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循環型ビジネスモデルとタレンティズムの深い関係

コロナによる影響で、集合型の対面研修を行うのは非国民と言うような風潮に押されて、昨年1年間は新規開講を行ってこなかった一般社団法人職人起業塾の6ヶ月コース研修ですが、昨日、久しぶりに関西で開講しました。
この研修は、以前から、VUCA(不透明、不安定、複雑、曖昧)化と言われる大きな時代の変化に対応するべく本質的な価値創造のための行動変容を推し進める研修でしたが、コロナによって、その変化が本格的に明らかになったことを受けて研修内容も大幅にリニューアルし、研修を通して塾生たちに目指してもらう目標、方向性自体を修正することになりました。

脱マーケティング

以前の職人起業塾6ヶ月研修で掲げていた研修の目的を一言で表すと職人や施工管理などの現場実務者がマーケターとなって活躍してもらうことでした。マーケターとは、マーケティングを実践する人のことで、ここでのマーケティングの定義は「生涯顧客の創造」で、経営の神様と言われるドラッカー博士が事業の目的だと定義された「顧客の創造」とほぼ意味を同じくします。生涯顧客を得るには、顧客と圧倒的な信頼関係を結ばなければなりませんが、建築業の場合は、その信頼は最終的に現場でしか作ることができないと言う絶対真理があり、ものづくりを担う実務者に顧客との信頼関係を構築することを目的に、それを担保出来る品質や工期、完成イメージを共有するコミュニケーションをもって働いてもらうよりそれを叶える方法はありません。そのように考えると、現場実務者の主体的で良き意図を持ったプロフェッショナルな行動こそがマーケティングの実務と言うことになります。
このような考え方を研修で伝え、現場にて実践してもらうのが私たちが行っている研修で、それを建築実務者向けのマーケティング実践研修と呼んでいました。しかし、今日の講義では、目指すのはそこではないと明確に示したのです。

世界を変えよう!

この度、何をリニューアルしたかというと、大まかにまとめれば研修を通して塾生達に持ってもらう目的意識の方向です。昨日の研修で私が繰り返し、しつこいくらいに言い続けたのは、世界は目に見えるものと、見えざるものでできており、目に見えないものこそ、古くから変わらない人間が大切にしてきた本質だということです。
これまでは目に見える数字やデーター、お金が価値の中心にあったのが、現在の世界の大きな変化で今一度、目に見えないもの、心の在り方や意図、人への思いやりや共感、愛情等の価値が見直されており、その価値観に沿った経済活動を行うべきだということで、その転換は単に生涯顧客の創造を目的に置くにとどまらず、誰もが幸せになる経済圏の創出とのもっと大きなテーマへ歩みを進めることに他なりません。マーケティングから一歩外の大きな世界に踏み出して、君たちの力で世界を変えてもらうと熱く伝えました。

3人のレンガ職人とトリオドス銀行

良き意図を持つ人や企業にお金が集まり、循環する兆候は既にあちこちで顕在化しています。わかりやすい説明として私がいつも例えに出すのは、3人のレンガ職人の寓話です。金のため、生活のためにレンガを積む職人と、決められた仕事を完璧にこなすことだけに注力する職人、建物を作る仕事を通して村の人が幸せになるのを目的にする職人の3人の職人の内、誰に仕事を頼みたいか、誰と一緒に働きたいかと問われれば、100人中100人が良き意図を持ったレンガ職人に頼みたいと答えます。良き意図、同じ想い、共感する事業にこそお金が集まるのは今も昔も変わりません。最近になってそれが実体経済へ現れたのはオランダのトリオドス銀行に代表されるソーシャルバンクやESG投資(環境、社会問題の解決、企業ガバナンスに投資目的を絞ったファンドの台頭で、日本ではまだこれからですが、欧米諸国では圧倒的な伸張を記録しています。世界の人々は良き意図にお金を使いたいと思っているし、それは経済に反映されつつあるのです。

一歩前へ

大工や施工管理といった建築実務者を集めての研修で、そんな壮大な計画を実行できるのか?との疑問が浮かぶかも知れませんが、私は顧客接点を持ち、実際の価値創造を行う実務者こそ、その役割を担う中心的存在だと考えていますし、またその力を秘めていると思っています。そもそも、人は潜在能力の3%しか使えていないとも言われますし、私たちが志と呼んでいる、理想を目指す強く正しい意図を掲げ、実践を伴えば必ず取り組みに対して応分の成果が上がると思いますし、それが、誰もが持つ才能を開花させる才能主義と訳されるタレンティズムの本質だと思うのです。

一般社団法人職人起業塾が掲げるミッションは「職人の社会的地位の向上」であり、今一度、子供達にモノづくりの担い手への憧憬を持ってもらえる職人の復権を目指してきましたが、これからの私達はそれだけではない、もう一歩大きな世界にアプローチして持続可能な循環型社会への移行を推し進めるリーダーの育成を目指すことになったということです。第18期の塾生達の成長とそれに伴う組織の変化、それぞれの事業者の地域への良き影響を広げることができれば最高に幸せな事業になると思っている次第です。

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