世界は見えるものと見えざるもので出来ている。#共感資本主義へのシフト
氷山の一角。という言い回しを良く耳にしますが、最近になって改めて目に見えている事象よりも目に見えていないモノ、状態や原因、因果や意図などの方が重要なのだと感じさせられることが多くあり、世の中は物質と理論だけでできていないのだとつくづく思います。そして、氷山の水中に隠れている部分にアプローチする方が水上の氷山をどうにかするには大事なのだと実感することしきりです。しかし、現代の社会通念や学校教育では精神論も道徳の時間もあまり重要視されておらず、決まりきった手法や、結果を導き出す方法論ばかりを学んでおり、一般常識と呼ばれるのはまるで見えざるものがなかったかのように扱われてるような気がしてなりません。
やり方の前にあり方ではなかったか?
ロジカルシンキングと呼ばれる論理思考全盛の今の時代、どのように問題を解決するかと言う「やり方」ばかりがもてはやされているように感じてなりません。経営の神様と言われるドラッカー博士は「事業の目的は顧客の創造である。」との至言を残されました。そして、その前の段階で経営者とは、組織とはどのようにあるべきか、とのあり方に関する考察を延々と繰り返されており、顧客の創造とはすなわち信頼関係の構築からスタートするべきだとの強い意図が感じられます。しかし、近年、資本主義社会の中ではマーケティングやマネジメントのやり方ばかりが一人歩きして、水面下に隠れている人としての倫理観や道徳心がおざなりにされてきました。挙句の果て、山口周さんの書籍に再定義された、マーケティングとは売り手都合で人々に新たな問題を生み出せる手法であり、イノベーションとは自分が作り出した問題を費用を受け取って解決する自作自演の狂言であるとまで言われるようになってしまいました。この現象は、目に見えざるものがないことになっているからこそ生まれているんだと思うのです。
表面的なコミニケーションに価値なし
心理学の大家であるアドラー博士は、「人間が持つあらゆる問題や課題は全て人間関係に由来する。」と断じられました。人間関係はコミニケーションによってしか変えることができません。その意味では、コミュニケーションこそがあらゆる問題解決のカギであると考えられますが、巷に溢れかえるのは、見た目が9割!との表面的な設えや、コミュニケーションはこうやったらうまくいく!的な方法論が大多数を占めています。要するに、目に見えるものにフォーカスするばかりで、見えざるもの=在り方や意図には留意されていないように感じてなりません。ただ、誰しもがぼんやりと知っているのは、腹の奥で全く違うことを考えながら、表面だけ取り繕ってにこやかな態度をとったところでそれは相手に伝わりますし、そんな上っ面のコミニケーションで信頼関係やラポールを築ける事はないと言うことです。日本人は特に曖昧さを受容する傾向があると言うこともあり、ちょっとした違和感を取り上げず、微妙な雰囲気を残したまま、薄っぺらい、何の意味も価値もない関係性を保ってしまっていると感じることが多くあります。特にビジネスの世界では意図を明確にしないコミニケーションは単なる時間の無駄だとつくづく思います。
見える化すべきは見えざるもの
近年のマネジメント理論の大きな流れの1つに「見える化」があります。これは、それまで見えてなかったものを見えるようにすると言う言葉に聞こえますが、実際のところは行動やそれにかかる所要時間、取り組み内容など、本来見えるものを計測して管理することを主眼としており、あくまでも物質世界の枠を広げていくだけの取り組みに過ぎません。あちらこちらにほころびが見え始め、行き詰まりを感じさせる新自由主義的資本主義経済の代名詞と言っても過言でないヒエラルキー型の社会構造、管理型組織の限界が囁かれ、持続可能な循環型のフラットな社会構造への転換が大きな方向性になりつつ現在、見える化するべきは物質的な見えるものではなく、意図や想い、理念や価値観などこれまであまり重要視されなかった心の中に押し込まれてきたものでは無いかと思うのです。
見えざるもので結ばれる世界
今日のカレーランチまかない付の設計部のミーティングに合わせて、わざわざ宍粟からプレゼンテーションに来てくれた三渡さんは、日本一小さなJIS認定製材所プロジェクトの説明で、素材(原木)を切り出すところから、製材して製品化、そして家が出来上がるまですべての過程で顔が見える流通をしたいと熱く語ってくださいました。新しく立ち上げる事業なので収益性の勘定もしっかりとされているとは思いますが、高いお金を払って買ってくれる先に売りたいのではなく、同じ想いを持つ仲間と一緒になって仕事がしたい、地域に自律循環型のビジネスモデルを構築したいのだ、皆さんもその仲間になりませんか?とスタッフに語りかけて下さいました。まさしく、意図を持って事業を継続してきた者同士だからこそ、違和感なくお互いを受け入れ、信頼関係を結べるのだとと強く感じました。
そもそも、私たち建築業はお客様の思いを形に転換する仕事。この世で大切なのは、やっぱり目に見える氷山の一鶴ではなく、水面下に潜む表面的には見えない想いや理念、心のあり方ではないかと思うのです。同じ思いを持った人達とコミュニティーを形成し、次世代を担う子供たちに胸を張って、より良い社会を残したいと思います。
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