"食業"講座「生産者さんとオンラインで車座トーク」(企画メシ6−0)
コピーライターの阿部広太郎さんが主宰する連続講座「企画でメシを食っていく2021」(通称 企画メシ)に参加しています。第6回は、食べチョク代表の秋元里奈さんを迎えての「食の企画」。
「企画メシ」では講義を前に毎回、課題が出されます。今回、課題に向けてイチゴ農家の友人に協力してもらい、オンラインで話を聞きました。企画生からもお二人、参加してくれました。
参加者=Sさん(20代前半男性。大学卒業後、祖父母のもとで就農。イチゴと米を生産)、企画生2名、私
収穫期は早朝3時起き
ーイチゴとお米の生産をしているんですね。
イチゴは約2反、米は1町ちょっとくらいですね。アールで言った方が分かりやすいですかね? イチゴは20 アールで……
ーうなずいてましたが、よく分かりません(笑)。
坪数でいうと600坪くらい、米はその6倍くらいです。これくらいだと小規模農家になります。
ー1年の農作業のスケジュールはどんな感じですか?
イチゴの場合、苗を育てる期間、収穫準備期間、収穫期間、大きく三つのサイクルに分かれます。うちでは5月から9月末までが苗を育てる期間、10月の頭から11月下旬までが収穫準備期間、11月下旬から5月中旬が収穫期間です。5月には次の年の準備と収穫作業とが重なります。時期や栽培方法は品種や地域でも違いますね。
ー仕事は何時くらいから始まりますか?
収穫期は朝3時起きです。収穫のピーク時は朝3時か4時起きで収穫を始め、忙しい時は夜中の12時まで仕事があります。
ーほとんど寝てないですね!
ピークじゃない時の収穫作業は19時に終わります、3時起きですけど(笑)。イチゴは傷みやすいので、朝日が上がるまでに取るんです。収穫期以外だと、3時起きする日もあれば昼まで寝てる時もあります。6時〜7時起きで7時〜8時くらいから作業することが多いです。作る規模や作業する人数、作物や地域、年代など人によっても違います。
不自由もあるけど自由な仕事
ー休みは取れますか?
収穫期は休みはほぼないです。天候によっても変わりますが、収穫期以外は休みを見つけて休む感じです。
ーワーク・ライフ・バランスが気になりますが。
収穫期以外は結構いいと思います。平日に休めるので、出かけても空いているところが多いし、子育てするにしても、途中で抜けることもできるので、子どもの面倒もみれると思います。やり方しだいで自由性はあると思います。自分で考えて行動しないといけないですが。
ー長期間休めないイメージでした。
7月・8月は1週間休んで1週間仕事して、という風に過ごしてました。収穫期以外は作業をずらすこともできるので、意外と自由はありますね。ICTが発展してきて、付きっきりの必要がなくなってきています。冬は地獄ですが(笑)、収穫期以外は休んで旅に出たりもできると思います。
ー自由が効かない仕事だと思っていました。
自由が効かないところもあります。でも全てがそうではないと個人的には思います。作る物にもよりますが。
ー作物で職種が違うとまでは言いませんが、だいぶ違ってくるんですね。
作物と作る規模によりますね。規模が大きいと大変だけれど収入は高くなる。自由な時間をとるか、収入をとるかというのもあるでしょうね。
始めるまでは、不安しかなかった。
ー就農を決めたきっかけは?
祖父母が農業をしていて、小さなころから手伝っていました。それが一番最初のきっかけですね。大学は工学部で、エンジニアになるか農家になるか考えました。いくつかの会社でインターンをして、同じ職だけをずっとやり続けるのは自分には向いてないと思いました。
農業は特殊で、販売から生産まで全てが農家の仕事です。個人事業主の場合、マーケティング、開発、栽培技術、経理まで全てします。同時進行でいろいろなことをやりたいと思い、就農を決意しました。
ー就農して2年目ですが、実際に働いてみてどうですか?
祖父母が栽培技術を持っていたことや市場規模が大きいことなども考えてイチゴを栽培していますが、拘束時間が長いのは誤算でした。イチゴは作業時間が異常に長いのが特徴で、他の作物に比べると手間がかかるので大変です。日に当たらないと赤くならないので、実を一つ一つ動かしてあげないといけないんです。
ー就農する前に不安だったことはありますか?
不安しかなかったですね。農業をするために祖父母の住む町に来たので知らない人しかいないし、天候に左右される仕事でやっていけるのかと、金銭的にも精神的にも不安でした。知り合いが増えて不安が解消された部分もありますが、作物がちゃんとできるのか、できても売れるのかと、常に不安はありますね。
好きじゃないと続かない。
ーやりがいを感じることは?
やりがいは感じてるし、そもそも農業が嫌いではない、嫌いか好きかでいうと好きなので楽しいです。好きじゃないと続かないと思います。人と接する機会が少ないのは人によってはデメリットかもしれないけれど、自分はのびのびできています。食べチョクさんにも出品したことがありますが、直接消費者の声をいただけるのはうれしいし、頑張ろうと思えます。
ー農業は頑張った成果が見える、作物が応えてくれると思うのですが。
農業全体でいうと応えてくれないことが多いですね(笑)。意外と応えてくれないです。
ー幻想でした(笑)。農業と他の仕事の違いって何だと思いますか?
法人だとサラリーマンと変わらないので一概に言うのは難しいですが、個人事業主という立場で言うと、土日が休みという概念はあまりない。平日でも休めるし、休めない時は休めない。そこが一番大きな違いかなと思います。
夢は、農業のハードルを下げること。
ー農家って「家」という字が付くように、実家が農家じゃないと就職先としてイメージしにくいのかなと思うのですが。
国が新規就農者を増やそうとセミナーやインターンなどを支援していて、全国に農業大学校というものもあります。学校に通っている人は、意外と農家出身じゃない人が多い印象です。家業でない人が、他の業界と比べると圧倒的に少ないだけかなと思います。
ー農業を仕事にするのはハードルが高いと思いますか?
国が支援しているので、就農はしやすいと思います。ただ、なるのは簡単でも続けるのは別だと思います。個人の考えですけど、ゲームのレベルを上げるのが好きな人は意外と向いてるのではと冗談まじりで言ってます。いろんなことをしないといけないので、それが器用にできる人は向いてるし、一つのことに集中したい人は向いてないかもしれない。法人、個人事業主など、どういう立ち位置かで違うし、その人次第というところはあると思います。
ー将来かなえたい夢はありますか?
農業を身近にするというのは一つの夢です。農家には「家」の字が付くという話がありましたが、どうしてもハードルが高いので。法人ができたり異業種からの新規参入があったり、ハードルは下がってきてますが、それでもやっぱり高いと思うので、ハードルを低くしていきたいというのが一つです。
もう一つは、農業とは関係ないですが、経営やいろんなことを考えられる人を育てていきたいと思います。農業を通して、そういう人が増えれば日本はよくなるのでは、と考えています。
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意外だったのが、栽培技術などをTwitterやYouTubeで情報収集していること。また、「栽培技術、経営のプロなど、何か強みを持っている人は強いと思う」という話も印象的でした。私はライターなので、通販サイトで商品紹介をする時など役に立つだろうとのこと。農業を少し身近に感じました。
以前、話を聞いた果樹農家さんは、1年中、毎日のように作業があると言われていました。作物や地域、人によっても違うので、調べて、体験して、学んで、考えてから始めるのが大事。どんな仕事にも通じると思います。
Sさん、参加者のみなさん、ありがとうございました。
※写真はイメージ(畑写真はSさん提供)
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