サプライズが失敗した予想外の理由
高校時代の仲良しグループで、鎌倉へ行った時の話だ。
私は、高校まで広島で過ごし、大学進学を機に上京した。
高校の仲良しメンバーは、大体西日本にいる。なかなか会えないのは寂しいが、このような事態になる以前は、帰省時に集合したり、旅行を計画したりして、定期的に遊んでいた。
その一環の、鎌倉旅行だ。
メンバーは4名、私を除く3名は全員広島在住。遠い関東まで足を伸ばしてもらうのは正直心苦しい部分もあった。
しかし、鎌倉は素晴らしい場所だし、3名も納得済だったため、晴れて鎌倉行きが決定したのだった。
私は張り切っていた。
鎌倉に2度しか行ったことないくせに、ホテルやランチの候補を色々提案したり、コースを組んだりと、旅行前からツアーコンダクターぶっていた。
遠くから来てくれる大事な友人をもてなしたい一心だったが、実際は、自らも、知らない土地へ出向く側だと自覚した方が良かったと思う。
旅行計画中、私はひらめいた。
サプライズで、この旅行を祝うデザートプレートを予約しておこう!
内緒で、事前にお店にお願いしておき、食後にバーンと出してもらうのだ。
きっと、皆驚き、喜んでくれるだろう。この再会に、さらに花を添えてくれるはずだ。
そう思って、初日のランチの予約担当だったのをいいことに、勝手にデザートプレートを予約した。
さて、当日だ。
お昼過ぎに鎌倉駅で集合し、再会を喜び合ったあと、早速予約したレストランに向かった。
レストランはお洒落なイタリアンで、前菜から何から全部美味しかった。鎌倉野菜を使った料理だった。
私はそわそわする心を気取られないよう注意を払いながら、皆の近況を聞いたり、笑ったり喋ったりしていた。
さて、食後、ついにデザートプレートが登場した。
店員さんが、笑顔で運んできてくれた可愛いプレートを、私は拍手で迎えた。
私「わーい!旅行の記念だよ!」
私は満面の笑みだった。皆が喜んでくれると信じて疑わなかった。
ところが。
全員、どこか挙動がおかしい。「え?」という顔をしている。喜ぶ様子もなく、「訝しむ」という表現が近いように感じられる反応だった。
やばい、スベッた?
生来スベりやすい体質なので、めちゃくちゃ焦っていたが、皆が、段々、喜びの反応を見せてくれるようになった。
「びっくりしたー」
「記念になるね」
「ありがとう」
当初の違和感を引きずりつつも、地雷を踏んだわけではないということは分かり、ホッとしながらデザートプレートを囲んで記念撮影をした。
サプライズを仕掛けるのは難しい、という経験を得た。
さて、その日の夜のことだ。
遅めの時間にホテルにチェックインした後、夕食をとりに外へ出た。
観光地なので、食事処には事欠かない。適当に歩き、適当に感じの良いカフェに入った。
カフェで美味しい食事を食べ、今日の出来事や思い出話に花を咲かせていたその時だ。
店員さん「お誕生日おめでとうございます!」
私「え?」
店員さんが、デザートプレートを持って現れた。友人たちから拍手が起こる。
私「え?」
数日後に訪れる私の誕生日を祝う、デザートプレートだった。
友人たちは言った。
「お昼に、デザートプレートが出てきた時、本当にびっくりしたよ」
「そうそう。計画はしてたけど、予約はまだだったから、誰が頼んだのか顔を見合わせたよね」
「これは、さっきこっそり予約したんだよ」
私「うわー‥ありがとう!!!」
めちゃくちゃ嬉しかった。
同時に、自分の無計画なサプライズを悔やんだ。
完全に、友人達の優しい心遣いに水を差していた。お昼のさえなければ、もっと純粋な喜びが生まれていたに違いない。
鎌倉旅行初日は、1日に2回もサプライズが実施された、予想外の日となった。
自分のサプライズはある意味失敗したが、本来お祝いは嬉しいし、有難いものだ。
サプライズを用意してくれた皆に、めちゃくちゃ感謝している。
早くまた会いたい。
誰かの誕生日が近ければ、その時はサプライズも準備しよう。
終わり。