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誰もが才能を持っていることの証左

私が主宰している、建築実務者向けの現場価値創造の実践研修「職人起業塾」の第20期が大阪にて開講しました。今回も20代〜30代の若者が集まり、半年間の学びと実践の時間を共に過ごします。この研修事業を行うにあたり、私が教育理念として掲げているのはタレンティズム(才能主義)であり、孟子が惻隠の情として記した様に、王陽明が致良知との概念で示した通り、人は誰しも生まれながらに良きことを知っており、その心に従うことが出来れば多くの人から信頼を集め、大きな影響力を持つことが出来るとの考え方です。

成果は状態に由来する原則

平成時代からこれまで、20期もの回を重ねてきて、研修の内容も少しずつ変化をしています。変わっていないのは時代は大きな変化の時を迎えており、今までの延長線上にこれからはない、という時代背景に対する厳しい認識と、不安定で不透明、複雑、曖昧な時代にこそ原理原則の力が見直させるし、最新の情報を掴んだ上で、仮説の積み重ねではない、確実に成果に結びつく選択と行動を行うべきとの原則論です。特に、この研修のメインテーマといっても過言でない、「あらゆる成果は状態に由来する。」との状態管理思考は第一講のオリエンテーションから最終講まで耳にタコができるくらい毎回言い続け、その思考に沿った実践を塾生にチャレンジしてもらっています。

人材育成・ブランディング一体論

長年、建築畑を歩いてきた私は、殆どの職人達がそうであるように徹底した現場主義者です。建築事業の結果、評価は現場にしかありません。短期間の収益性ではなく、長期的な視点で経営を見ると、現場で評価されない事業所は確実に排他され、市場から消え去ります。今の時代は現場で良いモノづくりをしていれば自然に仕事が途切れることなく舞い込むといった単純な構造ではありませんが、それでも基本的な現場力が無ければどんなブランディングもマーケティングも短期的で表面だけのプロモーションに終わってしまします。現場主義の観点からすると、現場人材の育成、教育はブランディング・マーケティングと一元化されるべきだとなります。

昔のスタンダードは今の非常識

そんな現場主義でのマーケティングと人材育成一体論で私は実際に株式会社四方継でビジネスモデル構築をしてきました。15年ほど前から一切の宣伝広告や販売のプロモーションを行わずに経営を続けています。それも全てはご縁を頂いた方々からのリピートやご紹介を頂き続けているからで、ひとえに現場で評価を受けてくれるスタッフたちのおかげです。社員の大工と設計士が顧客に寄り添い、現場で顧客が求める暮らしを実現すべく、努力を惜しまず向き合ってくれた結果だと思っています。そして、このようなモデルは実は珍しいものではなく、昔の工務店では当たり前に誰もが行っていたことです。

ストロータワーチャレンジ

効率化は人を幸せにしない

日本ではバブルの崩壊後、デフレスパイラルと言われる価格が下がり続ける構造が続きました。そんな時代の流れと共に、建設業界でも出来るだけ筋肉質な効率のいい経営を目指すべきとの風潮になりました。自社で職人を抱える、何もできない素人の見習いを雇うなどは愚の骨頂で、私のような職人の内製化にこだわる者は経営感覚のないダメ経営者だと揶揄されました。信頼関係に結ばれた顧客が集まる未来の理想のビジネスモデルを目指す現場主義ではなく、目先の収益、今期の決算、以下にリスクを減らすかが経営のスタンダードになってしまったのです。その結果、圧倒的に職人を正社員として雇用する事業者は減少を続け、今では比率から見ればほぼゼロといっても過言でない状況です。効率化では人は幸せにならないのを知っている人は多いはずなのに、効率化を求めた結果、建設業界は圧倒的な人手不足に陥り、危機的状況になってしまいました。

才能を持っていることの証左

職人育成の大切さを建築業界の経営者に聞くと100人中99人が必要だと答えられます。しかし、殆どの人は事業でそこに取り組もうとしないのには幾つかの共通の理由が存在します。その一つが冒頭に私たちが掲げているタレンティズム(才能主義)に対して実感が持てず、単なる人的コストを抱え込むことになるではと怯えているのだと私は考えています。もしくは、よしんば才能があるとしても自分たちにはそれを育成し開花させることができないとの諦めです。
今回の研修のスタートに誰もが才能を持っていることの証左を共有するためにストロータワーのワークショップを行いました。小グループに分かれ、ただ単に、ストロー、セロテープ、ハサミだけを使ってタワーを作るワークで、高いことのみが評価の対象なので形や見た目はどうでもいいと伝えてワークに取り掛かってもらいました。

作戦会議中

既に最適解を持っている

そのワークを終えた後、反省点やうまくいったところを共有して、今後、チームでプロジェクトを行う際に大事なことは何か?を塾生達に問いかけました。そこに出てきたのはチームビルディングに必要なコミュニケーションや計画と実行と確認のサイクル、意見を出し合う際の心掛けやあり方、幅広い情報収集等々、私が口を挟む隙間もないほど、様々な角度から多様な意見が集積しました。「これらは君たちが持っているパフォーマンスである、誰に何を教わらなくてももう既に完璧なモノづくりを行える知識を君たちは持っている。」と伝えましたが、これがタレンティズム(才能主義)的アプローチです。本当は、いちいち細かなことを教えなくても若者たちは結果を残せる様にするにはどうするべきかを凡そ知っているのです。

中心にあるのは愛情と思いやり

まだ知らない自分自身の可能性を知る

ただ、知っているのと出来るのは全く違います。また、一度出来た、とずっと出来ているのとは天と地との開きがあります。私たちの教育はこの知っている→出来る→出来ているのハードルを超える手伝いをすることで、そのための伴走型の実践研修を半年の期間をかけて行っています。
次回の研修では記憶術として有名なアクティブ・ブレインセミナーの講座が組み込まれており、1日にして160個もの単語を全員が記憶してしまうという、絶対に出来ないと思っていたことが出来る様になり、自分たちの才能に改めて気がつく機会を提供します。初日にモノづくりの最適解を出した半年後の彼らの成長が今から楽しみでなりません。誰もが持っているタレント性を開花して、大きな影響力を発揮してくれるようになると思っています。

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職人育成の高校も開講します!
ご興味がある方は是非繋がってください!

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