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【番外地】たまには真面目に(?)特許と実用新案の違いをわかりやすく解説

このたびは、本サイトをご訪問していただき、まことにありがとうございます。

こんにちは。私は、食品・化学・バイオ・農業分野において、特許をはじめとする知的財産に関する仕事に携わっております、清原 筆養父(きよはらの ふでやぶ)と申します。

いつもこのサイトでは、食品メーカーの元研究員で、一級知的財産管理技能士(特許専門業務)である私・清原 筆養父が、
 ・食品関連企業以外の企業
 ・一般にあまり知られていない企業
 ・大学や公的研究機関
による食品関連の最新の特許を、自身のセンスを頼りに、独自にピックアップして、ご紹介しています

ですが、今回は、ちょっとした訳がありまして、特許と実用新案との違いを簡単に解説したいと思います。唐突ですか? まあまあ、そう言わずに、しばらくの間、お付き合いください。きっと、何かいいことがありますから(ほんとかね?)。
その訳は、のちのちお分かりになるはずですので、ご安心ください。

なぜ、実用新案なのか?


本サイトは、これまでの記事のサブタイトルにありますとおり、「えっ、こんな企業があんな特許を!? 最新の食品特許を見てみる」のをコンセプトとしています。
ただ、食品分野では、特許だけでなく、実用新案にもお目にかかることがあります。
私の実務経験から言いますと、食品分野の実用新案に接する機会は、そう多くはありません。それも、そのはずです。特許の年間申請(出願)件数は、約30万件であるのに対し、実用新案の年間申請件数は、約4900件しかありません(下の図を参照)。一部実務者の方の間では、この由々しき状況を目の当たりにして、「実用新案は、技術立国を標榜(ひょうぼう)するわが国にとって、安らかな死を迎えるべき」とする議論も生じているくらいです[早稲田大学名誉教授・高林龍氏の著書『標準 特許法(第8版)』(有斐閣発行)を参照。下に、出版社のWebページを埋め込んでおきました。]。「安らかな死」とは……お、おぞましい。としか言いようがありません。

特許申請件数の推移
特許行政年次報告書2024年版」から
実用新案申請件数の推移
特許行政年次報告書2024年版」から

しかし、その数少ない機会に、この清原 筆養父めが、本記事の執筆時の数か月前に恵まれました。それは、データベースにより検索してヒットした実用新案の件数が全体の3割も占めようかという調査を経験したことです。おまけに、個人の方の申請者(出願人)も多かったのでした。それまで、そのような経験はほとんどなかったですので、不安を覚えながら作業(スクリーニング)したのを覚えています。調査の終盤になって、数件の実用新案は、中身を詳しく見ました。私は実用新案評論家ではありませんので、ベニヤ板で作られたシベリア鉄道風の列車内で「いやぁ、実用新案って本当にいいもんですね」とまで偉そうには言えませんが、「いやぁ、たまには実用新案を読むのもいいもんですね」くらいのことはつぶやけるかもしれません。

そうしたこともありまして、このたび実用新案について記事で触れようと思ったしだいです。ほかにも理由がありますが、繰り返し言いますように、それはそのうちに判明します(なんか無駄に引っ張るなぁ。。。)。

これだけ言わせて 特許と実用新案の違い


前置きがいつものように長くなりましたので、本題に入ることにしましょう。
いつもよりも真面目に書いてみました。皆さまにぜひ読んでいただきたくて、やや強い念を込めました。といっても、呪詛(じゅそ)のような恐ろしい類いのものではありませんので、どうぞ安心してお読みくださればと思います。

私たちの社会では、新しい製品が次々と開発され、世の中の役に立っています。しかし、技術開発によって生まれたアイデアが、いくら優れたものであっても、勝手に使われたり、まねされたりする可能性があります。そうしたアイデアを守るルールが、特許、実用新案の各制度です。

特許制度では、特許権として、製品、システム、測定方法、製造方法、化学物質などの、新しい技術的アイデア(=発明)を保護します。

これに対して、実用新案制度では、実用新案権として、製品の形状や構造などの、形のあるアイデア(=考案)を保護します。「考案」は、日用品の改良などのちょっとした発明(=ミニ特許)というイメージです。製造方法や化学物質などのように、一定の形態を持たないアイデアは、保護の対象とはなりません。
例えば、ドラム式洗濯機では、「洗浄技術」は特許権の対象、「開け閉めしやすいふたの形状」は実用新案権の対象となります。

特許と実用新案の保護対象、保護方法、保護期間などを、次の表にまとめました。

特許と実用新案の保護内容

実際に申請(出願)された特許および実用新案の例としては、次のようなものがあります。面白そうなものを集めてみました。「そんなものが特許の対象になるんだ」というのが、皆さまの率直な印象なのではないでしょうか。

特許の例
あの有名芸人の「ネタ」も特許に
実用新案の例
あの涙のカリスマの実用新案も。ファイヤー!

ついでに、私が過去に執筆した農業の知的財産に関する記事を埋め込んでおきますね。こちらの記事も、ざっとお読みくださいますと、うれしく思います。
こちらの埋め込み記事では、特許と実用新案だけでなく、商標や著作権などの保護内容の違いにも言及しています。農家(特に、ビニールハウスなどを利用して作物を栽培されている施設園芸農家)の方向けに書いたものですが、食品分野においても参考となり得る部分が多くあります。
それから、埋め込み記事の最後に示している参考文献について言わせてください。知的財産が専門分野であるだけに、さまざまな文献にあたって執筆しました。執筆後、おやつを頬張りながら自己満足していると、「参考文献が多すぎるから絞ってくれ」と先方から言われました。これが、当時のしょっぱい思い出です。なんか言ったほうがいいですよ、と仲間から言われたら、こんなしょっぱい記事ですいません! と、アドリブで言ってしまうかもしれません。。。



図書館から借りた本でAisumasen(John Lennon風に)
無駄に大きいサイズで、筆者が何とか撮影

この記事の脱稿時に、今さらではありますが、ミュージシャンのASKA氏の著書『700番 第一巻』(2017年に扶桑社から発行)を読みました。本書は、2016年1月9日にWeb上に公開された12万字にも及ぶブログがベースになっています。ASKA氏が、覚醒剤事件の経緯と自身の音楽人生を振り返った作品です。
12万字。私も、その文字数を達成できるように、今後もこの場で書きつづっていきます。迷わずに、SAY YES。もちろん、薬物使用までは見習わずに。というわけで、よろしくどうぞ。

ここまで、お読みくださり、ありがとうございました。
ぜひ次回の記事もご覧くださいね。今回、なぜ実用新案についてご説明したのかが分かりますので。
では、次回もお楽しみに。

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