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NEW STANDARD③ 〜天下布理のコミュニティ・デザイン〜

ソーシャル系ビジネス、社会性と経済性を両立させるCSVモデルを実践する経営者が全国から一堂に集う最先端のビジネスイベント、ソーシャル・シンポジュウムとナショナル・フォーラムの2daysが6.15、16に大阪で行われ、大盛況のうちに今年も幕を下ろしました。

毎年、回を積み重ねるごとに加速度を増すかのように、今年もとても素晴らしい熱い志が迸るイベントとなりました。その中でも強く印象に残った幾つかを備忘録がてら書いておこうと思います。

多数決は民主的意思決定ではない

2日目のナショナル・フォーラムではすっかり恒例の会員企業によるプレゼンテーションの時間がありました。昨年は実行委員長を私(民主活動家を名乗っている)が行っていた関係もあって、登壇するメンバーを全国から募り、地区予選的な予備選を勝ち抜いた人達を集めて大阪で決勝大会を行いました。
1000人の会員を代表するに値する熱く強い志を胸に持続可能なビジネスを組み立て、事業と同時に社会課題解決に果敢に挑戦するメンバーを投票によって多数決を基本として選出しました。

その結果、比較的新しく会に合流したメンバーが多く、リーダーや世話人といった主体的に経営実践研究会の運営、組織拡大に関わっている人が少なくなりました。
フレッシュな会員プレゼンになりましたし、新しいメンバーに多くの人の前で志を語るチャンスがあるのは素晴らしいと感じる反面、CSV経営を実装させ、良い会社になったその先に、自社だけではなく社会が良くなる、私達が本来目指している共通目的に進んで行くのか?共有価値創造への認識のレイヤーは合っているのか?等々、疑問を投げかける事にもなりました。
新しいチャレンジは常にリスクがつきまといますし、多数決は民主的なのか?時間短縮の為の荒っぽいツールなのか?と考えさせられました。

意図的な布陣のイベント

そんな経緯を経て、今年は理事会で厳選されたメンバーによる登壇となりました。基調講演、アドバイザーによるパネルディスカッションを含めた全体のオーダーはこちら。ご登壇頂いたアドバイザーは非常に豪華なメンバーで時代の最先端を牽引する方々によって大きな示唆をいただけました。
会員プレゼンのメンバーは社会課題の解決と事業を一体化、プロジェクトを社会実装に転化させておられるパワフルな方々で不肖私もその末席に名を連ねることになり、トリを務めさせてもらいました。意図を持って組み立てた布陣が成功だったか、そうでもなかったかはそれぞれ評価があるとも思いますが、少なくとも私は誰に見せても恥じることないフォーラムになったと自負しています。

National Forum 2024 in 大阪
【基調講演】
月夜野小僧村村長 小僧com株式会社
取締役会長 平松 庚三 氏
【会員プレゼンテーション】
アクセス・スタートアップ株式会社
代表取締役 石田 友洋 氏

株式会社まるさんかくしかく
代表取締役 福井 彩恵 氏

一級建築士事務所わびすき
代表 奥田 智恵子 氏

大矢伝動精機株式会社
代表取締役 大矢 顕 氏

一般社団法人職人起業塾
代表理事 高橋 剛志 氏


【パネルディスカッション】
アドバイザー
宮城大学名誉教授 一般社団法人人間力大学校校長
天明 茂 氏

最適化社会プロデューサー 元参議院議員
二乃湯 武史氏

名古屋大学客員教授 シェアリングシティ推進協議会代表
森戸 祐一 氏

株式会社あなたの幸せが私の幸せCHO兼CPO 社会福祉法人知心会理事長
栗原 志功 氏

New Standardを生み出す力

私が会員プレゼンテーションで会場に集まった数百人の人々に伝えたかったのは、時代の荒波を乗り越えて誰もが生きるに値する世界を実現する=当たり前のことが当たり前になるために必要だと思うこと。それはコミュニティー・デザインの力です。

