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夫がくれる、よく効く薬

 GW明け1日目の仕事は、しっちゃかめっちゃかだった。
 時間をかけて準備した(はずの)ものに、土壇場で変更指示が出て、それはもうしっちゃかめっちゃかだった。

 自分の詰めの甘さにうんざりしつつ、定時まで全力で駆け抜け、何とか対応完了。
 よし!これで自分のワークに入れる、と思ったその時、ミスを発見してしまった。

 もう、グレようかな、と思った。
 誰も悪くないけど、絶対に対応が必要な、致命的なミス。
 残業決定。

 なお、在宅勤務だったため、同じく在宅勤務中の夫に声をかける。

私「仕事終わらん」

夫「ええっ‥大丈夫?」

私「うん。ご飯お願いします」

夫「分かった」

私「アイスもお願いします」

夫「(笑)分かった」

 傍若無人な妻に、夫は優しかった。

 夫は、基本的に甘やかしだが、特に、私がピンチのときは、本当に気遣ってくれる。そうしないと、私が暴れるからかもしれない。でも、日々一緒に過ごすなかで、心根が優しい人だと思うことは多い。

 ありがてぇ、ありがてぇ‥と思いながら、血眼でキーボードを叩く。
 その間に、夫は買い出しに出かけた。

 夫が帰ってきても、私の目は血走ったままだった。ミスが解消されない。専門外の内容ということもあり、かなり苦戦していた。

夫「大丈夫?」

私「大丈夫じゃない。頭痛い、目痛い、肩凝った‥」

夫「●ブクイックあるよ。飲む?」

私「飲むー‥」

 我々夫婦は、イ●信者だった。2人も偏頭痛持ちの気があるため、常備しているのだ。

 実際、イ●は非常によく効く。メカニズムは分からないが、この日も、あっという間に頭痛はなくなり、目と肩の痛みは和らいだ。

 頭痛さえなくなればこっちのものだ。
 私は、早速仕事を中断し、夕食をとることにした。最早やってられなかった。

 夫の用意してくれたご飯は美味しかった。もりもり食べながら、他愛のない話をする。イ●を称賛したり、バ●ァリンとの違いを予想したり、ロ●ソニンがどれだけ効くのか、期待に胸を膨らませたりした(イ●しか買ったことがない)。

 食後、ゴロゴロしつつも、頭の中は仕事でいっぱいという不健全な状態に陥っていると、夫が言った。

夫「アイスあるよ」

私「わあ!そうだ!やったあ!」

夫「6個買ったよ」

私「6個!?!?」

 大笑いだった。
 我が家は4人家族、そのうち2匹はアイスが食べられない(猫)。

 6個って。箱アイスの本数じゃん。The Beatlesでも余るし、ゴスペラーズでも余るし、V6でも仲良く分けられる数じゃん。
 うちは、すゑひろがりずと同じメンバー構成なので、1人3個ペースで楽しむことができるのだった。

 仕事に悩む妻を心配し、リクエストのアイスを買ってきてくれる夫。予想外の数で笑わせてくれる夫。

 夫自身がよく効く薬だなあ‥と思いながら、あったかい気持ちで筆をとった次第だ。(仕事は終わってない)

終わり。

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