歴史と伝統を紡ぐ長寿命企業に学ぶ@在り方大学
地球は有限との絶対的な事実に向き合えば、経済や企業の際限のない成長は絶対にあり得ません。18世紀の産業革命以降、人類は爆発的な進化と成長を推し進めてきて、地球を征服し、環境に取り返しがつかないかも知れない位の大きな負荷をかけてきました。このまま人口が増え続け、自然環境を侵略、蹂躙、破壊し続けると野生の動物は次々と絶滅し、人類を含めた地球全体の生態系が破壊されて死の惑星になってしまうと指摘する学者もいます。気候変動が人類の経済活動による影響か、因果関係ははっきり
しませんが、今の日本では5月中旬にして猛暑日が連日観測され、先日、アメリカでは数多くのハリケーンが群発して甚大な被害を出しています。
そんな地球の声に耳を傾ければ、そろそろ私たちは、際限のない成長を求めるのではなく、持続可能な循環型経済、循環型社会へのシフトを本気で考える時期にきているように思えてなりません。
世界の手本となる日本的経営
資本の蓄積とさらなる増加を命題としている資本主義では、企業の規模拡大が絶対的な正義となっています。しかし、際限のない成長はありえないし、同時にそれは破滅への道を突き進むことになりかねません。そのような観点で企業活動を見れば、事業規模が大きくなることよりも長く続くことに価値を置くべきではないかと思うのです。
そして、現在の世界を見渡したとき100年、200年以上継続している長寿命企業は、圧倒的に日本に集中して存在しています。市場経済と資本主義が世界のスタンダードになる前、鎖国をしていた時から創業した企業が数多く残っている日本のビジネスモデルこそ、これからの際限なき成長ではなく、持続可能な循環型社会における世界の標準的な企業の姿になるべきではないかと思うのです。
日本を代表する老舗企業
この度、経営者としての在り方を学び直す機会として参加している在り方大学では、創業から150年以上継続して日本の伝統文化を継承している二人の経営者に講師として登壇頂きました。
お一人目はツカキグループの代表取締役社長 塚本喜左衛門氏。ツカキグループは、創立慶応3年(1867年)の滋賀県 東近江市五個荘の「売り手よし、買い手よし、世間によし」という「三方よし」で有名な近江商人の商売倫理を現代に引き継いでおられる事業所の集合体です。
もう一人は、広島筆産業株式会社 代表取締役城本健司氏で、広島筆産業株式会社は熊野筆の歴史のなかで創業150年の最も古い製造会社です。世界的に有名になった熊野筆の歴史とともに150年に渡って培われた技術と品質を脈々と受け継いでおられ、日本一の筆の産地として全国生産量の80%シェアを誇る広島県安芸郡熊野町の老舗企業です。
最古のCSV経営モデル企業
ツカキグループが創業された1867年と言えば、私が生まれる。ちょうど100年前、大政奉還が行われた年です。開国、明治維新、大日本帝国の隆盛と滅亡、アメリカの植民地からの再出発と激動の近代史の幕開けとともに事業を開始され、今も存続していると言う事実は奇跡といっても過言でなく、驚きを隠せません。
お二人の講演を拝聴していて強く感じたのは、事業どころか、業界全体が存亡の危機に立たされたり、政府が倒れてしまうような未曾有の外部環境の変化にもかかわらず、それに適応し、現代まで生き延びられてきた強かさと、事業そのもので社会の要請に応え、社会課題の解決に寄与しててきたとの誇りです。今になって私たちが熱心に取り組んでいるCSV経営を江戸時代から既に行っておられたと言う事だと思います。
在り方が時代を乗り越える
もちろん、環境の変化に適応し、危機を乗り越えるには事業内容を変更したり業態転換を行うようなイノベーティブな取り組みが必要です。お二方の講演の中でも、随所にそのような話がちりばめられておりました。しかし、金儲けのためだけにあれこれと何でも手を出す訳ではなく、ご先祖様から代々、受け継がれてきた価値観や戒めを守り、本分から外れない範囲で時代の変化に合わせた適応を果たしてこられたように感じました。世界恐慌も不動産バブルの崩壊も、日本中が打ちのめされた敗戦さえも乗り越えてこられた圧倒的な実績、結局その根幹こそが「在り方」なのだと気付かされました。
不易流行の実践者からの学びの場
論語の中にある温故知新、俳句を大成させた松尾芭蕉が唱えた不易流行。目まぐるしく変わる時代に合わせて新しく変化させることと、変えずに固く守るものの両方が大事だと、これまでの長い歴史の中で、多くの賢者たちが口を揃えて言っています。今回の在り方塾では、改めて私たちが理念に掲げ、四方継と社名に練り込み、実現を目指す四方良し(三方良し)の世界、ビジネスモデルの構築と、時代を敏感に感じ取り、絶えず変化をし続けながらも、本分を忘れることなく守るべきものは絶対に変えないとの強い意志が必要なのだと改めて感じさせられました。これから世界のスタンダードになるべき、激しい変化の時代を超えて生き残る卓越した事業を営む経営者に直接教えを請える場が得られるとは、本当に幸せだと思う贅沢な時間でした。ご縁に心から感謝します。
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四方良しの世界の実現を存在意義に掲げて、社会課題の解決を事業と合一しています。
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