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日本だけではない職人不足の深刻な問題

令和3年3月29日晴れ

桜雨

九州や関東に比べて少し桜の開花が遅い神戸でも先週末ぐらいからようやくソメイヨシノが満開になりました。今日の日中は気温が20度を超え、ポカポカと春らしい暖かな1日になりましたが、昨日の日曜日は桜雨と呼ばれる桜の花びらを散らせる雨が1日中降り続きました。朝のルーティーンで伊川の河川敷に散歩に行ってみるとそんなに桜の花びらは散っておらず、入学式の時期まで何とか桜がもってくれたらいいなと思いました。50歳も半ばになると子供の頃の記憶がすっかり薄くなり、覚えていることはほとんどありませんが、入学式や新学期を迎えた際、桜舞い散る中で希望にワクワクしながら新たな生活に踏み出した映像をなんとなく覚えており、期待と不安で胸膨らませた子供達にもそんなイメージを象徴する風景を見てもらいたいと思うのです。

中国向けオンライン配信

冷たい雨が一日中降り続いた昨日、私は株式会社四方継本社3階のTUGIスタジオでオンラインのLIVE配信で1時間半に渡って講演を行いました。コロナの蔓延以降、オンラインでのセミナーやワークショップは頻繁に行なって来ましたが、講演という畏まった感じで話すのはあまりないことで、いつになく緊張したのは不慣れなだけではなくてはじめての海外向けのウェビナーだったと言うこともあったからです。
実はずいぶん以前から私が一般社団法人職人起業塾で行っている研修内容を何とか中国の職人さん達に伝えることができないかと熱烈なオファーをいただいており、私が上梓した書籍を中国語に翻訳して出版するなどのプロジェクトも進めてきました。そんな中、コロナが蔓延したことで一気にSNS上でのライブ配信が普及して、配信する側だけではなく、普段オンラインのウェビナーに興味を示さなかった職人たちも視聴することに違和感なく参加する環境が整ってきたことを受けて今回の配信を企画することになりました。

中国マーケットの破壊力

当初の予定では、中国の建築業の人たちが仕事をマッチングするプラットフォームに登録している職人に向けて配信する予定でしたが、いざ蓋を分けてみると建設業組合の立ち上げ総会の会場とリンクしたり、技術系の団体のオンラインウェビナーに組み込まれていたりして、終わった後に確認してみると私の講演を聞いてくれた人の数は5000人に上ったとの事でした。私はこれまで全国各地で様々な団体での催しで講演をしてきました。これまで1番多くのオーディエンスの前で話したのは多分、新建ハウジング社主催の未来予測セミナーで、四谷にあるホールの400人ぐらいが最高だと思います。今回はオンラインとは言え、軽くその10倍を超える人たちに、しかも外国向けの同時通訳の講演を聞いてもらえたのはとても嬉しく感じたとともに大きな驚きでもありました。やっぱり人口13億人の中国はとてつもないパワーとポテンシャルを持っていると改めて感心させられました。このような稀有な機会を与えてくださった五葉共創社の佐藤さん夫妻には心から感謝します。

日本と同じ問題を抱える中国の職人事情

今回、私が中国向けに情報配信をするようになった背景には日本と同じ職人不足に対する中国建設業界の深い危惧があります。中国はまだ日本のように少子高齢化による人口減のフェーズにはなっておりませんが、長年にわたる一人っ子政策の影響で人口バランスが逆ピラミッドになりつつあり、また日本と同じように3Kと呼ばれるきつい、汚い、危険な職種として建設業界は若者から忌み嫌われているそうで、今後圧倒的な職人不足に陥る構図は日本と全く同じとのことです。また、中国の職人の働き方は手配師のようなブローカーのもとに集まった仕事を案件ごとにグループを組んで受注する仕組みになっているらしく、雇用関係も曖昧で保証もしっかりとされていないようです。この辺もいつまで経っても正規雇用が進まない日本の建築業界と同じ問題が露呈しており、職人不足解決が喫緊の課題として認識されるようになっているとのことです。また、雇用関係が明らかになっていない職人が集合離散を繰り返している現場では、品質を担保する職人への教育や資格取得が一向に進まず、以前から問題視されていた中国の職人の倫理観の低さもその問題に拍車をかけています。

職人不足の根本的解消のアプローチ

私が日本各地で開催している現場実務者向け研修は職人不足問題を根本から解決するアプローチです。職人不足問題を解決するには、若者に職人と言う職業、生き方に魅力を感じてもらうしかなくて、それは今現場で働いている職人が豊かに、生き生きとやりがいを持って未来への希望に溢れて働かなければなりません。そして経営者側はその様な環境を整え、提供しなければなりません。雇用環境や福利厚生を整え、他業種と比べて遜色のない労働環境を実現するべきなのですが、それは非正規雇用の職人を外注扱いで雇用している現状に比して大きなコストアップになります。このいわば「金の問題」が職人不足問題を深刻化させて来た根本原因です。昨日の中国向けのライブ配信でもこの部分から目を背けることなく、職人育成とマーケティング一体論として話をさせて貰いました。

現場価値、職人価値の向上

私が提言する職人不足解消へのアプローチは非常にシンプルで簡単なロジックです。要は、職人の雇用環境の改善にはコストがかかり、そのコストを職人自体が賄えるように現場の価値を上げて、稼げる職人になれば金の問題は解消されます。職人の意識改革と、技術面、コミュニケーションスキルを向上させて圧倒的な顧客満足を実現することで工事現場を信頼関係に基づいた集客チャンネルに変容させることで、自社独自のマーケットを構築する突破口になると言うものです。理屈自体は誰にでも理解できるし、そもそもわかっていると言っても過言ではありません。しかし、実際に誰でもわかっている当たり前のことを運用するのはそうたやすいことではなく、私たちは研修事業でその実践のサポートをしていると言うわけです。ロジック自体がシンプルで、当たり前の積み重ねだからこそ、問題解決へのアプローチとしては、国を越えて通用する可能性があると思っていて、今後日本だけではなく、中国に向けても情報配信や運用のサポートを広げていきたいと思う次第です。

私たちが掲げる「四方良しの世界を実現する」との理念は、自分たちだけが良ければ良いわけじゃない、との考え方がその根底にあります。職人と言う働き方、生き方に誇りを持てるような世界の実現に微力ながら貢献できれば幸いです。

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