行けば地球が良くなる旅 in Philippines③ ボホール島チャレンジと旅で得たインサイトとパラダイム
フィリピンの島々を巡る6日間の旅から帰国してからも講演や式典に参加やらと出張が続き、なかなか自宅に戻って落ち着けるタイミングも無いままですが、国内の長距離移動の合間を縫って旅のレポート的な記事の続きを書いています。
旅することで世界の課題を知り、視野を広げ視座を高め、ほんの少しでも社会の解決に取り組む意欲を湧かせる。そして、何かに気づき、出来れば何かしら課題解決のためのアクションを起こす。そんな行けば少し地球が良くなる旅を企画するNPO法人タビスキ。私はその法人の立ち上げ前から相談を受けており、大いにその理念に共感して、企画されたツアーには基本的に参加することにしています。
今回のフィリピンへの旅の趣旨等はこちら。
井戸掘りテイク2
今回の旅のメインアクティビティーはセブ島から船で1時間弱離れた離島スラムの水も電気もないパンダノンで水脈調査を行い、人力で掘れる深さの浅井戸を掘ることでした。↑の記事に書いているとおり、なんとか真水の採取をする事が出来て、大成功とまでは行きませんが、それでも島民に喜んでもらえ、自分達もフィリピンまで行った甲斐があったと喜んだ翌日は場所をボホール島に移してのセカンドチャレンジでした。
ボホール島はジャングルに覆われた自然溢れる島で、ホテルやロッジなどの観光施設も有り、セブ等ほど栄えてはいませんでしたが、離島スラムと言われるパンダノンに比べると随分と豊かに見えました。街の中心部に大きな川が流れており、水は豊富にあるように思いましたが、ジャングルを少し奥まで行くとすぐに給水のインフラは途絶えていました。そんなボホール島にスモーキーマウンテンや離島スラム出身の若者達の働く場を作れるように事業を興したいと、この度の旅をアテンドしてくれた国際協力NPOゴーシェアのJeffとセイコさんが少し奥まった場所に広大な土地を購入して、観光や宿泊施設、伝統工芸などの手工業やパンダノンでは出来ない農業の拠点となるエコビレッジを作ると奮闘されています。
そこには既に井戸がありましたが、一つは枯れており、もう一つの新しい井戸で今の暮らしはなんとか賄えているが、これから施設を拡大するには全く水量が足らないとのことでした。その課題を解決するべく、パンダノンで小さな成果を挙げた私達が意気揚々と乗り込んだという訳です。
まず行うべきは現状把握
前日のパンダノンでは島に入った途端に井戸を掘りたい場所を指定され、表層の石を取り除くまでの間、近くの砂浜でも試掘してみましたが、岩盤に阻まれ、すぐに諦めてとにかくその希望に沿った場所をひたすら掘るだけでした。
今回のボホールでは既に井戸を使っている状況だったので、確実に水脈があるのは分かっていただけに現況の把握にしっかりと時間をとりました。
西田式としてその名を知られる、浅い水脈から人力で掘った井戸で水を汲み上げる専門家の西田さんによる念入りな調査では、まず枯れていると言われた井戸に水があることの確認から初めて、現地の人の思い込みや認識不足、ちょっとした技術的なエラーを解消することで、枯れていると思っていた井戸から水が確保出来る可能性があるとの見解を示されました。井戸掘りに関してほぼ素人と言っても過言では無い私にとっては浅井戸の構造を理解する非常に勉強になる機会でした。
これまで日本全国各地で単管パイプを人力で打ち込み、7m程度の浅い深度の水脈を見つけ出しては井戸を設置してこられた西田さんは、元々、トンネルを掘る技師で、数多くのトンネル工事に携わる経験から浅いところに水脈があることを発見し、西田式として誰もが手軽に地下水脈を利用できるようにと全国で活躍されておられます。海外、しかも高い山もない小さな離島でのチャレンジは初めてで、未知の世界だと言われていましたが、長年かけて得られた圧倒的な経験値は世界中のどんな場所でも通用するのだと感じました。
現場主義者の執念
ボホール島での水脈探しは結局、新しく井戸を掘ってみた場所では岩盤に阻まれ、深度を確保できなくて断念。乾季に枯れてしまって使えなくなったと言っていた古い井戸は35m程の深さで掘られており、私達が行った時には地上から5mまで水が溜まっていました。その水をポンプで汲み出しては水位が戻る時間を測って現状では毎分3リットル程度、水が湧くことを確認して、改めて水量に応じたポンプを設置して再利用することを提案、乾季でどの程度水が涸れるかをもう一度検証してもらうことになりました。
2日間かけて涸れた井戸を調査するにあたって、現地の井戸掘りの業者さんの家に行って使っているポンプの構造や集水パイプの現物、また井戸を掘る際のウインチや掘削用ハンマーを見せて貰ったりと、細かな技術レベルの検証も西田さんが粘り強く行いながら持論を展開して現地の業者さんにアドバイスを行っておられました。とにかく、井戸から水が汲めない原因をあらゆる角度から網羅的に検証し、せっかく深くまで掘った井戸をなんとか使えるように復活させるべく限られた時間内で出来る限りのことをやり切る姿勢を示されました。執念と言っても過言でないその姿に現場主義の在り方を改めて学ばせて頂きました。
魚では無く釣り方を教える価値と障壁
海外の発展途上国での活動に限らず、あらゆる支援活動は短絡的に魚を与えるのでは無く魚の釣り方を伝えることこそ重要だと言われます。そんなことは分かっていても、常に求められるのは目先の成果です。ウンチクだけ並べ立てて帰って来たら文句しか言われないし、支援の意味は無いに等しい。やって見せて成果を示すことが絶対的に求められます。しかも言葉が通じない、関係性も出来ていない相手に対して、ダメ出しの意味を内包するアドバイスを行うのはなかなか高いハードルが存在し、そこは避けて通ってしまいがち。
