『しくじり漫画先生に学ぶ正しい夢の叶え方』⑫
とにかく、思いついたことは実行する
例えば漫画を描いている人であれば、面白そうなストーリー、アイデア、表現、色々なことを思いつきますよね。
で、「これは凄いアイデアだぞ!」って興奮しながら、とりあえず書き留めておいて、その後かたちにしようと作品づくりに取り掛かります。
だけど、その9割以上は、メモやプロット、ネームの段階で行き詰まってしまいます。
「なんか違うなー」とか「あれ、あんまり面白くないかも」みたいに。
その原因のほとんどが、自分の内から引き出したものではなく、外にあるものをかたちにしようとしているからなんですね。
これを進めるのは、なかなか難航します。
なので、そういう時は、スムーズにすんなり進んでいる方のプロジェクトを採用し、かたちにしていきます。
「無理をしなきゃ進めていけないようプロジェクト」は、そもそもあなたがやることじゃありません。
どれだけ面白い、画期的なことを思いついたとしても、それはあなたのエリア外なので、得意な人に任せておけば良いと思います。
余談ですが、自分が思いついたアイデアは、大抵他者も思いついていたり、仮説検証がすでに行われていたりします。
たった一つのアイデア自体には何の価値もありません。
そのアイデアをかたちにするために、第2、第3、第100、と数え切れない無数のアイデアが積み重ねられ、補完し合ってやっと一つの作品が完成するのです。
例えば、「安価で立ち食いスタイルのステーキ屋さんがあれば繁盛すると思うんだよね」というアイデアがあったとして、じゃあそれを実現するには立地やスタッフ、材料の仕入れ、プロモーション、何十何百という、そこに付随するアイデアが必要になる訳です。
実現できていない「安価で立ち食いスタイルのステーキ屋さん」というアイデアには何の価値もありません。
かたちになっているものと机上のものとでは、全くその重みが違うのです。
誰もがすでに思いついていることを、「かたちにできる」のが表現者であると思います。
漫画などを読んで「私ならこうするのになー」と簡単に言えてしまうのは、そうしたプロセスをリアルに想像できていないからです。
仮にもプロと呼ばれている人たちはすでにそこは通過しています。実験と検証を行った結果、採用しなかったから世に出ていないだけなのです。
…脱線しました。
とにかく、ここで重要なのが、一手二手と進めてみないと、それが自分と一致したプロジェクトなのか、乖離したものなのかが分からないということです。
アイデアを思いついた段階では、なかなかそれが分からないんです。
この線引きをはじめから見極められていれば、無駄な労力を費やさずに済むような気もするのですが、何手か進めてみないと、その判断を下すのは難しいです。
つまり、思いついたことを「やらない」でいると、それがどう転んでいくにせよ、先に進めないんですね。
よく言われる「しない後悔」というのが正にこれです。
しなかったことで、可能性が0になりきらないまま、その案件をずっと抱え続けることになるのです。
「完成させていれば、最高傑作の漫画が誕生していたはず」
「あの時チャレンジしていれば、今頃は○〇になれていたかもしれない」
「告白していれば、結婚できていたかもしれない」とかですね。
最後のは、ちょっと怖いですね…笑
なので、思いついたことはすべて実行して、きちんと失敗して下さい。
あらゆる思いつきを実行してみたなかで、そんなに努力をせずにスムーズに進んでいるプロジェクトが、あなたと一致した最善の道なのだと思います。
決して、あなたと乖離していることを無理に推し進めようとしないで下さい。あなたが自分の能力を無視して、力技で無理矢理にたどり着いた場所は、他者からすると散歩程度でたどり着ける場所だったりします。
これは私のエゴかもしれないけど、せっかく色々な能力と個性とを持った、全く違う者どうしが同じ時代を生きているんだから、それぞれが自分の「最強」を持ち寄れば、最高に楽しい世界になると思うんです。
例えば、かつて私が描いていた、「ハラハラドキドキする海洋冒険ファンタジー」は、今の私とは明らかに乖離しています。私の感性も個性も経験も、そこでは活かされない。
今の私の夢は、
「私の漫画で世界じゅうの人を感動させたい」
「一人でも多くの夢追い人を応援したい」です。
それを実現するためにやるべきことは、無理矢理に海洋冒険ファンタジーを描き続けることではありません。
それで私が世界に還元できることは何もない。
私の役目ではないのです。
そう自覚して手放すことは、少し切ないですが、私には私だけが遂行できる最高のプロジェクトがあるはずです。
それは、今想像しているかたちとは違うかもしれないし、思いもよらない場所にあるのかもしれない。
とにかく、その正体は、「思いつき」をやってみた先にしかありません。
次々に繋がっていった思いつきの先には、自分だけのどんな壮大なプロジェクトが待っているんでしょうか?
なんだかワクワクしてきますね。