志を立てて、万事の源となす。との吉田松陰先生の言葉には完全同意しますし、はみ出し者のクレイジーな熱い想いが世の中を変えるきっかけになると信じて自分自身も必死に行動しています。しかし、一人の力はあまりにも微力に過ぎるのも圧倒的な事実。私は長年、自分の無力さと世間の意識との蹉跌に打ちのめされ続けて来ました。
大工だった私が創業以来取り組んできたのは、職人の地位向上です。地域のインフラを守り、日本の産業の根幹となしている建設業の職人の地位があまりにも低過ぎると、自分自身が大工で働いている時にこれでは若者は誰もこの世界に足を踏み入れなくなると感じたからです。自分たちの暮らしをよくしたいとの想いも当然ありましたが、単に自分達だけが良くなれば良いのではなく、業界を変える必要があると考えて志を立てました。自社ではもちろん、職人達が安心して主体的に自分のやりたい仕事をできる環境を整えて来ましたし、そこで培ったキャリアパスや社会研修のスキームを外部公開して全国で職人の正規雇用、人材育成のサポートを行って来ました。
しかし、10年近く休みもなく全国を飛び回りましたが、たかだか300社ほどの事業所にしか届きませんでした。全く、世の中にインパクトを与えることはできませんでした。結局、私の活動は単なる自己満足だったのです。そして、問題の根本は世に蔓延った奴隷教育、奴隷思考だと気付き、絶望しかけていました。

2年前の志が社会に実装されていく奇跡

そんな私が一条の光を見出したのが、現在、世話人として精力的に関わっている経営実践研究会でした。この立ち上がって間もないコミュニティーには本気で事業を通じた社会課題解決を目指す経営者が集っており、会長の藤岡俊雄氏は人生を賭けて、この不条理に満ちた世界を誰しもが生きるに値する世界に変えようと真剣に考え、そのプロセスの青写真を構築されていました。それまで私が行って来た活動、事業、その根幹となる思想とあまりにも重なり、それを全国組織を作ることで実現されようとする姿に圧倒されて初めて参加した日に即入会、3年ほど経過した今は主要メンバーの一人として活動しています。

入会して間もない2年前にナショナル・フォーラムに登壇させて頂く機会を頂きました。その際に私が語ったのは、職人の地位向上、職人不足の解消とセットで学校に行かなかくなった子供達、学歴社会からこぼれ落ちた若者たちをモノづくりの企業が学校として引き受ける、本物のキャリア教育の学校を作りたい。それを全国に広めたいとのアイデアでした。

その登壇から2年が経過した結果は、昨年に一般社団法人マイスター育成協会を立ち上げ、マイスター高等学院をスタート、生徒はまだ2人ですが、受け入れ態勢が整った企業(学校)は14校にも上ります。今ではなんと70社以上の企業がメンバーになって、来年度には北海道から鹿児島まで広域に渡って学校をオープンさせる予定になっています。

コミュニティー・デザインの破壊力

たった一人の熱い想いから始まって、それが共感を呼ぶことで、セカンドリーダーシップと言われる積極的かつ主体的なフォロワーが生まれ、そこから社会を変えるムーブメントが起こる。
志を教えるキャリア教育の学校プロジェクトを通して、そんな貴重な経験を事業として行えていることは私にとってはちょっとした奇跡が起こったとしか思えない出来事です。
大きなヒントを下さった“戦う校長”池本誠知氏、学校運営のスキームや志教育のノウハウまでご教示下さった“教育革命家”佐々木喜一氏、自ら顧問をかって出て下さった“親分”岩本泰典氏等々、このプロジェクトは全ては私のアイデアなんかではなく、経営実践研究会で学ばせて頂いた内容のアウトプットでしかありません。そして、立ち上げたのも私ではなく同志です。この奇跡の根底にあるのは、藤岡会長が作り上げてきたコミュニティーであり、そのヒューマンインフラが整うと同時に私が志を掲げ、多くの仲間に共感してもらったプロジェクトが走り出しました。コミュニティー・デザインの圧倒的な破壊力を身を以て感じています。そして、このパタンランゲージを一人でも多くの人に行ってもらいたいと切に願います。

ダーウィンは有名な種の起源、進化論の中で、激しい外部環境の変化にさらされて生き残るのは、共感で繋がった共同体を構築した種であると看破しています。当たり前と言えば当たり前ですが、これまでの日本では個人主義に寄りすぎて助け合い、分かち合うことの大切さを見失って来たのではないかと思います。当たり前のことが当たり前に、当たり前と言えるそんな世の中をつくるには、志を同じくする同志を募り、新しい当たり前を世に訴えていくしかないと強く感じます。共に命を燃やす仲間を強く求めています。誰もが生きるに値する社会、一緒に創りませんか?

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