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トレンド化している探求学習をもっと探求して見える世界

私は昨年、新しい学校教育を地域企業から生み出すプロジェクトを立ち上げました。マイスター高等学院なるWスクールで、地域企業が学校として子供達を受け入れ、現場で実務を教え、給与を支払いながら学生は高校卒業資格を取得できる仕組みです。その高校の教育カリキュラムの中心は、志を立てる人間力を高めるいわゆる道徳教育です。
日本の教育は戦後78年間、基本的に変わっていません。相変わらず、学歴偏重の社会に画一的な基準で優秀な成績を収める若者を送り出す機関として、中学校は少しでも良い高校に入れる授業を、高校は一流と言われる大学に合格できるように子供達を導きます。学校の目的は、良い学校に生徒を送り込むこと。学校の評価は一流大学、一流企業に何人合格者を出せたかになってしまったまま、全く変わる気配もありません。しかし、社会に出て、活躍する人材はテストの点数が優秀なのと完全にリンクすることはないのは誰しもが知るところ。
企業経営者にどのような若者に入社してもらいたいか?と問えば、コミュニケーション能力が高く、主体性があり、誠実でマナーを弁える人が欲しいと言われます。もちろん、学力があるに越したことはありませんが、それよりも所謂、人間性を重視する傾向が強く表れています。このような学校教育と社会ニーズとの乖離、齟齬を正そうとする動きが近年急激に活発化しています。探求教育とのワードを最近特に耳にするようになりました。

高等教育のグランドデザイン

学歴偏重の学校教育が社会的ニーズと整合しないことは今や常識になりつつあります。文部科学省が示した2040年を見据えた高等教育と社会の関係について、「世界が抱える課題に教育と研究を通じて,新たな社会・経済システム等の提案をしていくこと」と2040年に向けた高等教育のグランドデザインでまとめられています。以下の項目はその中でこれからの高等教育と社会との関係ですが、明らかに実社会と融合させながら、画一性から抜け出した多様な教育、多様な人材開発を目指しているのが伺えます。
要するに、これまでの学科カリキュラムの履修だけではなく、実社会の課題解決や価値創造にリアルに関わり合うプロジェクト型の学習を推進していこうとの意図が汲み取れます。

1.研究力の強化
多様で卓越した新しい「知」は,イノベーションの創出や科学技術の発展に大きく資するものであり,学術研究の成果を社会的・経済的価値の創造に結び付け,社会からのニーズに応えていくこと。
2.産業界との協力・連携
社会人などの多様な学生が相互に学び合うことを実現するためには,産業界と協力・連携し,雇用の在り方,働き方改革と高等教育が提供する学びのマッチングが必要不可欠であること。
3.地域との連携
各人が望む地域で,自らの価値観を大切にして生活していくことができる社会を実現すること。

新たな教育振興基本計画

現在の文科省のHPに掲載されている教育白書の中には、今後日本が目指すべき教育の在り方、方向性が明記されています。そこには初等、中等教育から大学、大学院までの専門的高度人材を生み出す高等教育までを包括的に書かれてあります。その中でも概要として挙げられている3つの項目は以下の通りです。

①グローバル化する社会の持続的な 発展に向けて学び続ける⼈材の育成
②誰⼀⼈取り残されず、全ての⼈の可能性を引き出す 共⽣社会の実現に向けた教育の推進
③地域や家庭で共に学び⽀え合う社会 の実現に向けた教育の推進

令和4年度文部科学白書_第1章より抜粋

この3項目のコンセプトは2040年以降の社会を⾒据えた持続可能な社会の創り⼿の育成であり、「Society5.0で活躍する、主体性、リーダーシップ、創造⼒、課題発⾒・解決⼒、 論理的思考⼒、表現⼒、チームワークなどを備えた⼈材の育成」を目的に掲げています。
要するに、これからの教育は一方通行の押し付け型、テストの点数での評価、基礎学力の均一化、暗記能力から離れて、地域や社会へ融合し、実社会:企業や機関で活躍するリーダーを育てる教育に舵を切っています。教育白書は共感型と言われる新しい資本主義への適応を意識している、これからの時代を見据えた、とても良い内容になっていると思います。

Society5.0:これまでの狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く、「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)」

