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本物時代の本物の条件 〜eumo新井氏特別講演〜

「高い志を掲げて本業で社会課題を解決しよう!」を合言葉に、最近、爆発的に会員数を伸ばしている経営実践研究会なる団体があり、私も一般社団法人職人起業塾でその団体にに所属しています。ひょんなご縁からお誘い頂き入会したのはほんの2ヶ月前で、まだ団体の活動の細部まで把握できているわけではありませんが、それでも今まで自分が学び、実践してきたあり方にぴったりと符合するその会の趣旨に賛同し、このところ精力的に様々な催しや会合に参加するようにしています。昨日は、以前から是非とも詳しく話を聞いてみたいと思っていた、日本のESG投資の先駆けと言われる鎌倉投信を立ち上げられ、共感資本主義の実現を推し進める共感デジタル通貨を発行するeumoの代表である新井氏の講演が大阪で催され、無理矢理予定を調整して参加してきました。新井氏の講演はまさに共感することばかりだったのですが、その中でも印象に残った部分をここに書いておきたいと思います。

GDPはバラマキでは改善しない

講演の冒頭に新井氏は、昨日30,000円台の大台を超えたコロナ禍での異常な株高に対する違和感を口にされました。実体経済が落ち込む中、自民党総裁が変わることに起因したとされる株高は実体経済と乖離した単なるマネーゲームだとしか思えません。金融のスペシャリストの新井氏が私たちと同じ感覚を持っておられたことを非常に嬉しく感じました。
先行き不透明な今の時代、政府がいくら給付金をばらまいたところで全てが消費に回るわけではなく、貯蓄に回ってしまいます。その全く逆に、前向き後むきはともかく、とにかく資金の需要があって銀行が貸し出しを行う融資こそがGDPが伸びる源泉であり、全体を俯瞰して見ると借金したい企業を増やすことが是とされている今の経済の論理こそが格差社会の真因になっていると、金融資本主義のシステムを厳しく批判されました。

資金調達の選択肢が増えた

しかし、現状を悲観するだけでは一切何も変わりません。新しい時代がすぐそこまで来ており、グレートリセットと呼ばれる金融資本主義から人間を価値の中心に据えた人道資本主義、共感資本主義へのシフトがすでに始まっていると新井氏は自分自身の経験則を元に力強く話されました。最もわかりやすい例としてクラウドファンディングやESG投資で起業する際の選択肢が増えたことを挙げられて、共感が資本を集める時代になったのだと高らかに宣言されました。クラウドファンディングでお世話になったことがある私としてはその言葉を聞いて、漸く良き想いや、高い志を掲げて事業に取り組む本物が認められる時代になったのだと感じて、とても嬉しい気持ちになりました。
共感される良き意図を持つ企業に資本が集まる本物の時代は、どうやったら共感を集められるか?ではなく、どんな経営が共感を集めるのか?と言うやり方ではなくあり方に比重が移ります。その典型的な企業事例として新井氏はボーダレスジャパン社を上げられました。もちろん、お金が集まるだけではなく、そこには人も集まるわけで、同社には優秀(優しさに秀でた)な人が集まり40を超える事業を立ち上げて売り上げも利益もしっかりと生み出されているとの事でした。その爆発的な成長を耳にすると、確かに大きな社会システムの変革の胎動を感じれる気がします。

本物はブレない

新井氏曰く、儲かったから社会貢献をするとか、今は厳しいからとにかく金が儲かることだけを考えるとか、これまでおまけの様に考えられてきた程度の企業の社会性は偽物であり、経営は、事業性と社会性のバランスが全てではあるけれども、決して切り離すものではなく一体として考えて苦しいときほど社会的な貢献活動を続けてこそ本物だと言われました。そのようなあり方が経営の品格を作り上げ、利益中心の考え方から、価値中心へのシフトを叶え、社員が自分たちらしくない案件は断るといった、世界観を大事にした共感を呼ぶ価値のある企業を作り出すと口にされました。そもそも、働く人たちの価値観の転換はとっくに進んでおり、今は既に人事権と給与で社員をコントロール出来る時代ではないのは一般的な認識になっていると思います。意図こそが事業を支える最も大きな柱になる時代が来たと言うことなのだと思います。人も企業も苦しい時に試される、本物は苦しい時にやりぬくのだ新井氏は話されましたが、共感の源泉とはなにか?を考えた時、共感は結果論であり、その元は経営の魂が表現できているか、愚直に実践ができているか、との泥臭い、しかし真摯に信念に向き合う姿勢ではないか、誰にでも出来ることに共感は生まないし、無茶なチャレンジこそ共感を呼ぶのだと言葉には、襟を正される想いがしました。

