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チャンスは1回切り、なのか?
チャンス君には前髪しか毛が生えてなくて、行き過ぎた後に後ろから髪をつかもうと思ったら手を滑らせて掴み損ねる。チャンスは1回きりで、前のめりに掴みにいかなければものにすることができないとの有名な格言?です。片や、諦めたらそれでゲームオーバーと言われるように、粘り強く努力を積み重ねればいつか必ずチャンスを掴み取ることができるとの、名作スラムダンクの中の安西先生の格言もあります。相反するこの2つの考え方のどちらが正しいのかを考えてみます。
継続のみが力なり
ちなみに、私は学歴もなく、たいした才能も持ち合わせていないと若かりし頃思っており、自分の持つ可能性というか、強みは自分で決めたことを粘り強く継続するぐらいしかないと思っていました。誕生日が7月10日、納豆の日生まれと言うこともあり、粘りが身上とばかり、人一倍習慣を継続することに執着を持ち、それだけで人生を切り開いてきたと言っても過言でないと思っています。継続は力なり、と言われますが、私にすると継続のみが力なりと粘り、あきらめないことに意識を置いてきました。
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チャンス君が走り去る瞬間
そんな私にとって、チャンスが1回しかないという考え方は少し違和感があるし、若かりし頃に目の前にぶら下げられた良い話にチャンスとばかり飛びついたときは、だいたい後で後悔した覚えがあります。なので、チャンス君が前髪しか生えてない説には正直懐疑的でした。しかし、最近になって少し考え方が変わったように思います。それは、人がチャンスを逃すのを見る機会が少なからずあったからで、そのたびにチャンスくんが走り去っていくイメージが頭に浮かぼびもったいないなと感じるのです。
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井の中の蛙のリスク
私は本業である建築事業の他にもいくつかの団体や組織に所属しています。しかもそのほとんどで理事や世話人等の運営側に立って経営者向けの勉強会や新たな事業を生み出すプロジェクト、地域貢献のNPO法人や任意団体での環境保全の活動等も行っています。それらは全て本業と深い関わりの中で必要な活動だと思って主体的に参加しているのですが、この10年間で時代が大きな変遷を遂げる中、幅広い情報収集と人とのご縁を持てたからこそ何とか20年以上も事業を継続できているとの確信を持っています。井の中の蛙だったらとっくの昔に茹で上がって死んでいると思うのです。
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人は人でしか磨かれない
そんな様々な団体やプロジェクトの活動をする中で、知り合いの経営者さんにここに入会や所属して一緒に活動したらきっと大きなプラスになるだろうと感じてお誘いすることが少なからずあります。基本的に、相手にとって必要だと私が感じる方しかお誘いしませんが、しっかりと対話を重ねて趣旨説明をすると大概の人が納得して一緒に活動しようと言って下さいます。そして、その人達はほとんどのケースで私が思っていた以上の成果や成長を手にされています。人とのご縁が人生を変えるとか、人が人でしか磨かれないとか言われますが、まさしく新たな人とのつながりが大きな転機になるのを数多く見てきました。
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表面的なら知らない方がマシ
ただ稀に、しっかりと時間が取れず、詳細の説明もできないまま途中で席を立たれてしまうことがあります。そのようなケースではもちろん一緒に活動しましょうとの話にはならないのですが、残念なのは、薄っぺらく表面だけで理解したような気になってしまうと、二度と同じ説明を聞く事はないし、もし聞く機会があったとしても、この話知ってるし、と言う姿勢で説明を聞いたところで心が動く事はまずないと言う事実です。そんな時、チャンス君が一目散に走り去っていくイメージが私の頭の中に浮かぶのです。
一期一会
チャンスは一度きりだ、と何に対しても近視眼的に物事を見るようになると中長期的な計画を立てる考え方が身につかず、目先の利益ばかりを追い求めるようになってしまいがちです。今、目の前に現れたのはチャンスなのかフィッシングなのか、自分の価値観や世界観を経験則に照らし合わせてじっくりと考えることがもちろん必要です。ただ、人が自分のために大事な話をしてくれるのは一度きりしかなく、そのチャンスを腰を据えてしっかり受け止め、その上で判断することが非常に重要だと思うのです。人の話を軽く受け流す人には、薄っぺらい軽い話しかやってきません。忙しい毎日を送りながらも、人との対話の時間だけはじっくりと取るように心がける事は何よりも大事だと思うのです。一期一会との有名すぎる茶の湯のおもてなしの心の通り、人との関係性においてはやっぱりチャンスは1度きりしかないと思うのです。
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チャンスと粘りは表裏一体
ちなみに、茶の湯の心として有名な「一期一会」は私の座右の銘にしております。それは、茶の湯のお稽古に通っている先の先生宅でいつも季節の茶花、しかも花屋さんで売っていない日本の在来種の花が生けられているのを見て、どのようにして入手されているのかを聞いたところ、ご自宅の裏の花畑で年がら年中、花の手入れをしているとお教え頂いたことに由来します。一瞬の出会いを一生のお付き合いに出来るようにと心を尽くして客人をもてなすには、常日頃から不断のたゆまぬ努力が必要だと教えられました。表題の問いに対する答えでもありますが、実はチャンスは1回であるのと、次のチャンスをモノに出来る様に粘りを身上にして習慣を継続するのはセットだと私は思っています。結局、世の中はすべからず表裏一体なのですね。
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一期一会や知行合一、たらいの法則などの原理原則の概念を丁寧に紐解く建築実務者向けの実践研修を行っています。