パターンランゲージの光と闇
日本式製造業の成果パターンとして広く知られることになったPDCAのフレームワークは今ではすっかり一般的に知られるようになり、まるで計画、行動、検証、改善をくるくると回すことが当たり前のように囁かれるようになりました。しかし、注意深くその実際を見つめる人はPDCAが機能しないことに気づき始めているのではないでしょうか。今年初めての「継塾」では脱PDCA、SECIモデルを使った計画立案の勉強会を行いました。皆さん、自身の内面に向き合った計画を発表されておられました。
ちなみに、以前のnoteでは親鸞聖人が見出したパタンをご紹介しています。
人は計画を立てられない
私が20数年の長きに渡って建築事業所の経営をする中で気付いたのは一生懸命に計画を立ててもなかなか思い通りに物事は進まないとの事実です。その原因を探ってみて感じたのは、人は押し付けられた計画に対して大概の人はあまり一生懸命になれないということと、多くの人は自分で実効性の高い綿密な計画を立てられない、もしくは計画を立てるのを嫌いだとの結果です。考えても見れば、犬でも猫でも首輪をつけられて引きずり回されるのを嫌がるのですから、人間なら尚更です。人は誰かから縛られるのを忌み嫌いますし、それは自分自身からでも当てはまります。計画を立てるのを生理的に嫌がるし、出来れば逃れたいのです。
幻想のPDCAフレーム
そんな元来、計画を立てるのが嫌な人を集めてPDCAを回すなんて愚の骨頂です。もし上手く回せたと思っているとしたら、それは多分、本質的な価値創造を理解しておらず、表面的なタスクをこなせるかどうかだけを指標にしているのではないか、と私は疑問に感じています。表面的で実行不可能な、もしくは不確定極まりない仮説を積み重ねた計画を立てて、そのじっこう対するチェックをかけて改善を試みるなんて単なる時間の無駄。
もし、本当に実現の可能性の高い計画を立てることが出来るなら、計画の終了時の検証改善ではなく、常に細やかな軌道修正を行なって、必ず目標通りに着地させれば良いだけで、これならPDPDを繰り返すべきです。そんな運用をできる人もごく稀におられて、凄い!と感嘆させられることもありますが、(私自身が立てる計画も含めて)殆どの計画はそんな運用はなされません。これがPDCAが幻想のフレームワークだと私が全く意味を感じない理由です。この幻想のフレームを信じると本質的な目的の実現に向かわない表面的な活動が当たり前になってしまうと思っています。
実行も実現可能性もは人の内面にある
では、業務改善を行うにはどうするのか?との問いに対する答えは明確です。苦手で嫌いな計画を無理に立てるのではなく、好きでやりたいと思えるテンションからその実現の計画を立てることに尽きると思っています。
人はそれぞれ違うし、好きなこともやりたい事も様々、その違いこそが個性として認められるべきで、その個性=才能を開花させるパターンを見出すべきだと考えます。
そこで着目すべきは人が内面に持っている感性や感情から生まれる「想い」です。孟子が「惻隠の情」として示された人は誰しも自分軸での思考だけではなく、人のために考えることができるし、咄嗟の時は良心に従って行動に移すことができる。との性善説を信じるならば、絶対に人から信頼を得たり、支持される力を全ての人は持っているはずです。その暗黙知である「想い」を表出することこそ、実行ありきの計画を立てる、そして内面に向き合ってつい惰性に流され実行できなくなりがちな弱さを克服する修正を繰り返せると思うのです。
パターンランゲージの光と闇
多様性の時代と言われる、マーケットの価値観が分かり難く曖昧で複雑な今の時代には、トップの一握りの人が考案するサービスや商品に賭けるよりも、よりユーザーに近いボトムの大勢の人が出し合ったアイデアの方がヒットする確率が高くなるのは当然です。昨今、ナレッジ・マネジメントとの言葉をよく耳にするようになりましたが、ナレッジ(知見・知識)とはマニュアルやノウハウではなく誰もが持つ感性や感情といった何人たりとも否定することができないインサイトから学べきものだと思うのです。
パターンを掴むと成功体験の再現性が高まるし、乗り越えるのが難しかった課題を解決できる緒をたやすく見つけられるようになる。太古の昔から人は成功法則を探し求めて来たし、パタンランゲージを繰り返して様々なフレームを作り上げて来ました。それらは思考を整理する意味においてとても有意義な試みだと先人に感謝することしきりですが、時にフレームワーク、パタンランゲージは安易で表面的な、それをやればとにかく大丈夫的な盲目に陥ってしまうリスクがあると感じています。原理原則や真理に基づいた、人の心はどこにあるのか?との問いを持った本質的な思考が組み込まれる深いパタンランゲージを心掛けなければと思うのです。自戒をこめて。
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