「どっちも」を選択する二項動態的思考の重要性
東北に研修旅行に来ています。まず初日に仙台にてSocial company forum in 仙台に参加、翌日からの2日間は現地に足を運び、人に会い、体感で学ぶ女川での実践研修、そして最後に仙台に戻り天明先生の特別講演会に出席と濃密過ぎる出張になっています。アウトプットする内容に事欠きません、というより備忘録で残しておきたい内容がてんこ盛りの充実した時間を過ごしておりますが、少しずつ小出しにこのnoteにも今回の出張での気付きと学びを書き出しておきたいと思います。
圧倒的な行動力と即決断
初日の仙台でのソーシャルカンパニーフォーラムの基調講演は大阪を拠点にされている運送会社の宮田運輸の宮田社長。福島の復興に物流のインフラを整える必要性を国と自治体から訴えられ、大手運送会社が尻込みする中、3秒で福島への事業展開を決めたと言われる即断即決が出来る漢気の塊の様な方です。私とは経営実践研究会の他にも倫理法人会や共通の知り合いがいるなど以前から懇意にして頂いており講演も何度も拝聴しておりますが、今回も含め何度聞いても胸に迫る、そして熱く込み上げてくる想いが溢れ出す素晴らしいお話でした。そんな宮田社長のお話の中で人を信じ、人の持つ可能性を信じる中で、選択の基準についての話がありました。企業経営を行なっているとつい、利益性と利益に直結しない人材育成や新しいマーケットへの投資など、足元の収益と未来への投資で選択を迫られがちです。そんな時、宮田社長はどっちも選択すると言われます。
選択と集中の是非
一昔前の日本経済が行き詰まりを見せ始めた頃「選択と集中」なる言葉がまるで流行語のように頻繁に使われる時期がありました。有名なのは稲盛和夫氏が債務超過で存続の危機に瀕したJALの経営再生の舵取りをされることになり、採算の取れない赤字路線の大幅な撤廃と人員削減を断行して見事、黒字転換を果たした事例です。稲盛氏は記者会見等で「選択と集中」という言葉を繰り返し口にされていました。再建不可能と言われ、誰も手をつけたがらなかったJALの再生を見事果たした稲盛和夫氏は流石は現代一のカリスマ経営者だと高い評価を受けました。しかし、生産性の低い社員、不採算のローカル路線を容赦なく切り捨てて圧倒的に収益性を高めたその手法は過疎の地域に二度と路線を戻す事が出来ない、ナショナルブランドJALのインフラとしての存在意義を見失うものでもありました。その意味では選択と集中は決して正しい選択だとは言い切れない面もあると私は感じました。50年後、100年後の「あるべき未来」から見た時に正しい判断だったかどうかは分からないし、これからの歴史に評価を委ねなければならないのかもしれません。
二項対立思考の危険
少し前のこのnoteで「野生の経営」という本を紹介しました。その中で、人が本来持つ、しなやかに生き抜く力、野生の発現に必要な考え方として一見、相反するような行動を偏る事なくバランスを取りながら進める「あれかこれか」の二項対立ではなく「あれもこれも」の二項動態的な思考が重要だと書かれていて、我が意を得たり!ととの感想を持ちました。それは選択と集中の概念に対する違和感を持っていただけではなく、この1年間で経営実践研究会の活動で本業を通して社会課題を解決する企業との連携を広げていく中で、本業か社会課題解決かのどちらかを選択する思考の経営者が意外に多いことに気がついて、一般的に二項対立の思考に陥りやすい経営者が多い
のだと感じていたからです。それは明らかに企業としての存在意義に目を向けられていない、本質から離れた今だけ、金だけ、自分だけ思考への傾倒であり、長期的な視点で見れば非常に危うい考え方ではないかと思うのです。
あれもこれもが未来を作る
会社は社会の公器である。と言われたのは経営の神様の松下幸之助翁、論語と算盤の中で経済性と倫理を合一にすべしと渋沢栄一氏は書かれています。二宮尊徳氏は人にまず与えることで周り回って利益が返ってくるものだと世の中のお金の流れをタライの法則として実践されました。短期利益を確保することに偏重した資本主義社会が行きすぎて解決困難な様々な社会的な課題を生み出している中、次世代にどのような世界を残し、引き継ぐのかと考えれば、持続可能な事業を行いながら、同時に世の中の課題を解決するしかありません。また、日本の企業の97%が中小企業である事実を鑑みれば、私たちのような規模の小さい会社がそれぞれの地域に根を張り、まずはそれぞれの地域を良くする活動を進めていくしかありません。そう考えれば選択と集中なんて了見の狭いパラダイムは捨て去って、「あれもこれも」の二項動態的な思考が必要だと思うのです。地域と業界をクロスオーバーさせて本業で社会課題の解決に取り組みたいと思われている経営者さんとの協働を進めていきたいと思っています。
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ヒト、マチ、暮らし文化を繋ぎ四方良しの世界を実現します。
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