でたらめで、完璧な食事を、自分のために。
久しぶりに、酷めの風邪を引きました。
いつもなら、喉、鼻、熱と来て、病院に行かなくても、2,3日で治っていくのに、今回はいきなり咳が出て、しかも熱は出ず、3日目あたりで治るかと思ったら再度悪化し……と、結局一週間近く、家に閉じこもることになってしまいました。
幸い、食欲は落ちなかったものの、消化にエネルギーを使うようなものは食べる気分になれず、きっちり献立を整えるような気力もなく、冷蔵庫を開けると、残り物の大根スープがありました。
中途半端な残り物がある状態は、基本的にあまり好きではないのですが、この時ばかりは、数日前の自分に感謝です。
多少気分のいいタイミングで台所に立ち、思いつくままに、だんご汁に仕上げることにします。小麦粉を水で練って、熱くしたスープに落として。ついでに溶き卵も流しましたが、ネギを切るのは面倒だったので、そこは省いて。
できあがっただんご汁は、味、口当たり、暖かさすべてがその時の自分の体調にぴったりで、胃袋にするっと収まっていきました。
そして思ったのです。
こんな完璧な料理があるだろうか。
日頃から料理を仕事にしていることもあり、また、新しいカテイカについて考え続けていることもあり、「料理とは何か」ということは、日々頭にあります。より美味しく作るには?栄養バランスは?手軽に作るコツは?
けれど、この日、残り物に、適当な小麦粉生地を落としただけの、「でたらめな」けれども「完璧な」だんご汁を口にしながら、つくづく感じたのは、一番大切なのは、自分が食べたいと望むものを、自分の手で整えられることであって、必ずしも上手に作ることではない、ということでした。
温かい物が食べたい、柔らかいものを口にしたい、がっつりと頬張りたい。
そういった気持ちに合わせて、とろみをつけたり、水分で緩めたり、パンチのあるトッピングを加えたりする。
もちろん、それ自体が一定の知識だったり技術だったりはしますが、着地点は、自分自身が望むところであればよく、そして、それが一番大切なことなはずです。
誰かに喜んでもらう料理も尊いですが、まずは、自分が嬉しい食事を作る。そうやって、自らの望みに耳を傾け、素直に手を動かす経験は、積み重なり、やがて思いやる相手に寄り添う力となっていきます。
茹でた野菜に回しかけるオリーブオイルと塩加減を、ぜひ自分のために。美味しいと思えたら、それはもう立派に食事を整えられたのだと、自信を持てばよいのだと思います。
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