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職人が消えた街
年始早々の1月5日に日テレのウェブニュースで私たちが取り組んでいる職人育成の高校、マイスター高等学院が取り上げられました。
全国から多くの反響をいただいており、職人不足への関心の広がりと深刻さを改めて実感した次第です。
職人不足の表面化
日本では、全国的に建築職人の数が激減し、その影響で着工や完工の遅れが頻発し、建築会社が破綻したり、事業株隊を目指す企業の成長戦略に遅れが生じているとの報道が最近頻繁になってきました。そのような現象が最も顕著に現れ、問題になっているのが能登半島です。
今回、ご縁あって輪島の歴史的建造物群の指定が出されている黒島地域の復興の相談を受けました。今回、半年ぶりに能登半島に行って感じたことを記しておきます。
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焼石に水の復興支援
令和7年の年が開けて能登半島の震災から1年が過ぎました。輪島市では復興の遅れどころか、いまだに倒壊した建物の解体撤去作業さえ進んでいないのが現状です。実際に現地に足を運んでみると、信じられない程、今も震災の爪痕が生々しくそのまま残っており、目を覆いたくなるような惨状です。
令和6年の6月、震災が起こってから半年が過ぎた頃、石川型震災復興住宅の工事が全く工程通りに進んでいないと応援依頼の声がかかり、私たちが組織する職人育成のコミュニティーでもあるマイスター育成協会のメンバーに募って、避難住民が期日通り仮設住宅に移れるようにと20名ほどの大工を輪島に送り込みました。
少しは能登半島の復興に寄与できたような気になっておりましたが、今回輪島を再訪して実際は復興に対して全く支援できていないことに気づかされました。
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拡大する被害
黒島地区で被災した住宅に入って現地調査をする機会を得て、愕然としたのは圧倒的な「物量の問題」です。
能登半島に全くと言っていいほど、大工や屋根、左官などの職人がおらず、工事の手配ができないとは聞いていましたが、初動の際の雨漏りを防ぐ応急復旧さえ十分にできていない家が多数ありました。
1年間、雨水が侵入し、土壁を溶かして崩落してしまっている家屋も少なからずありました。時間の経過とともに、地震の被害がさらに大きく拡大していたのです。
震災直後にきっちりと雨養生だけしていれば残っていたはずの伝統文化を伝える建造物が崩壊してしまっているのは、完全に人的な二次災害です。
職人のいない街の厳しすぎる現実をまざまざと見せつけられました。
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既にわかっていた未来
今年で神戸の震災から30年になります。阪神淡路大震災の際、神戸では全国から職人が集まって10年かかると言われていた復興が3年で大まか格好がつきました。
この30年間、職人が減少し続けている事はずっと危惧されていましたし、国交省主導で大工育成の国家プロジェクトも行われました。しかし、全く奏功しなかったばかりか、職人不足は、加速度を増し続け、現在では既に職人は絶滅しかけていると言っても過言ではありません。そして今、現実に職人がいない街が出現しています。
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職人不足の根本的解消のアプローチ
私たちが全国で展開しているマイスター育成プロジェクトは、職人不足の根本解決を目指し、ものづくりの事業所が若者に選ばれる良い会社になり、職人たちが憧れられる存在になるような働き方を実現するところから地味な活動を続けています。
職人になりたい若者を増やすのはもちろんですが、職人として働きだした若者が、離職しない仕組みも同時に必要です。
そのためには、職人の社会的地位の向上が不可欠であり、それは職人自身が自らが生み出す付加価値を大きく伸ばす意識の変容と学び続け、成長し続ける姿勢が必要です。
事業所が高校となって、若者を受け入れ、生徒は高校生からキャリアパスを運用することによって、社会に出てからも学び続ける体制を作り上げることで、働くに値する職業に職人の世界を変える必要があると考えています。
今まで通りの職人の働き方、今まで通りの事業所のあり方では、日本中の職人は完全に消滅してしまいます。
しかし、今ならまだ職人を育成する職人がいます。あと5年経てばもう取り返しがつかない状況になることに、多くの人に気づいてもらいたいと願うばかりです。
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学歴社会から溢れ落ちた子供たちの救済と、職人不足の根本解決。その両方の社会課題を解決するプロジェクトを進めています。ご興味がある方はぜひご連絡ください。