食育の昔と今とこれから【その1】
食育の昔と今
食育基本法がスタートしてから16年が経過しました。
記憶している人も多いと思いますが、食育基本法がスタートしてからの数年間は、食育がブームのようになっていました。
たとえば、
食育の民間団体が数多く立ち上がりました。
あちこちで民間の食育講座が開かれました。
食育の先生を名乗る人が次々に登場しました。
多くの自治体で食育担当部署が置かれました。
その後、食育のブームは落ち着きます。
食育講座が開催される頻度は減りましたし、食育の民間団体が新規に誕生することも少なくなっています。
とはいえ、食育は国策でもあるので、「まったく火が消えてしまう」といったことにはなっていません。
教育現場ではいまも食育が行われているし、民間の食育講座もときどき開かれています。
食育の民間団体も、ブーム後に活動を止めたところもありますが、元気に活動を続けているところもあります。
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食育基本法から16年たち、あらためて見回してみると、以下のような変化があったように思います。
食育という言葉が浸透しました(食育を知らない人は大幅に減少)
大人を対象とする食育活動が増えました
食育と聞くと、子供への取り組みと考えがちです。
じっさい、食育がブームのころ、新たに立ち上がった民間の食育団体や全国各地で開かれた食育講座は、ほとんどが子供を対象とするものでした。
おそらく子供を対象とするほうが、企画しやすかったのでしょう。
ところがそのために、もともと子供を対象とすることの多い政府や自治体の食育活動との違いが、なかなか出せませんでした。
食育ブームが落ち着いた後、子供向けの食育講座などはやや供給過剰になってしまったようです。
そうした経緯もあり、民間の食育活動はだんだんと大人を対象とするほうにシフトしはじめています。
食は生涯にわたって続く生きる基本となる営みなので、食育は大人にも必要な考え方といえます。
食育のこれから
食育がこれからどのように発展するのか、将来を予測するのは簡単ではありません。
食育総研では、以下のような変化があるかもしれないと考えています。
分業が進むかもしれない
ここでいう分業とは、食育が、
「子供を対象とする食育」
「大人を対象とする食育」
に分けられることを意味します。
おそらく、政府や自治体など公共的な食育活動は、ひきつづき子供を対象とするでしょう。
したがって民間の食育活動は、(違いを出すためにも)大人を対象とせざるをえません。
…といった役割分担のようなものができあがるかもしれません。
地球環境やSDGsを意識した食育が好まれるかもしれない
現在のところ、食育の目的の第1は「健康のため」とされています。
しかしたとえば、
「健康によい栄養成分の1つとされるDHAやEPAなどのオメガ3脂肪酸が魚に多く含まれているからといって、漁業資源の危機が問題視されている中、魚をほしいだけ食べてよいの?」
といったことをこれからは真剣に考える必要があるでしょう。
こうした課題が食育のメインテーマになるかもしれません。
目的を絞った食育が求められるかもしれない
「ダイエット目的の食育」は以前から存在しています。
入院患者が食べる「病院食」は、病気からの回復を目的としています。
最近ではプロのスポーツ選手やオリンピックのアスリートに専属の栄養指導者がつくことが珍しくありませんが、競技の性質により「筋肉をつける」「持久力をつける」など目的が異なるため、指導内容も異なってくるようです。
このように
「ダイエットのため」
「病気からの回復のため」
「筋肉をつけるため」
「持久力をつけるため」
といった目的別に、食育が設定されるかもしれません。
目的はほかにも
「脳のはたらきを高める食育」
「認知症予防の食育」
「妊活のための食育」※
「睡眠のための食育」
といったものが考えられます。