内閣府の第5期科学技術基本計画

Society5.0で活躍する人材教育の実装

白書の内容はともかく、問題は教育現場での実装です。素晴らしい理念を掲げても、実践できなければ全くなんの意味もありません。上述の文科省の指針を受けて、兵庫県の中学校では非常に熱心にキャリア教育に取り組んでおり、トキメキ体験授業と称して専修学校への出張授業の依頼を激しく行っており、私達はマイスター高等学校の教師として今期20回以上、大工の技術、伝統工法に触れるワークショップを行うために中学校に授業に赴いています。
また、「トライやるウィーク」という中学生によるインターンシップ制度も行われており、昨年の秋口にマイスター高等学校 神戸校の運営母体である株式会社四方継にも5名の中学生が通ってきておりました。モノづくりの建築業と人と人をつなぐ、地域コミュニティー事業に触れながら、志を立てることの大切さを学び、自分たちで考えて通学時にゴミ拾いを、資源ゴミと一般ごみを分けて主体的に行っていたのはとても印象的でした。
地域の事業所と学生がコミュニケーションを取るキャリア教育が熱心に行われるようになっています。しかし、私としては若干の物足らなさというか、せっかくのキャリア教育の実効性に疑問を持っています。

探求学習のプレゼンテーションイベント

先日、兵庫県専修学校各種学校連合会主催の「KoKo KARA」というイベントに協賛企業として参加してきました。このイベントでは小学校から専門学校までの幅広い生徒が、探求学習や地域活動、地域企業とのコラボレーションした学びの成果や経過についての発表をしていました。
障害者の生徒の希望を聞いて一緒に野球をするプロジェクトや、地域を巻き込んで地域活性化に取り組み、世界の民族衣装を研究して美しさの定義を探求したり、また、街を丸ごと学びの場にするといったチャレンジングな内容もありました。しかも、単年での取り組みだけでなく、先輩から後輩へとその目的や意義を伝える継続的な学校の文化を醸成させていると言った発表もあり、文科省の教育指針が単なるお題目に終わることなく、各地で実践に落とし込めている例があるのを知って、少し安心することができました。
私が子供だった半世紀近く前とは流石に教育現場も子供達も変わっているのを痛感させられました。

本質的な探求学習へのアプローチ

この度のプレゼンテーションイベントに登壇していた学校と同じような授業がどこでも行われているとは思っていません。しかし、この流れは確実に大きくなって、一般的になっていくのだと感じました。それはとても良いことだと思うのですが、やっぱり、少し物足らなさを感じてしまいます。
それは、探求という言葉通りに深く広く物事を探り、本質を追い求めるには、もう少し、リアルな社会の課題や問題に向き合う必要があるのではないか、との疑問です。子供達がプロジェクトで取り組む中には、経済合理性、採算性が取れないから、問題として残り続けているものがあります。例えば、シャッター商店街や地方都市の空洞化、空き家問題など。その難しい問題に向き合うならば、既に取り組んでいる人たちの苦労や大変さを知った上で、持続可能なビジネスとして、経済合理性の中に引きずり込むアイデアやアクションを生み出すことが必要だと思うのです。そこまで行って、やっと本物のキャリア教育になるのではないかと思うのです。生徒も、それを推奨する学校、教師ももう少し、覚悟と決意を持って地域や社会の課題(人の苦しみや悲しみ)に向き合うことが出来れば、もっと違うレベルの教育ができるのではないかと思うのです。

本格的探求学習の普及活動

昨日、紹介された23歳の若者は、もっと本質的な探求学習を普及させるためのプラットフォームの構築を目指して起業されたとのことでした。京都大学を卒業して外資系のトップコンサルタント会社に就職し、華々しいキャリアをあっという間に投げ捨てて、社会を良くするには教育改革が不可欠だとの事実を認識して、もっと子供達が自由に、自分が興味を持てることを探せる環境を公教育に広げたいと熱心な活動を行っておられます。彼と話していて、日本の未来は捨てたもんじゃない、どころか光り輝く可能性に満ちているのではないかと強く感じました。今どきの若者の凄さを我々、年食った経営者は知るべきです。
ちなみに、私が高校の教育で行っているのは探求学習そのものです。職人の技術の探求を通して、論語や大学と言った四書を学び、人としての在り方を日々の実践を通して究める指導を行っています。生徒は、圧倒的に信頼される職業人になることを目指して、日々、老人に席を譲ったり、道のゴミを拾ったり、家ではお母さんの家事の手伝いを積み重ねて、明徳を明らかにする大学の道を歩んでいます。このような授業を行う高校を来年には50校に増やしたいと計画しています。
誰しもが時代の大きな変化に気づいているように、世の中は明らかに潮目が変わりました。新しい教育のムーブメントはすでに起こっていて、そこをさらに探求することで、日本の明るい未来は作られるのではないかと思うのです。

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人材不足業界でのリアルな探求学習の高校を展開しています。
繋がってください。

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