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職人不足を解決する令和モデル

ここ最近、毎週の様に建築関係の事業者向けの講演が続いています。地域に関係なく、集まられた方々は同じ問題意識を持たれており、その解決策として語る私の提言に大いに共感頂いています。問題とは激減を続け、絶滅危惧種並みと言われる職人不足で、解決策とはビジネスモデルの転換です。誰もが薄々気づいているところを詳らかにし、勇気を持って実践に踏み込みませんか?と呼びかけています。

明らかに景色が変わった

最近、講演をする度に毎週の様に多くの仲間が生まれて、職人育成とビジネスモデル変革に取り組みたいとの意思表示を示されます。実は、長年、同じような話を続けてきておりますが、昨年から明らかに今までと反応が変わったと感じています。これまで、一般社団法人職人起業塾の活動で全国各地を回って職人の正規雇用と育成の必要性を訴えてきましたが、実際に行動に移そうとされる経営者はごく稀で5年間で高々200社程度しかありませんでした。明らかに景色が変わったと感じています。その理由として3つの要素が重なっていると私は感じており、ここで整理しておきたいと思います。
ちなみに、3つの要素とは経営環境の変化、職人不足の顕在化、時代の流れです。

これからはこれまでの延長線上にない

3つの要素の中で最も大きな影響は経営環境の変化です。平成の終わりから令和はVUCA(不安定、不透明、複雑、曖昧)な先行きが見えない世の中になると言われており、私は講演やセミナーの中で繰り返し「これからはこれまでの延長線上にない」と言い続けておりました。しかし、それを真に受けてビジネスモデルを見直し、事業ドメインを転換するほどの大きな行動変容をされる方は皆無でした。私自身はUXデザインを学びに通っていたこともあり、時代の移り変わりを肌身で感じており、4年前からまだコロナが蔓延する前にスタッフと話し合い脱建築請負業、地域貢献をドメインに掲げたコミュニュティー創生事業へと事業転換しました。いわゆるCSV経営にシフトしたおかげで収益構造を変えてコロナを乗り越えることができました。

三方よしへ原点回帰

コロナによるパンデミック、隣国で始まった戦争、インフレに金利の上昇、円安にエネルギー不安、そしてフェイクニュースの蔓延にAIやメタバースの普及と平成の終わりとは明らかに世界は変わりました。以前の需要を喚起してモノを売る方式では立ち行かなくなるのは多くの経営者が感じていて、混沌とした世界に変化する必要を強く感じているのではないかと思います。その一つの答えが原点回帰であり、時代の荒波を超えて存続し続けてきた長寿命企業に学び、存在意義を認められる企業の在り方を見直す流れになってきています。創業から200年を超える企業の7割が日本の小さな地域に根ざした企業であり、三方よしと言われる自社と顧客の価値だけを追い求めるのではなく、世間良しとの社会性を生み出してきた企業です。今時の言い方にすればCSV経営と言われる、地域との共有価値の創造を行なってきた企業こそが存続を許される原理原則に立ち返る必要性を感じる経営者が増えているのを感じます。

ビジネスモデルの問題

職人の育成に限らず、人材育成には費用がかかります。建築業界の事業者はその費用負担を避け続けてきました。職人を雇用せず、外注扱いにして固定費や福利厚生費を抑えて利益の最大化に熱心に励んできました。また、職人に支払う単価も抑え込み、結果、誰も職人を育成することが出来なくなりました。現在の圧倒的な職人不足は実はビジネスモデルの問題であり、収益構造の問題でもあります。そこを解決しなければ、結局、職人育成の必要性を感じても実際の行動に移されることはありません。これまで、全く職人不足問題が改善しなかったのは、ビジネスモデルの転換の必要性を建築事業を営んでいる経営者が感じて来なかったことに由来します。

存在意義中心の経営へ

地震や台風等の自然災害が起こった際に街を復旧するのは職人達です。建築事業者は地域に住まう人達の安心と安全を担保する役割を担っています。その事実に正面から向き合うと職人育成は建築事業者の存在意義を保つのに欠かせない非常に重要なタスクです。そして、建築事業者が安定的に受注を重ねるには地域からの信用と信頼を積み重ねる必要がありますが、それは現場で生み出した結果が全てです。目の前の収益だけに囚われるのではなく、少し時間軸を長く事業を捉えると、モノづくりの事業者はモノづくりの担い手を育成するのは絶対に必要なのは火を見るよりも明らかです。市場、経営環境の変化が引き金になり、存在意義を見直すパーパス経営やCSV経営が今後生き残る企業のスタンダートになると私は感じており、最近、同じように感じられる事業者が急速に増えていると感じています。いよいよ、職人育成に取り組む事業所に陽の目が当たる時代が到来すると感じています。

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