目黒川の起点を目指したら
目黒川は、桜並木で有名な中目黒やボラちゃん大量発生の五反田を流れ、品川区は天王洲アイル駅付近で東京湾に注ぐ二級河川だ。ボラちゃんを覚えている方、どれくらいいるだろうか。
※ボラちゃんとは‥多摩川に現れたアザラシをタマちゃんとか何とか愛称をつけるのが流行っていたとき、目黒川に大量発生したボラたちを「ボラちゃん」と称して紹介したニュースがあったのだ。確かにあったのだ。子どもたちが、「ボラちゃーん!」と元気に呼んでいた映像の記憶があるのだ。
ボラちゃんもいいが、メダカや亀もいい。水の生き物が大好きだ。
話が逸れた。目黒川だ。目黒川の河口は、乗合のクルージングに参加し、近くまで行ったことがあるので知っている。
では、目黒川の起点はどこになるのか。
某地図アプリで見てみると、池尻大橋辺りまで、川を示す水色のラインが続き、細くなって途切れていた。
とりあえず、ここまで行ってみるか。
私と夫は、意気揚々とレンタサイクル(電動自転車)に乗って出発した。
目黒川沿いは、春には素晴らしい桜並木となる街路樹の緑が目に眩しく、さわやかな気持ちで電チャリを漕ぎ進めた。
田園都市線・池尻大橋駅にほど近い、国道246号と交差する部分で、目黒川は暗渠となっていた。
また地上に出るかもしれないと思い、道路(玉川通りというらしい)を渡ると、「目黒川緑道」が登場した。そのように案内図に書いてあった。
道路の向こうで地下に消えていった川が、地上で穏やかなせせらぎになっている?
「???」
と思いながらも、川沿いに進んだ。
緑道は、その名の通り緑が溢れ、色とりどりの花が咲いていた。
小川はいかにも人工的ではあったが、水は澄み、生き物がいそうな気配がする。
もう、目黒川の起点がどこだとかはどうでも良くなり、小川を覗き込める場所を探した。メダカやザリガニを見つけたかった。
なお、夫は目的意識を強く持った人物なので、目黒川の起点を引き続き目指すつもりでいたそうだが、それ以上に優しいので、妻の進む方向に大人しく着いてきてくれていた。
少し進むと、道が二股に分かれていた。
別れ道の付け根に石柱が2本立っており、そのうちの1本に、前傾姿勢の人形のような銅像が座っていた。お腹が痛いのだろうか、手を膝に置いてかがみ込んでいる。
腹痛の像に注目していたら、
「ゴッ!」
という聞き慣れない音が聞こえた。反射的に音の方を向くと、ピンク色の小型犬がいた。
犬は首輪とリードをつけており、飼い主に連れられていた。
よく見るとそれは、小さなブタだった。
「ブタちゃん!!」
あまりの驚きに、わりと大きめの声が出ていた。飼い主の方はこういった失礼な反応に慣れているのだろう、無反応だった。申し訳なかった。
近くを歩いていた親子連れにとっても珍しい光景だったらしく、父親が、
「あれは犬じゃないよ」
と幼い息子に説明していた。
再度、「ゴッ!」という音がした。ブタが鼻を鳴らしているのだった。
ブタと出会うという衝撃的な展開に、我々は目黒川の起点のことなどどうでもよくなっていた。目的意識を持った夫でさえも。
帰りながら、興奮気味にブタについて色々感想を述べあったが、最も意見が一致したのは、「ブタは思った以上にピンク」ということだった。
くまの●ーさんの親友の配色は、アニメ的表現ではなく、実物の特徴をよく捉えていることが分かった。
サイクリングをして、ブタに会えて、目黒川の起点はよく分からなかったけど、良い一日だった!
帰宅後、そんな満足した気持ちで、念のため目黒川の起点を調べてみた。
すると、なんと、腹痛の銅像が設置されていたところが、目黒川の起点その場所だった。つまり、ブタがいた場所だ。
あのブタは、鼻を鳴らして、目黒川の起点を教えてくれていたに違いない。
サイクリングをして、ブタに会えて、目黒川の起点に到達できて、良い一日だった!
終わり。