ブルネロ・クチネリに学ぶ四方良し
世界一美しい企業と称されるブルネロ・クチネリ。イタリアのラグジュアリーブランドとして世界で大きな評価を受けて、最近は日本でも芸能人御用達ブランドとして認知度が高なってきました。Wikipediaを引くと「このブランドは「ヒューマニスティックな企業」であり、職人と所有者の両方に道徳的な尊厳を与えるために職人技を使用するなど、深く根付いた道徳的価値を主張しています」と書かれています。アパレルのファッションやデザインに全く興味がない私ですが、地域に根ざし、職人を大切に育て、高い技術と丁寧な仕事、そして在り方自体で大きな価値を生み出している企業として以前から注目し、三方よしのベストプラクティスとしてあちこちで紹介をしています。
手を出しにくいお気に入りブランド
そんなブルネロ・クチネリのホームページや企業を紹介する動画などを繰り返し見るうちにすっかりその物づくりに私も魅了されてしまいました。調べてみると、神戸にもブランド直営のショップがあり、先日近くを通りかかったついでに冷やかしに訪れてみました。ブルネロ・クチネリの商品は全体的にシンプル&スタンダードでそこはかとなく上品さが感じられるデザインになっており、確かに良さげではありましたが、そもそもファッションに明るくも興味もない私は残念ながら(オーダースーツで80万円程度の)その価値をあまり理解できませんでした。ただ、良き意図を持ってビジネスに取り組んで大きな社会貢献を実現しているブランドへの憧れで、そのうち機会があれば何か1つでも購入してみようかしら、などと思いつつショップを後にしました。
ブルネロ・クチネリ、ゲット!
私が主催する無料の勉強会「継塾」でも昨年、社会課題の解決に取り組む企業としてブルネロ・クチネリを何度も取り上げており、こんな良き意図を持って理想を実現しているかっこいい企業の商品を買ってみたいよね、と参加メンバーの間でも話題に上っておりました。すると、昨年から熱心に通われている川端さんが昨年末に迎えた第100回開催のお祝いにとなんと私にブルネロ・クチネリのポケットチーフをプレゼントしてくれました。期待も予想も全くしていなかったので、とても驚くとともにうれしくて飛び上がってしまいましたが、想いや願望を口にすれば現実になると言う法則を身をもって体感させてもらうことができました。(笑)
三方よしは事業の責務
1月の継塾ではトンガ王国の海底火山爆発のニュースや、韓国で海上都市の建設が認可された事例などを紹介して私たちが環境に対して取り組むべき事は何か、どんなことができるかについて考える時間を持ちました。その中で、とある自動車板金工場の経営者が「環境のことを考えると塗料を水性に変えるべきだが、コストがかかりなかなか実現できていない。」と言うようなことを口にされました。コストを抑えて適正な利益を受け取れば顧客と自社は良いかもしれませんが、いわゆる世間よし(=環境よし)ではなく、三方よしのビジネスとは言えません。弱肉強食の資本主義社会にあって、高いコストの負担を顧客に理解してもらい、環境負荷を低減するのは簡単なことではありません。しかし、それを諦めてしまうと少し前に世界中で大きな話題になったアニメーション動画"MAN"の結末のように地球はゴミ溜めのようになってしまいます。事業者は顧客との圧倒的な信頼関係を構築し、よき意図を伝え三方よしになるスキームの実践の理解を得る必要があります。簡単ではありませんがこれは事業所の責務だと思うのです。
倫理、情報、ビジネスリテラシー向上の扉
「確かに理想ですが、現実社会での実現は不可能です。。」と昔、建機リース会社の営業マンが呟いていたのがとても強い印象になって残っている「三方よし」の概念はコスト圧縮によって自社利益を追求する企業が殆どと言っても過言でない建設業界では本当に難しいと私も思っています。リースした重機や機械を壊したり、傷つけたり、汚しても責任を他者になすりつけ、なんとか金を払うまい、弁償しないようにと難癖をつける人ばかりだとその人は言ってました。そんな世界の中に塗れている私も現状を聞いて否定はしません。しかし、それは個々の人の問題というよりも、業界としてのリテラシーの低さだと思っています。なんとかしてこの業界のビジネスリテラシー、倫理観と収益性は一体との「論語と算盤」的な常識、全てのステークホルダーとの強固な信頼関係が事業の持続性を高めるとの意識、目先の利益を追い求めるのではなく、事業を継続することに価値を見出す思考を広めたいと考えています。そして、そのヒントがブルネロ・クチネリにあるのではないかと思うのです。建設、土建業界で上品なブルネロ・クチネリの服が流行り、なぜそんな高い服が人気を博すのか?どうして世界中の人が価格ではなく価値に重きをおいてそのブランドを応援(購買)するのか?その問いが業界に広がった時に売り手よし、買い手良し、世間良し、そして地球良しの四方良しの世界の扉が開かれるようになればこんなに嬉しいことはないし、近い将来、そうなることを心から願っています。
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四方よしの世界の実現を目指しています。
建築業界の意識改革と構造改革に取り組んでいます。