しかし、本人曰く現場叩き上げの現場技術者の西田さんは、自ら行動し、ウンチクも垂れ、継続した活動が出来る様に道具一式をプレゼントし、事前も事後もオンラインで繋がって指導を行う徹底ぶりでした。間近で見ていて支援を行う人はかくあるべきだと心から感心することしきりでした。その本質を鋭く突く感性と細かなディティールも見逃さない注意深さ、そして蛇の様な執念深さには大いに学ぶところがありました。次回は大工的な支援をしようと考えているだけに本当に有難い機会を得られました。
確かに世界が良くなったと感じる旅
今回の「行くだけで世界が良くなる」NPOタビスキのボランタリーツアーでは前回のインドネシアにも増して深い学びを得る事ができました。
今回、私が気づいたインサイトは、「行くだけで世界が良くなる旅」とのコンセプトの意図は、もちろん現地の課題に対して手を差し伸べる事もありますが、旅を通じて知らなかったことを知り、問わなかったことを問うようになり、できなかったことを出来るようになる。確実に旅に参加した人が成長し、意識を変え、行動する様になることで確実に影響力を増すことが出来るのが少しかも知れませんが確実に世界を良くするのだという事です。
このレポートの最初に人の成長や人生の変容に大きな影響を及ぼすのは「人と旅とご縁」であると書きましたが、まさにその機会を創出する場であるのを漸く理解しました。旅に行く人が増えれば増えるほど世界は確実に良くなるのです。
スタディーツアーで見つけたインサイト
インサイトを見つけた!というのは大きなチャンスの種を拾ったことに他なりません、旅を通して人が大きな成長を遂げる事を体感、理解出来たのは、教育事業に携わっている私としては非常に大きな気づきであり、それは私達の仕事の本質が人を成長に導くことに他ならないからです。
特に近年、行き過ぎた資本主義の弊害が顕在化、格差と分断が極まりつつある時代だと言われています。これまでの社会システムの転換が声高に叫ばれる様になりました。複雑に絡み合った世の中の課題を解きほぐし、根本的な解決を持続性を担保して行うには経済性と事業性が必要です。いわゆるCSV経営(社会課題解決型モデル)へのシフトをありとあらゆる事業所が求められつつあるのだと感じています。当然、企業に求められる人の資質にもそれは色濃く反映されるようになります。世の中の課題を解決したいとの高い志を持った若者が、パーパス経営を目指す事業所には必要とされます。
そもそも、高い志を持った若者は国の宝です。そんな若者を育成するのに、今回のようなスタディーツアーを活用することで、座学で教えるのとはレベルの違う大きな学びや気づきを与えることができると確信しました。圧倒的な貧困、水を飲むことさえままならない不便が残り、人の苦しみが蔓延している国や地域でこそ、人としての在り方を深く伝えることが出来る可能性を感じました。
旅で得たオレのパラダイムシフト
世界中の課題が集約されたようなスモーキーマウンテンや、水の電気もない。離島スラムへの支援を通して、学生や若い技術者に伝えられる事は計り知れないと感じました。ご縁を頂いたた国際協力NPO法人ゴーシェアのJeffとSeikoさんへの継続的な支援を織り交ぜてつつ、私たちが運営する教育機関やコミュニティーでも、タビスキさんと協業してスタディーボランティアツアーの企画を考えてみたいと思います。行くだけで世界が良くなる旅はそのツアーの期間、アクティビティーの内容だけに止まらず、人が生きるに値する世界へと変容させるための大きな啓蒙になる可能性があります。実際に足を運び、自分の目で見て、肌で感じてしか得られない感覚が確実にあるし、現場主義の本質性を深く理解する絶好の機会になり得ます。
あと、もう一つ私がハッとさせられたのはスラムの子供達の明るい笑顔と、私たちを迎えてくれた際の敵意のかけたらも無い、親切で、楽しませてくれようとする意図です。子供達のおもてなしを受けて私達は幸せな気分を味わせてもらいましたし、その瞬間、彼ら彼女らも決して不幸ではなく、楽しく、幸せな時間を過ごしてくれていたように感じました。
貧困の問題は経済的な格差であり、それは経済でしか解決できないのかもしれませんが、人の幸せがそれによって得られるのかはまた別の問題なのだと強く感じました。誰も取り残さない世界とは、経済的成長や発展のみを指しているのではなく、違う視点、指標を持って考えなければならないのだと改めて感じた次第です。私はフィリピンの子供達に、自分が生きてきた場所と全く違う環境、価値観に触れることの大切さを一番教えられたのかも知れません。とにかく、素晴らしい体験を得られましたし、これを次の行動にアウトプットすることで経験に昇華させなければと思いました。
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タビスキ、奥田さん今回もありがとうございました。楽しかったです。
ゴーシェアのJeff、Seikoさん、熱い志、感じました。引き続きよろしくお願いします。
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・ゴーシェア インスタ
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人類の幻想と言われている民主主義を実現してみたいと考えて、建築、教育、地域コミュニティでの活動しています。
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