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本末表裏一体論②〜終わりから考える〜

昨日のnote に目的や存在意義を明確にするための学び、本学と、具体的に今、何をどのように行うのかの戦略や戦術をを明らかにする末学は表裏一体であり同時並行で進めるべきだと書きました。少しくどいですが、目の前の行動を計画する際に、目的意識を持つと同時に、終わり(目標、目的)から逆算して考えることの大切さをもう少し追記しておきたいと思います。昨日の記事はこちら、

主体性を伸ばす若手大工育成プロジェクト

昨日は国交省から大工育成の補助金認定を受けている研修事業、京阪神木造住宅協議会主催の若手大工育成プロジェクトの9日目を開催しました。私が塾長として取り仕切っているこの研修では、大工見習いで入職して3年未満の若者たちを集めて小さな小屋を実際に建てる実地研修を行っています。本来、上手に建物が完成するように事細かに指示を出し、完璧な施工をさせるべきなのかもしれませんが、失敗しないように指示して作業をさせるなら普段の現場で働いているのと大して変わりは無いと考え、座学で基本的な部分をレクチャーした後は(失敗することを前提で)段取りから役割分担、タイムスケジュールまで若者たちに自分たちで考え、決めさせて施工をさせています。いわゆる、魚を与えるのではなく魚の釣り方を教えるつもりで若者たちの自主性と主体性に任せきりの研修を敢えて行っています。

ほろ苦い研修

半年間で12回の研修の第9回目を昨日終えて研修も終盤に差し掛かりましたが、予定していたカリキュラムより随分と遅れが出ています。ちなみに、ここまでの研修を振り返って見ると、若者たちが自分たちでスケジュールした通りに工程を進められた事は1度もありません。技術的に習熟度が低いとか、普段あまり行わない施工をやらせているとか、自分たちで段取りをするのが初めてとか、圧倒的に経験値が少ないとか、思う通りにいかない理由は数多くあり、遅れが出るのも当然ではありますが、施工品質的にも失敗が多い上に自分たちで決めたタイムスケジュールも全く守れず、事前のイメージができていない、段取りが悪い、わからないことがわからないと毎回反省を繰り返すほろ苦い研修になっています。

自分で考えない、決めない環境

自分たちの技量を鑑みて無理のない、自分たちの実力に応じた計画を立てて、計画通りに行動する。言葉に書くと簡単で、計画通りにことが運んでも良さそうなものですが、圧倒的な経験不足がそれを許してくれません。そんな若者たちもこれから先、数多くの現場で大工としての経験を積み重ねていけば、きっと自分の計画通りに工事が進められるようになると思いますし、私もそのように強く願っています。しかし、実はそんなに簡単には問屋は卸ません。一人前の大工になっても、自分で詳細なスケジュールを立てられない者がこの業界には決して少なくなく、人に作られた大まかな工程表で最終的に辻褄を合わせる働き方をしている職人がほとんどだと言う厳しい現実が実はあります。職人が自ら考え、決めて計画を実行する(=自分で決めた期限内に価値を生み出す)環境が建設業界では皆無なのが現状です。そして、この現状は職人だけに問題があるのではなく、職人の人格を尊重し、主体性を重んじる風土がこの業界に全くと言っても過言で無いほど、無かったことを示しています。

計画を実行することこそが経営

精度の高い仕事ができる技術だけを身に付けさせる職人教育は人を人と見ていない、道具やロボットと同じ扱いだと私は思っています。計画を立て、その通りに実行する力を身に付けると言う事は、言い方を変えると経営する力を持つことでもあります。自分が任された現場、案件の経営を行ってこそ一人前の大工だと考えて、私は創業以来これまでの20数年間、職人育成に取り組んできました。職人が身に付けるべきは何よりも主体性と経営感覚であり、実はその習熟度を高めるのは詳細で精密な計画を立てることに集約されます。現在、私が代表を務めている株式会社四方継では事業承継の取り組みの中心的な取り組みとしてリーダーシップシームによる詳細な計画の立案、その遂行と検証を行っています。

終わりから逆算する

計画を立てるとは、「何をいつまでにどの様にするか」を決定することであり、その習熟を深めるのはあくまで末学です。本末転倒にならない様に目的を持って計画を立てることが何より重要ではありますが、その際の実務を行うにあたって最も有効な手法として、「終わりから逆算する」という考え方があります。例えば、建築工事なら引き渡し時のお客様の笑顔や、一年点検に伺った際に幸せに暮らしているとの感想の言葉をもらうとか、そこからまた新しいお客様を紹介してもらい、信頼関係に結ばれたやりがいのある仕事に取り組める。といった最終的なシーンを詳細にイメージしてその実現のためにどのようにするか、から追い出して最終的に今、何をすべきなのかを導くことで、目的や自分たちの存在意義と計画が整合する様になります。同じ要領で建築工事単体でも工期通りに無理なく完工し、予算を守りながら自分が作ったのだと誇りを持てる丁寧な仕事で良いモノづくりを実現するのは職人誰もが望むこと。そこを強烈に意識して詳細までイメージ、シミュレーションを繰り返し、不安要素、不確定な項目を事前に察知して叩き潰す計画を立てることが出来れば、あとは実行に移すだけです。

どうせ打つなら予告ホームラン

簡単なようでなかなか出来ない完璧な「計画と実行」は自分だけが良ければ良いのではなく、仕事を通して多くの人に喜んでもらいたいとの強い想いと、丁寧に、執着を持って詳細までイメージする力が必要です。そして、そのイメージ力は経験を積むほど強くなります。ただ、経験とは体験ではなく、計画を立てて、実行後に検証を繰り返す必要があります。行き当たりばったり、出たとこ勝負での行動と結果を全く省みないままでは体験にしかならず、何年経っても詳細な計画を立てれるようなイメージ力は身につきません。そして、まぐれあたりのホームランを打っても喜ぶだけで、自己肯定感はさほど変わらないのに比べ、予告ホームランを打てた時は圧倒的な自信が身に付きます。人は、意図を持って行動しなければ何も生み出しません。自分にはできるとの自己肯定感を強く持つ人はど、能動的に自分から動ける訳で、動けば必ずそれなりの成果は手にすることができるもの。若いうちから計画と実行と検証を繰り返すことで、卓越した人材に成長すると思うのです。若者たちがそれぞれの役割や立場の中で最高のハッピーエンドの物語(終わり)を強烈にイメージする、そんな時間を日々の生活の中で少し持てるようになれば、きっと世界は変わると思うのです。

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本学と末学を一体として研修を行っています。


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