自分のネガティブな感情について振り返るときに、気をつけてほしいこと
私のNPOでは、子どもとの関わりを探求する研修プログラムの中で、リフレクションや自己覚知といった感情を扱うワークをする時があります。その際の注意点や気をつけてほしいことを、参加者の方々に向けて改めて文章にしてまとめてみました。
書いていたら、これは参加者でない人にとっても、自分の感情を振り返ったり考えたりする時(文章書いたり、ふと内省するとき)の参考になるかも!と思ったので公開することにしました。
誰しも、イライラする時やモヤモヤする時があると思います。そんな時に自分の感情を、見つめたり、ふりかえりたくなったら、以下を参考にしてみてください。
※以下の文章は、自分のネガティブな感情(特に、辛かったり怒りを伴う過去の体験)を振り返る最中や、振り返った後に読むことを想定しています。
1.大人になって感情の蛇口を開けることはエネルギーがいることなので、それだけですごいこと
感情を感じることは、大人になればなるほど難しくなります。私たちは、感情の蛇口をキュッときつく締めて、感情が漏れないように、目の前の〈やるべきこと〉をこなしながら日々を過ごしています。
押し寄せてくるスケジュール調整に満員電車。誰かの悪口を聴かないふりをしたり、誰かからのムカつく発言をヘラヘラと笑いながらかわす。感情の蛇口をひねっちゃうと仕事にならないから、きつく締めておく。ポタポタと漏れ出てしまわないように、ぎゅっと何度も念入りに蛇口をまわす。しまいには、自分に感情があったことも忘れていくーー。
こんな日々を過ごしている私たちの奥底には、気づかないうちにたくさんの感情がたまっていきます。悲しみ、憎しみ、もどかしさ、切なさ、悔しさ。感情が積み重なっていき、過去の感情は、奥の方に追いやられて、閉じ込められていきます。
だけど、内省のワークをしたり、(感情でコミュニケーションをとる必要がある)子どもと接した後は、感情の蛇口が少しゆるまっている状態だと思います。そんな時、昔の感情が顔を出してくることがあります。
「大切にされなくて辛かった」
「あの時、自分がないがしろにされている気持ちがして本当はすごく悲しかった」
「自分を根本から否定されて、ムカついた」
「あの人を裏切ってしまった」
これまで閉まっておいた感情をいきなり外気に晒すことは、とってもとっても勇気とエネルギーがいることだと思います。ひりひりしたり、どきどきしたり、隠れたくなったり、泣きたくなるかもしれませんが、その感情を見つけた、それだけでもほんとーーに、すごいことだと思います。なので、そんな自分を十分に褒めて労ってあげてください。
2.感情の存在を評価しないで、受け止める
過去の感情が見つかったなら。あなたは、その感情に対して、どんな風に感じるでしょうか?「人に対して怒っている自分」に腹がたちますか?「過去の不甲斐ない自分」を否定したいですか?
それでも、私は、そんな自分を否定して欲しくないなあ。自分を怒ったりしないで欲しいなあ、と思います。
私たちは、どうしても自分の過去の感情をみつけると、それについて思考してしまします。そして、思考していると〈今〉の新しい感情が生まれます。
たとえば、怒りという感情が見つかった時、その怒りに対して、あなたが「怒ってはいけない!それを鎮めなければいけない!」と思っていると、過去の怒りに対して、新しい今の怒りが生まれてきます。すると、結果的に、怒りは増えていきます。
なので、そうではなくて、「ああ、怒りがあったんだなあ」と見つめる、きづくを大事にしましょう。
3.感情を、抱きしめてみる
感情を受け止めたら、その次には(もしできたら)過去の感情(怒りや悲しみ)を抱きしめてみてください。そうすると、怒りはあるのだけれど、今の自分と一体化しなくなり、少し、楽になれるかもしれません。
抱きしめる、とさらりと言ったのですが、これはとっても難しいことだと思っています。
なぜ難しいかというと、私たちは、過去のネガティブな感情を見つけると、その原因を探したり、それを誰かのせいにしたくなるからです。例えば、悲しみや怒りを見つけたとき、こんな風に感じませんか?
