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せっかく職人を育成しても大手企業に横取りされるし意味ないよね。にお答えします。

私達が代表理事を務める一般社団法人マイスター育成協会では、職人育成の高等学校、マイスター高等学院神戸校を2023年4月に開校し、来春には関西一円で10校以上、再来年には全国で50校の開校を目指して北は北海道から南は沖縄まで、全国を股にかけて幅広い活動を行っています。
現在、既に建設業界は圧倒的な職人不足に陥っており、人手不足で事業が成り立たずに破綻する企業も散見する様になりました。職人の平均年齢も50歳半ばを超え、職人不足はこれから10年で一気に加速します。
これまでの延長線のままでは職人は絶滅する程の減少率になっている現実から逃れられないのは業界人なら誰でも知っています。職人を外注に頼り、自社で雇用も育成もして来なかった営業系の建設事業所も流石に職人不足の課題に対して他人事、知らぬ顔は出来なくなりました。

障壁が高く、マーケットがない経済合理性曲線外の課題

今既に、建設業を生業にしている人は誰もが事業を継続するには職人の採用、育成に踏み込まなければならないのを理論上では理解されています。しかし、職人の育成がそんなに簡単ではないことも、職人になりたいと集まる若者が皆無なのも皆が知っています。そして、ほとんどの建設会社、建築会社の経営者は職人を育てた経験がありません。しかも、ズブの素人から一人前の職人を育てるのは先行投資が必要な上に、職人を正規雇用して社会保険や厚生年金の保証をつけたり、有給休暇を与える等の世間一般の福利厚生を整えるだけでも、現在のスタンダードになっている職人を外注で必要な時しか雇わない方式に比べると大きな費用がかかります。当たり前ですが。
そのコスト負担はこれまでのそもそも売り上げは大きく利益が残りにくいと言われてきた建設業のビジネスモデルでは捻出できないのがこの職人不足問題の根本にどっかりと根を下ろしています。解決困難過ぎると思えるほど難解だからこそ、絶滅が危惧されるほど職人はいなくなったのです。

勇気と覚悟と信念

そんな厳しい業界にありながらも、モノづくりの基本は人づくりだと高い志を掲げて職人育成に取り組む企業が最近少しずつ増え始めました。相当なリスクを背負う覚悟を決めて一から職人を育てると、中学校を卒業した子供を引き受け、高校生としてOJTのカリキュラムを組んで技術を教え、人間力を身につけるビジネススクール的な研修を施すのはかなりの勇気と覚悟と信念が必要です。さらに、高校卒業後は正社員の職人として就職出来るだけではなく、年老いて引退するまでの長期に渡るキャリアパスまで全社(全学校)が備えています。これまでの何の保証も無い、50代をピークに体力の衰えと共に収入が下がる、怪我や病気をしたらそれで人生が終わると言った日雇い労働者的な働き方ではなく、技術系のプロフェッショナルとして働ける環境を整えようとされています。そんな高い視座を持った経営者がマイスター育成協会には正会員、準会員、そして応援してくれる賛助会員含めて50社以上も集まっています。日本の建設・建築の人材育成のスタンダードを刷新するムーブメントになりつつあります。

大手企業による職人引き抜きの現実

そんな未来を標榜できる職人の働き方を若者に示し、15歳から育てようとしている事業者の方々の心配は、職人不足が今後一気に加速してくると、大手企業がネームバリューと金にモノを言わせてせっかく育てた職人達を引き抜いて行くのではないか?との危惧です。ちなみに、神戸の震災後はまさにその様な状況になり、大手ハウスメーカーの営業マンの仕事は主に街中を走り回って足場がかかっている工事現場を見つけては、手当たり次第に職人の引き抜き工作を行うことでした。当時、私もその流れでハウスメーカーの下請け工事を行う様になりました。
大手メーカーと直接取引できる職人になれば、単価は高いし、仕事が切れることもなくなると言われ、て取引を始めましたが、大規模な開発案件が終了すると、やっぱり大手ても受注の波があり、仕事が途切れるようになりました。その次は単価の引き下げが始まり、結局、大手にぶら下がっていては、飼い殺しにされるだけだと、5年もせずに取引を止めさせてもらえました。大手の住宅メーカーは、結局職人は金儲けの道具くらいしか思っていないのです。

職人は道具でもなければ馬鹿でもない

受注が減って暇まであろうが、雨が降って作業ができなかろうが、職人にも家族もいれば生活があります。そんな当たり前のことを無視して、道具のように必要な時だけ職人を集めて、いらなくなったらすぐに手放す。そんな企業が圧倒的多数を占めているのが、これまでの建設業界であり、それが根本原因となり、職人は絶滅に瀕しています。
職人の正規雇用と育成は、残念ながら経済合理性をすぐに担保する事はありません。企業は人なりと言われるように、一人前の職人としての技術を身に付け、企業の代表として恥ずかしくない人間性を身に付けて、主体的に働ける実力を身に付けてから社員職人はその真価を発揮しますし、企業も力をつけるのです。キャリアパスをしっかりと運用し、現場で指示された通りの作業を行う単なる作業員ではなく、倫理観を持って現場を取り仕切るリーダーとなり、資格を取得して、設計、施工、営業の全てを網羅できる建築のプロフェッショナルとなれば、これまでの職人の概念を超えた大きな活躍をする人材になりえます。そして、明確な目的とビジョンを掲げた会社の将来を共に考え、事業を共に作り上げていく。そんなポジションを用意して役割にみあった報酬も用意する。金儲けの道具ではなく、人として、その成長を支援するあり方を実践すれば、職人が目先の金に引きずられて大手企業に引き抜かれるリスクはそんなに高くないと考えています。職人もそんなにバカでは無いのです。

職人を育てても引き抜かれるのでは?に対する答え

人が会社を辞めていくには、それなりの原因があります。その理由は様々ではありますが、基本的にその会社にいることに対する希望を失い、絶望を感じたときに、人は職を変えようとします。人が会社に定着しないのは、とにもかくにも、経営者のあり方の問題であり、その事実に向き合うこと無く、リスクばかりに目を向けて、思考停止に陥ってしまうのは、未来を叩き潰すことに他なりません。それが表題である大手企業による職人の引き抜きのリスクに対する私が出した答えです。
今後、職人不足が極まり、いくら受注を重ねても着工できずに売り上げが作れなくなってくると、確かに、潤沢な資本を持つ大手企業は、金にものを言わせて職人を引き抜き、かき集める行動に出るのは、火を見るより明らかです。そんな近い未来を見通して行う職人育成は単なる作業員を育てるのではなく、会社の未来を共に作る人材を育てると言う当たり前すぎるあり方を愚直に実践するしかないと思うのです。これまで職人の世界に明確には存在しなかったキャリアパスの構築とその運用こそが建設・建築事業所の未来を切り開く鍵になると考えており、マイスター育成協会では高等学校の運営と共にキャリアパスを含めた人事制度の改革、運営のサポートも行っており、10年先の未来を見据えた経営者が続々と集まっています。建設業界は国民生活を守るインフラを担う重要な役割をになっていることを自覚して、これまでの悪習を断ち切るフェーズに入っていると思うのです。

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職人の地位向上を志に掲げ、現場実務者研修、人事制度改革、そして職人育成の高等学校を運営しています。

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