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カタチと想いをつなげるもの

あらゆる物事で、形と心のどちらが重要かと言う問いがよく出されます。形式や体裁だけ整えたところで、心がこもっていなければ意味がない、また、いくら想いがあったところで、形が整っていないと台無しになる。カタチと心のジレンマは日常の様々なシーンで出現します。

カタチか真心か?

形と想い、どちらが大事かと言う問いの答えは、どちらも大事。となるに決まっているのですが、にもかかわらずこの論争が頻繁に、繰り返し生み出されるのは、両方程良いバランスで同時に行うのは非常に難しく、時間や費用や様々な条件などを鑑みて、どちらを優先するべきかとの優先順位の迷いが生じるからだと思っています。
例えば、茶の湯の世界で言うと、お稽古ではとことん形を繰り返し学びます。所作ができていないといくらおもてなしの心があったとしても、それは人には伝わらないと叩き込まれます。おもてなしの心を学んでいるにもかかわらず。形を極めた先に真心が籠ると言われているようにも感じるほどです。
逆に、イベントの開催や動員では、運営の形を作ることばかりについ目が行きがちで、本来の目的を見失ってとにかく人数を集めてみたり、タイムスケジュールや動線に固執して中身の薄いものになってしまったりすることが散見します。目的は何なのか?を忘れてしまうと、全てが意味を失ってしまうことを考えれば、形にとらわれることなく、想いの部分を重視すべきとなります。かといって、多くの人が関わるほど、形をしっかり作らないと収拾がつかなくなるのも実際で、非常に悩ましい問題です。

理念と経営

陰極まれば陽となる、との陰陽論に代表されるように、一見相反するように見える2つが実は表裏一体であるのは私は一つの世の中の真理だと思っています。光ある所に影ができますし、顧客満足なくして事業の継続はありえませんが、収益度外しではすぐに事業は破綻します。世の為、人の為に事業はあるべきですが、持続性を担保するにはマネタイズと言われる収益性の担保が欠かせません。
相反するように見える社会性と経済性を両立させるCSV(共通価値の創造)のフレームが事業モデルの基本になるのが本来だと考えていますし、近年はその考え方が広く認知されるようになりましたが、実際のビジネスシーンでその実現を成し遂げて持続性を担保するのは一筋縄ではいきません。
胸を張ってCSV経営を行っていると言える、もしくは未来創造企業やホワイト企業大賞、日本で一番大切にしたい会社大賞等で客観的な認証を受けている事業所はごく限られているのが現実です。
収益性と社会性の問題も言い方を変えれば、カタチとココロのせめぎ合いに他なりません。両立すべきとの答えは分かってはいるものの、実際はなかなかそこに辿り着けないものです。

学問できる環境

問いを持つことこそが学問だと言われます。私が世話人として参加している経営実践研究会では様々な問いを持つことを学ばせてもらっています。イベントの企画立案や運営、組織作りとその組織で実際に新たな価値を生み出すプロジェクトを立ち上げたりと、文字通り経糸を営み、事業を次の世代に継ぐ経営に必要な研究とその実践の場が数多くあります。
上述の事業における社会的価値と経済的価値の両立についても厳しいチェック項目をクリアして未来創造企業として認証されるまでメンバーは実践を繰り返します。また、世話人としてプロジェクトを運用するための組織づくりを行ったり、現在、6月16日に行われるナショナル・フォーラムの実行委員長を拝命しており、その全てでカタチとココロがせめぎ合うシーンに数多く出くわします。問いを持たざるを得ない、いわば学問できる環境は本当に有難いと感じています。

カタチと心を一体化させる概念

そんな様々な活動を行う中で、カタチとココロを繋げる概念に気付かされました。なるほど、永遠の課題とも言える問いの着地がここにあるのか、と大いに感心したのは「設え」という言葉です。
設えとは用意、準備のことを指すと辞書には書かれてありますが、単にモノを揃えたり、段取りをつけるだけではない違うニュアンスが含まれていることは誰もが感じられると思います。そこに付け足されるのは「心を込めて」であり、相手の心を慮ったり、敬意を表したりをカタチにするといった意味が含まれます。
千利休は茶の湯の基本を「もてなし」と「設え」だと言われたそうですが、心をカタチにする、カタチと真心を繋げて一体化するのが「設え」の概念だと今更ながら研究会の学びの中で気付かされました。
事業も結局、人と人との繋がりです。人数や規模の大小、オンライン、オフラインに関わらず、あらゆるコミュニケーションに対して入念に、周到に用意や準備をすることでそこで生み出される関係性は必ず質が高まります。相手の心の在処を知り、その心に寄り添って設えれば結果は自ずとついてくるのも自明の理。
常に場を設る意識を持ち続けることで解決出来ることは限りなくあると思うのです。あとは、そのレベルをどこまで上げることができるのかにかかっており、やっぱり実践で裏打ちしながら身につけるしかないと思うのです。
カタチと心の優先順位に迷う、ジレンマを感じておられる方は是非お声がけ下さい。共に実践できる場を差し上げます。(笑)

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