかざしながら少しずつ後退して一旦山頂まで戻って早めの昼食を取って様子を見ることにしました。

神の使い

結局、少し時間をとってから再度、猿が道を塞いでいたルートを降りかけましたが、興奮した猿等は相変わらずの獰猛さで向かってきて、結局、縄文杉方面への縦走は断念、若干悔しい思いも残しながら、元来た道を帰ることにしたのでした。しかし、このハプニングのおかげで素晴らしいことがありました。それは、宮之浦岳の山頂に登拝したと言いながら、当初は山頂に祀られている祠を見つけられていなかったのですが、猿に追い返されたのを機に巨岩の中にひっそりと佇むその聖地を見つけることができたことです。岳詣りに登ったはずが、もう少しでただの登山になってしまうところでした。そんな大事なことに気づけたのも私達の行く手を阻んでくれた獰猛な猿達のおかげで、ひょっとしたらあの猿達は神の使いで、きっちりとお参りしていない私達に対して、ちゃんと参拝する様に諌めてくれたのかも知れないと帰路につきながら思った次第です。上述の福の神の話と同じパターンで。何はともあれ、山岳信仰のメッカ、九州最高峰の宮之浦岳に無事に登れて、屋久島の大自然に触れられたことは素晴らしい体験でした。来年は必ず縦走コースにチャレンジしたいと思います。屋久島、何度訪れても本当に最高です。まだ足を運ばれたことがない方は是非とも一度行かれることを強くお勧めします。

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屋久島で育った杉の住宅建材利用を進めています。


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