自律社会に適応する3つの視点 #SINIC理論研究委員会
コロナ禍の際に的中するにも程がある!と話題になった未来予測、SINIC理論によると、2025年はこれまでの最適化社会から自律社会への移行の年になっています。
これまでの20年間で世界では3つの大きな革命が起こりました。
インターネット革命、クラウド革命、AI革命。
これらの革命は情報、知識、そして思考さえも民主化を果たし、あらゆるものが白日の元に晒される様になりました。
これまで磐石と思えた権威が多く失墜しました。大企業、大物芸能人や政治家、日本最大派閥、アメリカ覇権の崩壊とその例は枚挙にいとまがありません。
確かに、大きく最適化が進んだ20年だったと思います。
時代に適応する具体的な視点
SINIC理論を紐解くと、今年から始まる新しい時代に対してその変化に積極的に向き合わねばならないと感じます。それは、視点、視座を変えてパラダイム・シフトを自ら起こすことに他なりません。
私が主宰する私塾「継塾」では持続可能なビジネスモデルの研究と実践をテーマにグループコーチング形式の対話型の勉強会を行っています。
10年以上の長きに渡って積み重ねてきたこの勉強会の令和7年バージョンの初回では自律社会への移行に備える3つの視点を提唱しました。
「時代が変わったといっても、ある日突然、ガラッと世の中の価値観が変わるわけでもないし、よく分からないなー」と言われる方も多くおられるので、少しでも参考になればと以下にその内容をご紹介しておきます。
ビジネスモデルの変遷
マーケティングの時代は終わった。と私は2015年から新たな概念、哲学を求めてUXデザインの学校の門を叩きました。
その理由は、LTV(ライフタイム・バリュー:顧客生涯価値)を積み重ねコツコツと自社独自のマーケットを構築する(マーケティング)には、時代の変化が早く、しかも根底から人々の価値観や行動様式が変わる中、硬直的に今までの延長線上を突き進んでも未来はないと感じたからです。
UXデザイン(User experience design:顧客体験の問題解決)の世界で私が勝手に師匠と崇めていた浅野智先生が自己紹介で書かれていた「興味ある仕事」は、
" I want to make the game change a success"
この短い一言で、世の中が大きな時代の転換期にあること、テクノロジー、科学、社会がこれまでとは全く違うフェーズへと移行したことを強烈に示唆されました。
ゲームチェンジを成功させるとは具体的には一体何か?そんな問いを投げかけられたのは私にとっては大きな衝撃でした。
マーケティングの自社を中心に考える時代ではなくなった。人の幸せに寄与する新たな価値観を創造する、もしくは認知されているいないに拘らず、課題を解決するサービスや商品、事業をデザインしなければならないのだと痛烈に気付かされた瞬間でした。
そして、UXデザインを突き詰めた先に待っていたのが、2020年から私達が熱心に取り組んでいるCSVモデル(社会課題解決型事業)であり、クリティカル・ビジネス(社会運動と事業の融合)です。
そんな流れを汲んで、以下に新たな時代に必要な視点をまとめてみます。
1.マーケットを見渡せ
もちろん、ここで示しているマーケットは自社が現在取り組んでいる業界のことではありません。
総務省が発表した日本の人口動態統計はたった25年後に既存のマーケットは半減し、その25年後には消滅することを示しました。
あらゆる業界でマーケットが半分になれば、残るのは強い会社であり、一般的に潤沢な資金を持っている企業が残ります。街の本屋さんは消滅してAmazonが書籍流通を制覇するのと同じです。
では、中小零細と呼ばれる資本金の少ない、地域に根差す企業が自立するにはどうすればいいのか?
