【52Hzのクジラ】 海に響く、孤独と希望の音を辿って #妄想ショートショート
「今年もアイツが出たよ」
米 海洋研究所の男が嘆いた。
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ボストンの港にて
アイツとは、その奇妙な特徴から、研究所の人間が「52」と呼んでいるクジラのことだ。正確にはクジラと断定できるわけではないのだが、その音紋(振動で発せられる独特の音)はクジラそのものであり、恐らくクジラの鳴き声なのだろうと判断していた。しかし、その声が初めて聴取された1989年以降、毎年のようにさまざまな場所で検出されてきたこの音に、疑問を持つ人間は