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弁証法的職人進化論

私は神戸の片田舎で無一文の裸一貫の大工から起業しました。創業時から一貫して、私たちがお客様に対してお約束してきたのは、誠実、確実、丁寧に工事を行うこと、そして工事の終わりがお付き合いの真のスタートで、末永いお付き合いを頂きながら家守りとしての責任を果たすことです。
その約束を守る為には現場で働く職人と高い目的意識を共有することが必要だと考え、社員職人の採用と育成、そして教育に長年取り組んできました。
同時に、創業の志として掲げてきたのは職人の社会的地位の向上です。他業種と比較しても遜色ない社会保障が付加された、安心して働ける環境を整えようと建築業界では非常に少ない職人の正規雇用、労働法の遵守を行ってきました。職人が将来に不安を抱くことなく安心して働ける状態にあってこそ、近視眼的なものの見方ではなく、長期的かつ本質的な価値提供を考えて現場でのモノづくりに励めると考えて、長年に渡り住み続ける住宅やお店等の工事の責任を果たすには、まず職人の労働環境の改善が必要だと考えて環境整備を行ってきました。

職人による自助の精神

モノづくりの担い手である職人を守る取り組みは、同時に守られるべき職人を育てることが必要です。職人が一般的な「職人の働き方」として認知されている決められた現場作業をこなすだけでは、現在、殆どの職人に付加されていない社会保険や厚生年金などの福利厚生の費用を拠出するのさえ困難なのが現実です。私自身が職人だった経緯から、職人自身が自助の精神を持って、ただ単に作業するだけではなく、明確な目的意識を持ち、現場作業+@の顧客満足や地域貢献などの付加価値を生み出すことに注力すれば大きな成果を生み出せるのを経験から知っており、またそれは誰にでも再現できると確信していました。職人に知的労働者としての自覚を持ってもらう様に社内で職人の先のキャリアパスを構築し、成長のモチベーションをセットする為に研修を繰り返したのが、現在、社外向け研修として事業化、全国展開している現場実務者向けのビジネススクール職人起業塾です。

職人不足と不登校児童激増の課題解決

お客様との約束を守れる体制づくりと職人の社会的地位向上、この二つの命題に対する私が出した答えは社会から守られるべき価値を生み出せる職人の育成と、社会から存在意義を認められる事業モデルの構築です。これらの命題及び、コロナ禍で激増した学校から離れてしまい学歴社会からこぼれ落ちた子供達へのへの救済を併せて社会課題の解決策として今年の4月に職人育成の通信制高校、マイスター高等学院を設立致しました。同じ志を持つ経営者仲間と共にマイスター育成協会を立ち上げ、早々に兵庫、大阪、京都、奈良と近畿一円で12社の受け入れ企業と共に立ち上げる運びとなり、既に来年度、全国に広める準備を進めています。
創業からこれまでの23年間の職人育成の取り組みを俯瞰してみると、明らかに世間というか、建築業界が変わったと強く感じます。私たちが職人の正規雇用に踏み切った当時、それに理解を示す人は誰一人いなかったどころか、コストの高い職人を人員の在庫として抱えるなんてバカか、と言われました。

職人育成の弁証法

ドイツの哲学者ヘーゲルは世界の進化の過程を弁証法で表しました。人類は螺旋的成長を繰り返すことで同じことが繰り返されているようでも進化発展してきたとの理論です。
現在、マイスター高等学院が全国に展開、拡大し始めているのがまさに弁証法的な進化であり、人口減少、大量の空き家問題が社会課題化となって衰退産業とも言われている私たち建築業界もその新たな時代に適応した進化を遂げつつあるのではないかと気が付きました。
現在、50代半ばの私たちの世代までは一人前の職人になれば(不安定ながらも)それなりに裕福に暮らせました。その前の世代は所謂、徒弟制度が職人業界にはスタンダードとして存在しており、年端のいかない内弟子が小遣い程度の低い給与で住み込みで働きながら技術を教わり、成長と共に現場の取り仕切りを任される様になった後、独立するシステムでした。現在、私たちが高校生から若者を受け入れ、社会人教育をしながらOJTで技術を伝え始めたのは内弟子に近い制度と言えるかも知れません。

均質化と個性化の螺旋的発展

私が建築の世界に飛び込んだ30年〜40年ほど前から大手ハウスメーカーの台頭やリフォーム産業が生まれてこの業界は受注構造が変わりました。広告やセールスが出来ない職人は顧客から直接仕事を請け負うことができなくなり、下請け業種になってしまいました。元請けが販売会社になり職人は外注する下請けになってしまい、個人事業主の職人には弟子を養う力を失い、内製化で職人育成を行う機関自体が潰えてしまいました。これが現在、業界だけでなく、社会全体の課題とも言われる圧倒的な職人不足に陥った原因です。
この課題解決のために創立したマイスター高等学院は技術の習得だけではなく、志を持つことや、将来のキャリアを見定めて資格取得を強く推奨しています。徒弟制度からレイヤーを一段登ってキャリアパスを備えた、少年を受け入れ知的労働者として付加価値を創出する人材を育てる教育機関となりました。均質化と個性化の螺旋的発展を遂げつつあります。
ヘーゲルは進化の本質は多様化と言いましたが、まさにそれぞれの個性に合わせて多様な働き方が出来る職人育成のスキームが建築業界に広がりつつあります。

新しい職人育成スキームの全国展開

9月1日に新大阪でマイスター高等学院を本格的に全国に展開するキックオフのイベントを行います。これまでになかった新しいキャリア教育の機関としての教育方針や内容では個性分析や教育コーチング、web学習の導入等々、最新の情報を集約して網羅的な学習を提供しているカリキュラムも体感いただけます。そして単なる職人育成だけに留まらず、日本にキャリア教育を根付かせ、技術を持った全ての人が教育者、教師となってセカンドキャリアを標榜できる未来へのビジョンを示す会合になっております。ご興味がある方は高橋までご連絡ください。螺旋的職人進化論をリアルに感じて頂けます。

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職人育成を通して日本を真の民主化に進ませる活動を行っています。





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