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リスクは回避するものではなく取るもの

無茶なチャレンジを行うには大きなリスクが伴います。経営者の仲間と話しているとよくリスク回避、リスク管理という言葉を耳にします。しかし、無謀なチャレンジを推奨される新井氏は経営者にとってリスクは管理するものではなく取るものだと言われます。リスクを取るとは即ち、リスクを感じない場所を定義していく事であり、最もリスク無い場所とは自分達が得意とするフィールドに他なりません。要するに、プロフェッショナルとして得意分野に特化することで、リスクの低い安全で安心な場所とは本業の延長線上にあるとなります。だからこそ、本業で社会課題を解決するチャレンジを行うべきとの論調には深く共感した次第です。
そして、無謀と思われるような誰も行っていないチャレンジには投資が伴います。社会課題を解決するチャレンジとは生きたお金を使うことであり、その使い方は関係性の延長線上にしかない。全てのステークホルダーとの関係をより良いものにしながら、課題解決を行うには周りの人や仲間からの協力や応援が必要で、その意味では人の良い面を出せるシーンを長くするのが経営だと、人自体に良いも悪いもなく、環境を整えることで、良い面が多くでれば、新たな付加価値を生み出す力になるとのことでした。

真の自立分散型経営

ステークホルダーとの関係性の話からマザーハウス社のフェアトレードの例を挙げられ、同社の製造を担うバングラディッシュの現地工場は完全に独立した現地法人で代表者も現地の人、何度も裏切られてもマザーハウスは現地工場を下請け企業ではなく対等の関係になるように粘り強く取り組まれたとのことです。コロナ禍で売り上げが大きく落ち込んだ際にはバングラディッシュの工場から支援を申し出されたらしく、これこそまさに自立分散型の経営だと絶賛されておられました。新井氏曰く、世の中は優秀な人で出来ているのではなく、諦めの悪い人で出来ている。一見、バカの様だが、そのバカな姿こそが感動を生むし、共感を生むのだと、バカの集まりこそが社会を変えていくのだと力強く話されました。
人間は環境に影響を受ける生き物だとよく耳にしますが、無謀なチャレンジを真摯に行うバカにバカが集まり、そんな仲間に刺激を受けて、スタンダードが変わると考えれば、我慢くらべを知るかの如くやり続けることが社会課題解決解決への唯一の道なのかも知れません。確かに、全てのステークホルダーが忍耐強い人ばかりになればやりたいことができるようになる環境が整うし、そこに必要なのは対話だとの新井氏の言葉には大いに説得感がありました。

不条理を乗り越えるアート思考

新井氏は国際金融機関のやり手金融マンから身体を壊して転身し、金が全ての世界から、想いを持った人や企業を応援する、意図ある投資家となり大きな成果をあげられるようになったこれまでの人生を振り返って、問いを持ち、ブレずに生きるのが幸せな生き方だと言われました。難しい問題はたくさんあり、それらは簡単に解決しないし、この世界は不条理に満ちているけれども、そのジレンマを味わうくらいの気持ちを持って向き合うことが大切で、大事なのはどのような世の中にしていきたいのかという世界観と、なんでもわかりやすいロジック、サイエンスで解決を図るのでははなく、曖昧でわかりにくいアートの世界での思考だとの認識を示されました。
事業存続に利益は必要不可欠なのは非常にわかりやすいロジックですが、利益のために事業があるわけではなく、利益は目的にはなり得ない。単にケジメとして捉えて経営者は責任を負うべきもので、利益を上げながらも本来の目的である志を高く持ち、世の中を良くしたいとの意図を企業内で共有し、対話を通して社内風土を醸成することこそがこれからの世界に必要で、曖昧に思えることにブレずに粘り強く、真摯に向き合うことこそが社会課題解決に繋がり、その動きこそが企業も国も世界も存続するための必要なプロセスであると講演を結ばれました。激しく共感すると共に、スタンダードが変わりつつある世界を体感し、勇気をもらうことが出来る素晴らしい機会でした。私も引き続き、馬鹿正直に社会課題解決を叶える本業に向き合って行きたいと思います。

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モノづくりの担い手、職人の地位向上を通して、持続可能な社会の実現をミッションに掲げて事業に取り組んでいます!




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