答えは新しい市場を見出すしかありません。
そして残念ながらそれは、マネタイズが難しい、参入障壁が高い、社会課題となって取り残された領域にしか残っていないのです。
冷静に未来の市場を見渡すと、誰も手を出さない課題の解決にこそ残された道があります。地域企業の経営者は今すぐにこの事実に向き合うべきです。
2.ユーザーを観ろ
これまでマーケティングの世界で、事業を刷新するとか新たな事業を開発する局面でまず取り沙汰されるのは自社のリソースは何か?、強みはどんなものか?、コラボレーションする先は?との自分軸の問いでした。
UXデザインの概念が世に広く知られるようになってからは、研究する対象を自社からユーザーに移して、ペルソナに沿ったユーザーの潜在的なニーズを観察調査してインサイトを見出すところから始めるのフレームワークが広まりました。
いち早くプロトタイピングを重ねてサービスデザインを育てながら構築する流れが大手企業のデザイナーでは一般的になっています。
地域企業にはこの思考がまだまだ浸透しているとは言い難い状況ですが、認識すべきはスモールビジネスに強みは存在しない。もし、強みがあるとすればユーザーとの特別な関係を構築できた時に発現する。との、スモールビジネスの鉄則です。
この不都合な事実をしっかりと見つめるべきです。目の前の人の苦しみこそ社会課題の入り口であり、そこに想いを寄せる近しい存在としての「在り方」こそが大手企業に存在しない強みになると知るべきです。目を向けるべきはユーザーという名の地域社会です。
3.生業を変えろ
冒頭に、自律社会への移行が始まったと書きました。
世の中に不要なもの、不適切なものが淘汰される最適化の時代を経て、人や事業所が権力や社会のニーズにコントロールされるのではなく、自律して自立する時代とは、存在意義が認められる者や企業が生き残り、活躍する時代ではないかと考えています。
存在意義を中心に考える、人口が激減し、マーケットが無くなる状況で、自社は本当に社会に必要な事業であるのか?代替されないか?と自問自答を繰り返せば、殆どの地域事業は社会からの要請で存続を求められないのではないかと思います。
未来から目を背け、現在だけを切り取ってなんとか売り上げを作ったところで大した意味はありません。
しかし、未来を切り開くと言っても自社が使えるリソースが急に増えたり、経営環境が良い方向に変わったりすることはありません。
表面的には同じ事業を行っていたとしても、全く違う価値と置き換えることが出来れば、競争原理を超えて、存在を許される可能性があります。
新たな価値提供を本質に集約すれば業界を超えて生業事態を変容することが出来るし、地域企業には今こそ、そのトランスフォーメーションが必要だと思うのです。
ちなみに、私の周りには生業を変えた。と言える事例が数多くあります。
誰も買わないドライヤー
先日の継塾では、3つの視点(近未来のマーケット、身近な隣人としてのユーザー、自社の提供する価値)を改めて見直した事例として、Panasonic社の超高級ドライヤーの事例をご紹介しました。
同社から新しく発売されたドライヤーは定価8万円を超える高級品です。
付加価値商品で高性能、このドライヤーを使うと髪の毛がツヤツヤになるとのプロモーションビデオを見せると、女性は皆さん欲しいと言われます。
しかし、価格を聞くと誰も手を出しません。
性能ばかりをガラパゴスばりに追い求めて、誰も買わない高い商品を開発してどうするんだ!となりそうですが、実はこの商品、ヒットしているとのこと。
それは、男性から女性へのプレゼントとして使われて、男女の関係をよくして幸せを生み出すとの家電とは違う価値がデザインがされているからです。
3つの視点で、量を追わない、求められるのはコミュニケーション、ギフトメーカーへの転換を進めたPanasonic社は家電メーカーから、男女のコミュニケーション・サポートの事業へと生業を変えつつあるようです。
PanasonicのHPのトップには豪華なラッピングが無料!とギフト屋さんの体に既に変わっています。
日本を代表する大企業でもこの調子。私達も、新たな視点、視座を持って生業を変える勢いで事業に向き合わねばなりません。
2025年が大きな転機です。
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CSV経営、クリティカルビジネスの研究と社会実装を行っています。
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