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職人育成Wスクールの生徒受け入れ事業所が未来創造企業でなければならない理由

福岡に行ってきました。この4月に立ち上げた職人育成を行う通信制高校、マイスター高等学院のサポート校となるモノづくりの事業所ネットワークを全国に広げるべく、ここ最近、全国各地で事業説明会やセミナーを頻繁に開催しております。今回は福岡だけでなく、沖縄や広島からもご参加頂いた方もおられ、早速申し込みも頂いて会員が30社に届くところまできました。

日本の国土安全保障を揺るがす危機的状況

通信制高校とモノづくりの専修学校のWスクールとして開校したマイスター高等学院は建設業界だけでなく、日本全体の社会課題となりつつある職人不足問題の根本解決を目指して立ち上げました。若者から忌み嫌われ、全くと言っていい程寄り付かれなくなった建築現場でモノづくりをする建設職人は高齢化が進み、あと10年を待たずして一気に減少を加速させます。生活インフラを支える担い手がいなくなるのは毎年の様に起こる自然災害に対して対処が出来なくなるばかりか、安心できる安全な国民の生活を守ることさえできなくなります。

若者が寄り付かない業界

職人不足問題の根本原因は、若者に入職したいと思われない職業になってしまったこと、先日発表された将来就きたい職業ランキングでは「会社員」がトップになったとの衝撃の事実が明らかになりました。先行き不透明な時代に安定を求めるのは大人も子供も同じなのかも知れませんが、不安定な職業の代表格だと思われている職人になりたい若者は皆無です。この問題を解決しなければ、絶対に職人不足が解消されることはないのは明らかで、この20年間、国交相をはじめとして業界団体は若手職人の採用と育成に対して様々な対策を講じてきました。しかし、全く成果に結びついてきませんでした。

職人を道具としてしかみていない経営者

職人が忌み嫌われる原因はその働き方にあります。バブル崩壊後、デフレ経済に陥る中でコスト削減と分業化が進み、職人の所得は平均400万円程度になってしまいました。その上、正規雇用する事業所は皆無で、殆どの職人は実質、労働者であるにもかかわらず個人事業主として働いており、社会保険や厚生年金の基礎的保障さえ受けられないのが当たり前になってしまいました。怪我や病気をしても、一般的な社会的保障を受けられない状況です。
この悪しきスタンダードをひっくり返さなければ、絶対に若者は寄り付きませんが、これまで外注として福利厚生の費用をかけていなかった職人を雇い入れると事業所は大きな費用負担を引き受けることになります。その捻出が出来ない(もしくはしたくない)との理由で職人育成の必要性は理解していても、踏み込むことを躊躇う、職人を使えなくなったらポイ捨てする便利な道具の様に見ている経営者が殆どなのがこの建設業界です。

公務員よりも安定した職業?!

今春設立したマイスター高等学院では、高校に入学と同時にOJTで技術を学ぶ事業所と3年間の雇用契約を結んでカリキュラムに出席した分の給与が支給されます。3年後の卒業時には定期雇用転換され、定年までのキャリアプランが示されて、資格取得や役割を増やすことで昇給される明確な指針を示されます。単なる現場作業員ではなく、建設・建築のプロとして年齢を重ね、体力が落ちて現場で作業をしなくなった後もしっかり稼げるスキルを身につけることが出来る人事制度、教育システムが運用されます。中学校を卒業して就職するときには見習いではなく職人として入社出来るので大卒の給与よりも高い所得を得ることが可能で、転職しても引く手あまた、起業することも出来ます。生涯所得もノンキャリアの地方公務員よりも多く得られる設計になっています。不安定な職種と思われていますが、本人のやる気次第では公務員よりも安定した稼ぐ力を身につけることができます。

生徒を受け入れる事業所登録の厳しい基準

職業選択の自由がある若者に、一生の仕事として選ばれるには、他業種と比較して、魅力ある職場でなければなりません。今までの建設業者といえば、就業規則や賃金規定も曖昧、有給消化義務など知らぬ顔、残業代の支払いさえも怪しいなどのブラック、もしくはグレーな業界だとレッテルを貼られています。この認知をひっくり返し、真っ当な会社であることを証明する必要がありますがこれが簡単ではありません。そこで、一般社団法人マイスター育成協会では、OJTを行う生徒を受け入れる事業所に未来創造企業の認定取得を義務化しました。第三者からガバナンスチェックを受けて、明確な事業目的を持った経済性と社会性の両方を満たした持続性のあるまともないい会社であることを証明されることで、胸を張って学生を受け入れる就職先として地域の中学校や高校に案内に出向いています。

モノづくりは人づくり

建設業界に若者が寄り付かない原因を一つずつ排除して、生き甲斐を持てる職場を実現する。安心して職人の道に進んでもらえる環境づくりが全国で着々と進んでいます。未来創造企業の認定には半年間の研修を受けて、事業内容の発表を行った上で認定期間によるジャッジが下されると共に、明確な指標に基づいたチェックリストの数値化を社員全員と行うルールが運用されています。経営者だけの自己評価ではなく、その事業所で働く人たちが自ら良い会社だと認めていなければ認定されることはありません。決して簡単ではなく、それなりのハードルがありますが、それを乗り越えようとチャレンジする事業所が現在、続々と合流されています。これが全国のインフラとなり、学校の勉強の成績や内申書の点数など関係なく、幅広い若者を受け入れる教育機関併設のモノづくり事業所がスタンダードになる。「モノづくりは人づくり」が文化として認知される世の中を目指して歩みを進めて参ります。

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ほぼ毎週月曜日の18時〜マイスター高等学院及び未来創造企業認定、その母体となっている経営実践研究会の事業説明を開催しています。ご興味がある方はお気軽に私(高橋)までアクセスください。


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