高校生とSECI理論を体験してみた
私は一般社団法人職人起業塾なる団体で建築業界の実務者向けの研修事業を行っています。自分自身が大工の職人として起業してから20数年、自分自身でも様々なことを学び、実践しながら職人の育成を行ってきた中で培った知見を集約して、建築現場を基点として働く職人を始めとする実務者に生きがいを持って働ける力を身につけてもらう、所謂ビジネススクールです。実は私は中卒で学校での勉強はからっきしでしたが、実社会で本当に必要なのは学校でのテストでいい点数を取ることではなく、人間社会の中に存在する真理や原理原則に向き合うことだと深く感じています。そんなことを若者に伝えたいと思い柄にもなく教育の事業を立ち上げました。ちなみに、Ikigaiの定義とは、好きなこと、得意なこと、しっかり稼げること、人様から求められることが重なる働き方です。
リベンジ授業
そんな私にひょんなご縁で高校で授業を行ってくれないか?とのオファーを頂きました。私は長らく建築畑を生きてきて多くの若者に関わり、育ててきたので、建築業界内での育成や教育にはそれなりに自信がありますが、普通科の高校生に興味を持ってもらえる話ができるのかと若干の不安もありながらお引き受けしました。今年の6月に二時限の枠で授業に行った際はまずはじめに自分自身の(どーしようもなかった)若かりし頃のエピソードを披露すると共に、学生達の将来の夢を聞かせてもらいたいと自己紹介をしてもらいました。私が君たちの歳の時よりも完全に君たちの方が優秀だし、大きな可能性を秘めているとの私の話はかなり納得感があったようで、その後のどん底から這い上がったプロセスはコツコツと地道な習慣を積み重ねて来ただけで、塵も積もれば山となる、千里の道も一歩からといった当たり前の原理原則に沿った思考を行動に落とし込むだけで大きな成果を手にすることができる。との私の体験談がわかりやすかったようで、授業終了後のアンケートには面白かった、為になった、また話を聞いてみたい、とのまずまずの評価をもらう事ができました。前回の授業のnoteはこちら、
伝えるのではなく考えてもらう
自分の中では伝えきれなかった事があるなーと若干の反省をしていたのと、前回の授業が思いの外、学生にウケたのにすっかり気を良くした私は、調子に乗って続きの授業をしたいと担当教師の内藤大吾さんに申し出ました。内藤さんの私の授業に対する評価もそれなりにあったようで、快く受けてくださり、先日2回目の授業に行ってきました。リベンジ?続編?の授業を行うに当たって考えたのは、前回の授業の反省として、伝えることに焦点を当てすぎて、生徒達に自分で考えるタイミングをあまり与えられなかった事でした。思いついたのは野中郁次郎先生の書籍で繰り返し紹介されているSECI(セキ)モデルを使ってのワークショップです。概念を伝え、それぞれが考え(暗黙知)、それをアウトプット(表出化)して見える化(形式知)し、グループワークで共有と連結を行った上で共通項を見出して概念化する、それをまたそれぞれが自分の中に取り込んで行動を考える一連のプロセスを繰り返すことで、自分たちのコミュニティーの中に存在するインサイト(真理)に気づく、もしくは認識するのではないか、との仮説です。
高校生が見せた才能の片鱗
この度の授業で私が伝えたかったのは、大きな転換期をも変えているこの世界には時代の変遷にも流されず、変わる事がない真実があり、それに真っ直ぐに向き合いながら、今だけ、金だけ、自分だけ良ければ良いとの強欲資本主義に冒された思考から抜け出して、より良い未来を作っていく意図を持ってもらいたい、そして、君たちにはそれを叶える可能性も才能も兼ね備えているという事でした。昨日のnoteにその辺りのことは書いたのですが、私が想像していた以上に学生達は素直な善き心を持っていて、それを衒いなく表出できるし、概念としてまとめ、認知する事ができていました。高校生たちにSECIモデルがしっかりと昨日して素晴らしい結果を導く様を目の当たりにして、少しの驚きと共に未来に対する大きな希望を感じることができました。
未来は決して暗く無い
大航海時代と呼ばれるヨーロッパの白人たちが始めた海賊まがいの略奪と搾取に端を発した強欲資本主義が金融と言うまやかしで増幅され、暴力ではなく金で支配をする植民地を増やすがごとく、格差と分断が広がり続ける今の世界。このままの状態が進み、貧困と怨恨が極まればまた大きな戦争を繰り返し、人類が破滅に向かう事は想像に難くありません。そんな行き過ぎた資本主義に歯止めをかけ、誰もが幸せを求め、手に入れることができる共生と自律循環型の新しい社会システムへの転換が不可欠なのは多くの人が理解しているところ、それを担う若者達は私達が思っているよりも良くわかっているし、高い意識を持っているのだと認識を改めました。この国の未来はそんなに悲観する事は無いのかも知れません。SECIモデルを使いこなす若者達に期待したいと思います。
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真理を探究する研修を行っています。