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フレイル状態を呈した高齢者の術前リハは有効か?
抄読文献
McIsaac DI, Hladkowicz E, et al.
Home-based prehabilitation with exercise to improve postoperative recovery for older adults with frailty having cancer surgery: the PREHAB randomised clinical trial.
Br J Anaesth. 2022 Jul;129(1):41-48.
PMID: 35589429. PubMed. DOI: 10.1016/j.bja.2022.04.006.
ーがん手術を受ける高齢の虚弱患者における術後の機能回復を改善するための自宅での運動によるプレリハビリテーションの効果:PREHABランダム化臨床試験ー
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要旨
【背景】
フレイルは、予備能力の減少による脆弱性の状態です。プレハビリテーションは予備能力を増加させ、術後の結果を改善する可能性があります。私たちの目的は、がん手術を受けるフレイル高齢成人において、自宅でのプレハビリテーションが術後の機能回復を改善するかどうかを判断することでした。
【方法】
この二重盲検ランダム化試験は、選択的ながん手術を受ける60歳以上の人々で、登録から手術まで3週間以上ある人を対象にしました。遠隔サポートによる自宅での運動プレハビリテーションプログラムと栄養指導への参加は、標準的なケアと年齢に適した活動と栄養に関する書面による助言と比較されました。主要な成果は、最初の術後クリニック訪問時の6分間歩行テスト(6MWT)距離でした。副次的な成果には、身体的パフォーマンス、生活の質、障害、滞在期間、非自宅退院、および30日再入院が含まれます。
【結果】
評価された543人の患者のうち、254人が適格であり、204人(各アーム102人)が無作為化されました。手術を受けた182人(介入94人、対照88人)が分析されました。平均年齢は74歳で、57%が女性でした。参加の平均期間は5週間、平均遵守率は61%(範囲0%〜100%)でした。フォローアップ時の6MWTでの有意な差は見られませんでした(+14m、95%信頼区間−26〜55m、P=0.486)、また副次的な成果についても同様でした。遵守率が80%以上であると事前に定義された分析は、6MWT距離、合併症の数、および障害の改善を支持しました。
【結論】
自宅でのプレハビリテーションプログラムは、がん手術を受けるフレイル高齢成人の術後回復やその他の成果を有意に改善しませんでした。プログラムへの遵守がプレハビリテーションの効果の主要な媒介者である可能性があります。
要点
本研究はフレイル高齢者とがん手術前リハビリテーションをテーマとしている。
本研究での手術前(プレ)リハビリテーションは運動と栄養プログラムから成り立つ。
その中でも運動プログラムは在宅でのセルフエクササイズを中心としたものであった。
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RCTにて実施され、結果としてプレリハ群と標準群では差が見られなかった。
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しかし、セルフエクササイズとしてのリハプログラムはきちんと実施しているかという問題が生じる。
本研究ではプログラムの実施状況は研究者が電話で確認しながら、ログブックを活用して促している。
それでもプロトコルを80%以上完遂できたものは、60%以下ということになっている。
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そこで、プロトコルを80%以上完遂した対象者のみプレリハ群として解析した結果、術後6分間歩行距離は標準群に比べて有意に増大していた。
また、重篤な合併症の発症率も低下していた。
調査対象に対して、限定して解析することは選択バイアスに関わってくるため、推奨はされないが、一つの結果として知っておいてもいいだろう。
本研究では、先行研究の結果もふまえて、この結果をポジティブに解釈し、プレリハビリテーションは重要であることを示している。
どのように活用するか
本研究では対象を高齢かつフレイル状態にあるものとしている。
高齢かつフレイルで手術を行うとなると、手術侵襲を始め、術後の衰弱によりさらなる状態の低下を招く。
それに対して術前より、運動及び栄養を付加し、対処しておこうということは当然かもしれない。
しかし、本研究でも重要な争点となるのは、術前プログラムとしてのセルフエクササイズの完遂率になった。
本邦でも特に健康運動教室などで、エクササイズをどれだけ実施しているか管理することは重要だとされているが、この状態においては特に影響するだろう。
高齢者であるだけで、セルフエクササイズの実施は難しくなるのに加え、フレイルであるということで、もともと活動の習慣が低いことが考えられる。
その状態の患者に対して、どれだけ運動を習慣化していくか、それが重要な点になるだろう。
本プログラムは参考として、トレーニングプログラム構築の一助として扱える可能性はある。
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