強みから個性(才能)へ 影響力3.0
私は毎月、株式会社四方継本社3階のTUGIスタジオで無料の勉強会を開催しています。もともとは職人起業塾と言うネーミングで社内の大工向けに独立支援の勉強会として発足しました。その内容は大工が独立起業してから職人ではなく事業として生業を継続できるように経営者として理解しておくべきことを共に学び合う勉強会で、当初はマーケティング理論を切り口に、今では持続可能な循環型ビジネスモデル構築のための勉強会との位置づけです。今月で106回目を数えるのですが、回数を重ねるごとに取引先の経営者や知り合いに口コミで広がり、今では建築業界だけでなく飲食や農業、美容業界など職種も幅広く、起業を志す若者を始め、高校生から仕事を定年退職してセカンドキャリアに取り組まれている方まで老若男女、様々な人が参加される勉強会になっています。
USPから才能へ
その継塾では年間通して毎月テーマが決まっており、今月のテーマは事業を持続させるための「才能」としています。去年までの同時期は同業他社に勝つための「強み」に着目しており「USP」や「コアコンピタンス」等をテーマに掲げておりましたが、時代の大きな変化に合わせて考える内容や方向性をチューニングしています。これは脱マーケティングの大きな流れを汲んでおり、VUCAと言われる先行き不透明で不安定、複雑、曖昧な時代に突入し、日本では人口が減少し、所得が上がらないのに物価だけが上昇するスタグフレーションに陥っており、グローバル企業や大資本企業による寡占化が加速している現状を反映してのことです。このような大きな環境の変化の中ではスモールビジネスに取り組む資本力の脆弱な地域企業が同業他社に勝つための表面的な差別化を図ったところであまり意味がありません。
同じ土俵、長期視点では弱者に勝ち目はない。
大企業と地域企業の最も大きな、そして決定的な違いは持っているリソース(ヒト、モノ、カネ、情報)の違いです。中小企業が少々工夫を凝らしたところで、同じ土俵(これからの世の中はインターネット上に一元化)で戦っていて勝てるわけがありません。もちろん、短い期間では勝ったり負けたりもあるでしょうが、長いスパンで見れば必ず弱者はジリ貧です。以前までマーケティングの世界で最重要視されてきたUSPやコアコンピタンスといった他社を圧倒して寄せ付けないような決定的な強みは本来リソースがない地域事業には残念ながら存在しません。以前、中小企業の事業承継をテーマにしたセミナーに参加した際、中小企業が弱体化していくのを悪魔のサイクルと言う図式で表されたことがありましたが、表面的にはまさにその通りで国が推し進めている中小企業の淘汰と統合に流れていくしかないのが厳しい現実です。
実体経済とは中小企業(地域企業)の景気
しかし、日本国内の97%の企業が中小企業だと言われるように、国内の実体経済は公開されている大企業の株価ではなく中小企業で働く人たちが生み出す需要と地域それぞれの経済と景気です。Amazonに日本中の書店が潰されつつあるのと同じように飲食店の収益はuverに吸い上げられ、小売業はインターネット上で存在感を示す大企業に全て集約されてしまっては国内景気は空洞化が進むばかりで浮かび上がる術を失ってしまいます。中小企業=地域経済の担い手であるスモールビジネス事業者が復活しなければ日本はどこまでも沈んでいってしまいます。
誰もが持っている潜在的才能こそが最大のリソース
強み=リソースを持たない中小企業、地域企業がどのようにしてマーケットの中で存在感を示すのかが日本経済の先行きを決める大きなファクターになっています。その答えが今まで顕在化していなかったリソース(誰もが生まれながらに持っている良知)を掘り返すタレンティズムと今の時代の流れに適応した地域課題解決型モデルへのシフトにあると私は考えています。これまでの競合他社を圧倒し、需要を創造するマーケティング思考から脱却して、やり方ではなくあり方を突き詰めて、人材の育成、開発に力を注いで良知と呼ばれる人が誰しも持っている才能を開花して地域の課題を解決することができるビジネスモデルへと転換することで地域企業が圧倒的な強みを見せる可能性があると思っています。
影響力3.0 強みから在り方
マーケティングの世界では強みのことをUSPとかコアコンピタンスと言いましたが、端的に言い換えるとその本質は信頼と信用を勝ち取る影響力を指しています。影響力1.0 は一世を風靡したロバート・チャルディーニの著書「影響力の武器」に代表される売り込む力(セールススキル)でした。2.0になってマーケティング(需要の創造と競合他社への差別化)になり、原理原則を積み重ねたジェイ・エイブラハムの「ハイパワーマーケティング」は世界中に大きな影響と変化をもたらし、今でもバイブルと言われます。そして、これからの時代に求められる影響力3.0は明確にセグメントされた市場から圧倒的な信頼を勝ち取る社会課題解決型モデルだと言われます。ボーダレスジャパンや琉球アスティーダ等、ソーシャルビジネス、社会課題解決型モデルと言われるカテゴリーで大きな成果を出している企業の例は枚挙に暇がありません。また、ホワイト投資家やESG投資など社会を良くするための事業にお金が集まるシステムが世界中で大きな注目と資金を集めています。企業が磨くべきは強みからあり方に変わりつつあるのです。
在り方から発する影響力
今月の継塾では強みではなくあり方として、誰しもが持っている良知と呼ばれる才能をいかに発揮して影響力を高めるかについて参加者と一緒に考えてみたいと思います。中国古代の思想家孟子は子供が井戸に落ちそうになった時、誰もが迷わずに救いの手を差し伸べることを惻隠の情と言い表してこの善き心こそが生まれながらに誰もが備えている良知であり、そこに至ることで多くの人から支持を集め政治や経済を良きものにする力の原動力になると言われました。混迷を深めるVUCAの時代、社会、経済の主体である地域事業者は今こそ古から綿々と受け継がれてきた人間の根源的な価値観や本質的な力に目を向け、損得勘定や勝ち負けでは無い世界観を持つ事、世界をより良いものにして次世代に引き継ぐ思想を本気で持つが大事では無いかと思うのです。そこに共感資本が生まれ、大企業と違う土俵、長期視点での持続可能性が生まれると思うのです。
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