どうやったら、感情がなくなるのかわからなくて戸惑う。
誰かに悲しみや怒りをぶつけたら、得体の知れないモヤモヤと決別できる気がして、ぶつけたくなる。
悲しみや怒りの原因を見つけたらすっきりする気がして、誰かのせいにしたり、環境のせいにしたりしたくなる。
自分の感情をなかったこと、みなかったふりをしたくなる。
過去の原体験を探して分析をしたくなる。
私たちは自然とこんなふうに感じるものだと思います。
ですが、丁寧に感情をみてみると誰も悪くないし、何か過去の原因を探してもすっきりするものでもないことがわかってきてしまいます。(※ここは、別のワークが必要ですね。ポイントは、頭で心をみるんじゃなくて、心で心を覗いてみる、みたいなこと)
感情は二元論的なものではないので、白黒はっきりしても解決しないのです。例えば、すごくひどいことを言われたり、されたりしたとします。被害感情が生まれ、あの人が悪い!!と悲しんでいた。けれど、よくよくひどいことを言ってきた人の心を覗いてみてみると、その人も悲しい気持ちで孤独でやりきれない気持ちだったことが見えてくる。また、環境のせいにしてみても、結局、自分は癒されていないので、その苦しみを抱えたままになっている。などなど。
だから、分析したり、原因を探したりするのではなく、「抱きしめる」ことが大切になります。例えば、自分にこのように声をかけてみてください。
「今まで無視していてごめんね。側にいって、抱きしめるね」
こうして、過去や小さい頃の感情を見つめて、否定せず声をかけてあげることが「抱きしめる」ということです。過去の自分、自分の中にいる小さな自分の心を、そっと触るようなイメージです。
そうすると、不思議と心が軽くなるかもしれません。
4.感情を出すのを焦らない、無理しない
だけど、そんな風には、すぐには言えないかもしれません。
感情の蛇口をあけることが怖くて開けられないかもしれません。
でも、それで大丈夫です。抱きしめることはとっても勇気がいることです。なかなかできません。(※かつ、一人でやらないで、専門家の補助を受けたり、みんながいるときにやりましょう〜。カウンセリングなど。)
来るべき時が来たら、過去の自分や小さな頃の自分の感情に出会える時があると思います。その時に、もしできたら、そっとそっと抱きしめてあげてほしい、と思います。
なので、焦らなくていいですし、やらなくてもいいことです。きっと、時間が教えてくれます。言うつもりもなかったのに言っている、そんな時がくると思いますので。焦らない、ということを大事にしてほしいです。
5.感情をみんなで共有して、また明日がくるという希望について
わたし達は皆、過去は子どもでした。子どもの頃、一人一人それぞれいろんなことを感じていました。小さい頃の感情や、過去の感情は、その人だけのかけがえのないものだなあ、と私は心から思います。
良いものばかりではないでしょう。だけれど、その感情に出会い、自分にもそうした子どもの過去があることに気づけたこと、そして、それを抱えながらも、大人になって活動しているということ自体もすごいことだなあ、と思います。さらにワークでは、一人の感情が、みんなに物語られることで、私の悲しみもあなたの悲しみもまた、明日に繋がるものになる。このこと自体が、希望なんじゃないかなあ、と思います。なので、こうして、一緒にワークをできた、ということに感謝の気持ちでいっぱいです。
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認定NPO法人PIECESでは、子どもが孤立しない地域をつくるプログラム「Citizenship for Children」(CforC)の参加者を募集しています。
このnoteにも書いた、子どもたちとの関わりについて振り返るリフレクションも行います。
子どもの気持ちや願いに丁寧に寄り添えるようになりたい
自分が無意識に持っている価値観やバイアスに自覚的になりたい
子どもとの普段のコミュニケーションを振り返り自分なりの関わりをみつけていきたい
上記に当てはまる方は、ぜひこちらのCforC2021のページをご覧ください!
みなさんとお会いできること、楽しみにしております。